冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ねじれた愛をあばく時

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「勝手に誤解したのは、きっと私が先ですから。でも、ごめんなさい。惣一郎さんに会わせてはあげられません」

 次第に苦しくなる呼吸を整えながら、話す。どうあっても、できることとできないことは明白だ。

 ハッと、すみれは顔をあげる。

「どうして……」
「理由はお話しできません」
「そんなっ。惣一郎さんに会いたいだけなんです。たった一度でいいから……叶羽に会ってほしい。それだけなんです」

 顔をそむける私の腕にすがりついてくる。

 母になった人は、これほどの情熱を見せるのか。日陰の女として生きていく道を選んだはずなのに。

「ですから、私にも無理なんです」
「そんなに……、そんなに惣一郎さんに会わせたくないですかっ? 綾城さんは言ったでしょう? 惣一郎さんに好きな人がいても、信じて支えると」

 なぜ、私が責められるのだろう。私が言えることは話しているのに。

「なんとおっしゃられても、できないものはできません」
「ご自身が愛されてないから、意地悪するの? それとも、惣一郎さんが私たちに会いたくないって言ってるのっ?」

 絶句する私を突き放したすみれは、ズルズルと崩れ落ち、両手で顔を覆って泣いた。

 私はぼう然としたまま、すみれを見下ろしていた。

 意地悪……?
 私が?

 意地悪だったのは、どっち。

 私が千隼さんを好きになる前から、惣一郎さんはあなたを愛していたのに……。

「惣一郎さんには……会わせられません。惣一郎さんの気持ちまで、私にはわかりません」

 震える手を目の前にかかげる。

 私は西園寺家に嫁ぐために生きてきた。それを惣一郎さんは許してくれた。私の生きる世界を作ってくれると約束してくれた。だから、尊敬していた。

 がんばってきたの、私。

 西園寺家の名に恥じない妻になりたくて、言葉遣いも所作も、全部、背伸びして、普通の女の子みたいに、伊吹みたいに、楽しい高校時代を過ごすのもあきらめて、全部、全部、西園寺家に捧げてきた。

 そんな中、私を特別扱いしない千隼さんに出会った。彼に恋をして、でも、思いは隠して、惣一郎さんの良き妻になろうと努力はしてきた。

 それすら、してはいけないことだったの?

「惣一郎さん……もう、限界みたい……私」

 好きな人がいてもいいと許してくれた惣一郎さんに、意地悪なんてしない。

 なんで、死んでしまったの……。
 惣一郎さん……、なんで……。

 青い空に伸ばした手が、傾く。足もとが揺れ、立っていられない。

 ああ……、傾いてるのは、私だ。
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