冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ねじれた愛をあばく時

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「綾城さんっ!」
「きゃああっ」

 颯太とすみれの叫び声が、青空に響いた。

 気力を失った体が、受け身を忘れたまま地面に叩きつけられる。痛いのに、胸の奥がもっと痛い。目がしらから流れ落ちる涙が、鼻筋を伝って唇を濡らす。唇を震わせたら、どんどん涙があふれ出す。

「綾城さんっ、大丈夫ですかっ?」

 颯太が私の肩に触れ、顔をのぞき込む。しかしすぐに、彼は何者かの手によって引きはがされた。

「つゆりっ」

 優しい腕が私を抱き起こす。涙をぬぐい、抱きしめてくれる。

「千隼さ……ん」

 恐怖が私を襲う。

 パンドラの箱から出たらいけないと、言ったのに。

「今、伊吹さんに天音さんを呼ぶよう伝えました。もう大丈夫ですよ。大丈夫ですから。もう……、つゆりだけ傷つく必要はない」
「どうしてそんなこと……」

 バレてしまう。
 何もかも、知られてしまう。

 惣一郎さん……、私も連れていってくれたらよかったのに。

 そうしたら、千隼さんに愛される喜びを知らないまま、綾城の名を傷つけずに死ねたのに。

「やめて……、知られたくない」

 両手で顔を覆った。

 すべてなかったことにして、すべて穏便に済ます人生なんて、最初からなかった。私が我慢していればなんとかなるなんて、ただの思い上がりだったのだ。

「つゆり、全部話しましょう。西園寺さんも、許してくれるはずです」

 力を振り絞り、立ちあがろうとする私を支えながら、千隼さんはそう言う。

 私は返事ができないまま、門の方へと目を向けた。天音が険しい顔をして、足早にやってくる。

 何もかも話したら、天音は絶望するだろう。西園寺に嫁ぐ立派な娘を送り出したかったに違いないのだから。

「なにごとですか、つゆり。大騒ぎになってると聞いて急いできてみれば、なんてみっともない姿を」

 土で汚れた着物を叩く天音は、ひどく不機嫌だ。

「お母さま、ごめんなさい。具合が悪くなって倒れてしまったの。岩山さんはご挨拶に来てくださっただけで……」
「天音さん、違うんです」

 ごまかそうとする私を、千隼さんが遮った。

「千隼さ……」
「話します。そうしないといけない」

 やめて、と思うのに、大丈夫だと力強くうなずくから、正義心の強い千隼さんを止められない。

 天音に向き直った彼は、颯太とすみれへ視線を移す。

「おふたりは、西園寺惣一郎さんに用があってこちらに来られたのです」
「惣一郎さんに、ですって?」
「ええ。岩山颯太さんとすみれさんはご夫婦ではないのです。岩山学習塾は、とても評判の良い塾のようですね。颯太先生は指導に熱心で、恋人を作るひまもないんじゃないかと心配されるぐらいに」
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