冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ねじれた愛をあばく時

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「どうしても無理なんですか? あ……、理由は話せないんですけど、惣一郎と別れてほしいんです。お願いします」

 殊勝な態度を見せれば、婚約解消できると思うのは、あまりに短絡的ではないだろうか。

 そうだからこそ、颯太の行動は計算高くないのかもしれない。頭を下げれば、なんとかなると思ってるのだ。

「岩山さんは何か思い違いをしておられます。私の一存で、婚約解消できるとお思いですか? 惣一郎さんとの婚約は、西園寺家、綾城家、双方の総意なのです」

 そこまで言えばわかってくれるだろうと祈りを込めると、彼はようやく察したようだった。

「惣一郎にも無理だって言うんですか……」
「惣一郎さんも、婚約破棄はなさいません」
「そりゃ、そうですよね。婚約破棄できるなら……、そうだよな」

 両手にこぶしを握って、颯太はふたたび、沈黙した。

 良案が浮かぶのを待ってるんだろうか。そんなに簡単に最良の答えが見つかるなら、誰も苦しまないのに。やっぱり彼はまだ、何もわかっていない。

 誰も、西園寺武彦の命令に逆らえないということを。

「颯太くんっ、やっぱりここにいたっ」

 門の影から、突然、女の人が飛び込んできた。

「すみれちゃん……っ」

 驚く颯太に駆け寄ったすみれは、彼の腕を強く引く。

「どうして。もう綾城さんには会わないって言ったじゃない。私たちがこんなことしても、綾城さんを困らせるだけなのわからないのっ?」
「でもさ……、あれ? すみれちゃん、叶羽は?」

 問われたすみれは、戸惑うように視線を落とした。

「お母さんに見てもらってる」
「え……、すみれちゃんのお母さんが?」
「惣一郎さんを連れてくるまでは認めないって言ってたけど、ちゃんと……見てくれてるから」

 大丈夫だよって、すみれは言い聞かせるように言ったあと、私へ視線を移した。

 目が合った瞬間に、全身が総毛立つ。

 ああ、そうなのか。

 苦しい目をするすみれを見たら、すべてわかってしまった。

「婚約解消してほしいなんて言いません。颯太くんは私のためを思って、綾城さんに無理をお願いしたみたいだけど、私は婚約解消なんて望んでないんです。惣一郎さんに会いたいだけなんです」

 いつか、知る日が来る。そう思ってはいたけれど、あまりにも不意打ちだ。私はキリキリと痛む胸に手を当てた。

「……颯太さんとすみれさんは、ご夫婦ではないんですね」
「すみません。嘘をつきました」

 颯太がうなだれるように、頭を下げる。
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