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ねじれた愛をあばく時
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綾城堂で講義のない日、天音はカルチャーセンターでの講師の仕事を引き受けている。そんな日は、私はひとり、綾城堂の掃除や庭の手入れをしている。
午後になり、そろそろ夕食の準備に、綾城邸へ帰ろうと準備していると、来客があった。
「綾城さんに大事なお話があって来ました。断らないで、聞いてください」
叶羽を抱いたすみれは、深刻そうにそう言った。断るつもりもなかった私は、玄関をあがってすぐにある小部屋へと、迷わず彼女を案内した。
「すぐにお茶のご用意を……」
「必要ありません。お気づかいなく」
冷淡に断るすみれの前へひざを折り、正座する。
叶羽はあいかわらず、静かに眠っている。とても端正な顔立ちをした子だ。すみれに似ているのだろうと思う。
「大事なお話って、どのような?」
付け入る隙を見せないすみれに、やんわりと尋ねる。少しでも和やかな気分になってもらいたいと願うが、彼女は見えない針を全身に逆立てているような態度を崩さなかった。
「颯太くんに会いましたよね?」
やはり、その話か。単刀直入に言うのだから、確証があるのだろう。
「はい。先日、大野寺駅前でお会いしました」
後ろめたいことなど何もないから、すんなりと認めるが、叶羽の背に添えていた手で、すみれはこぶしを握った。夫が若い女性とふたりきりでカフェに出かけた。その事実だけでも、不快なのだろう。
「綾城さんには、婚約者がいらっしゃるんですよね」
「ええ」
「婚約者がいるのにデートするなんて、何を考えていらっしゃるの?」
静かな口調の中に、怒りが見え隠れしている。浮気を疑ってるのだ。
しかし、どうなのだろう。デートに誘われてカフェへ出かけた。これは、れっきとした浮気だったのだろうか。私にはそのつもりがなくても。
「何か、誤解させるような態度を取ってしまったなら、謝ります」
「弁明はされないんですね。謝罪で終わりですか?」
「不愉快な思いをさせたのなら申し訳ないと、反省しております。謝罪以外のご要望があるのでしたら、なんなりとおっしゃってください」
できる限りの誠意を見せたつもりだが、すみれは納得いかない様子で息をつく。
「颯太くんに会ったのは浮気じゃないと思ってるみたいだけど、綾城さんが私の立場だったら、どう思うの? あなたのしたことは、不倫と受け取られても仕方のないことです」
「そのようなつもりはありませんでした。その点については謝ります。でも……、お言葉を返すようですが、あなたの立場で考えを申せとおっしゃるのでしたら、私はあなたのように、こうして相手に真偽を問い詰める真似はいたしません。浮気や不倫は許せないものですが、人はそんなに神聖ではいられないのも知っています」
惣一郎さんという婚約者がいながら、私はずっと千隼さんが好きだった。きっと、結婚しても、その気持ちは持ち続けていただろう。
綾城堂で講義のない日、天音はカルチャーセンターでの講師の仕事を引き受けている。そんな日は、私はひとり、綾城堂の掃除や庭の手入れをしている。
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「綾城さんに大事なお話があって来ました。断らないで、聞いてください」
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「すぐにお茶のご用意を……」
「必要ありません。お気づかいなく」
冷淡に断るすみれの前へひざを折り、正座する。
叶羽はあいかわらず、静かに眠っている。とても端正な顔立ちをした子だ。すみれに似ているのだろうと思う。
「大事なお話って、どのような?」
付け入る隙を見せないすみれに、やんわりと尋ねる。少しでも和やかな気分になってもらいたいと願うが、彼女は見えない針を全身に逆立てているような態度を崩さなかった。
「颯太くんに会いましたよね?」
やはり、その話か。単刀直入に言うのだから、確証があるのだろう。
「はい。先日、大野寺駅前でお会いしました」
後ろめたいことなど何もないから、すんなりと認めるが、叶羽の背に添えていた手で、すみれはこぶしを握った。夫が若い女性とふたりきりでカフェに出かけた。その事実だけでも、不快なのだろう。
「綾城さんには、婚約者がいらっしゃるんですよね」
「ええ」
「婚約者がいるのにデートするなんて、何を考えていらっしゃるの?」
静かな口調の中に、怒りが見え隠れしている。浮気を疑ってるのだ。
しかし、どうなのだろう。デートに誘われてカフェへ出かけた。これは、れっきとした浮気だったのだろうか。私にはそのつもりがなくても。
「何か、誤解させるような態度を取ってしまったなら、謝ります」
「弁明はされないんですね。謝罪で終わりですか?」
「不愉快な思いをさせたのなら申し訳ないと、反省しております。謝罪以外のご要望があるのでしたら、なんなりとおっしゃってください」
できる限りの誠意を見せたつもりだが、すみれは納得いかない様子で息をつく。
「颯太くんに会ったのは浮気じゃないと思ってるみたいだけど、綾城さんが私の立場だったら、どう思うの? あなたのしたことは、不倫と受け取られても仕方のないことです」
「そのようなつもりはありませんでした。その点については謝ります。でも……、お言葉を返すようですが、あなたの立場で考えを申せとおっしゃるのでしたら、私はあなたのように、こうして相手に真偽を問い詰める真似はいたしません。浮気や不倫は許せないものですが、人はそんなに神聖ではいられないのも知っています」
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