冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ねじれた愛をあばく時

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 いずれ、惣一郎さんは私に子を授けてくれると約束してくれた。そうすることで、ゆくゆくは西園寺家当主となる彼の妻としての立場を確固たるものにしてくれるつもりでいた。

 惣一郎さんとの間に子が産まれても、千隼さんを愛し続けていたかはわからない。だからこそ、惣一郎さんは私を問い詰めたりしなかったのだと思う。西園寺家当主の妻として、立派に役目を果たしてくれるなら、それでいいと思っていただろう。

 しかし、すべては憶測だ。惣一郎さん亡き今、彼の本心はなんであったのか、それを知る機会はもう、与えられていない。

「許せないけど、恋はきれいごとではないから、黙認すると?」

 信じられないとばかりに、すみれはあきれ顔を見せた。

「そう受け取ってくださってかまいません」
「それこそ、きれいごとだわ」

 そうなのだろう。でも私は、ずっと目を背けてきた。私を保つためには、そうするしかなかった。

「私の婚約が公に決まったのは、今から二年前になりますが、実際には、生まれたときから決まっていたことです。両親はそのように私を育ててきましたし、私はいつか、決められた相手と結婚すると理解して生きてまいりました。これからも、夫となる人を信じて生きていくだけなんです」

 すみれは眉をひそめる。彼女には、浮気を容認して、夫を信じて生きていくなどという考えは理解できないのだろう。きっと、彼女はまっすぐな人だ。

 私が颯太に会ったことで、すみれを深く傷つけた。それを理解してもらいたいと、彼女は訴えているのだろうけれど、考え方の相違に面食らったみたいだった。

「もしあなたが浮気しても、婚約者の方には理解してもらえるとお考えなの?」

 私が容認できるから、婚約者も容認するだろうと、私が浅はかに考えてると責めているようだ。

「理解は求めません。しかし、夫となる人も、婚約の意味を理解されていますので」
「結婚と恋愛は別、とお考えなのね……」
「私は綾城家に生まれた務めを果たしたい。夫となる人は、私を生涯、妻として大切にしてくださると言ってくださいました。誰かを思う心が私にあったとしても、結婚すると誓ってくれたでしょう。それは私も同じです。夫となる人に好きな人がいても、妻として、立派に家を支えていく覚悟があります」

 そうやって、私は生きてきた。千隼さんが好きでも、惣一郎さんの妻になる決意が揺らいだことはない。

 すみれの言うように、結婚と恋愛は別だった。それは、これからもずっと。惣一郎さんも、それは理解してくれていた。

「まったく……理解できないわ」
「好きな人と結婚できる未来があるなら、どんなにいいのだろうと思います。岩山さんはそうやってご結婚されたのだから、ご主人を信じてあげてください。このたびは、誤解させるような行動をして、申し訳ありませんでした」

 これ以上、話をしても、私たちは理解し合えないだろう。

 すみれがすべきは、颯太がなぜ、私に好意があるなどと言い出したのか、それを知ることだ。

 手をついて深く頭をさげる。プライドが高く、頭を下げない女だとでも思っていただろうか。「うう……っ」と、言葉にできないうなり声をあげたすみれは、いきなり立ち上がると、無言で綾城堂を飛び出していった。
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