冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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ねじれた愛をあばく時

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 天音は眉をひそめたまま、颯太とすみれにいぶかしげな目を向ける。夫婦でなければ、なぜ、夫婦を装って綾城堂を訪ねてきたのか、と訴えるように。

勅使河原てしがわらすみれさん。あなたは、西園寺惣一郎と付き合っていた。そうですよね?」

 明るみにしてはいけないはずの真実を、千隼さんは言葉にした。彼は何を守るために、それをあばいたのだろう。

 すみれはうつむき、颯太は天を仰いだ。

「千隼さん、今のお話は本当なの?」

 にわかには信じられないと、天音が問う。

「はい。残念ながら、証拠はありませんが、すみれさんなら、その証拠を提示できるでしょう」
「そうですか。わかりました。岩山すみれさん……、いいえ、勅使河原すみれさん、千隼さんの今の話は本当なのかしら? 本当だとしたら、困ったことになりますが」

 すみれはうなだれ、地面にひざをつくと、頭を下げた。

「はい……、本当です。惣一郎さんと、大学時代からお付き合いしていました」
「そんなに昔からですか」
「子どももいます。叶羽が……、叶羽が生まれて、惣一郎さんと連絡が取れなくなりました。私はただ……彼に叶羽を会わせたくて……」
「子ども……っ。……わかりました。これは、綾城だけではおさめられない話です。どのようにするのか、西園寺さんと相談してご連絡しますから、今日のところはお引き取りください」

 一瞬、取り乱しかけた天音は、冷静になってそう言った。

 すみれは惣一郎さんに会いたいのか、あきらめきれない表情を見せたが、颯太になだめられて帰っていった。

 ふたりの姿が見えなくなると、天音は私の肩を抱く千隼さんに目を向けた。

「いろいろと、お礼を言うべきとは思いますが、その前にお尋ねしてもよろしい?」
「はい」
「千隼さん、あなたはなぜここにいるのです?」

 私はぎゅっと、千隼さんの腕をつかんだ。この手を離したら、もう会えなくなると思った。

「それはもう、ご存知なのでは?」
「ええそうね。聞き方を変えましょう。西園寺さんに聞いたんですよ、さきほど。惣一郎さんはこのところ、ずっと入院していて帰宅していないと。つゆりの部屋を毎晩訪ねていたのは、あなたなの?」
「お察しの通りです」

 千隼さんは動揺を見せなかった。

 全部、覚悟していたのだと思う。いつか、西園寺武彦の策が明るみになる日を。

「それはどういうことか、わかっておいでですか? つゆりは西園寺に嫁ぐ身。決して、許されることではありませんよ」
「わかっています。しかし、許していただくしか他はありません」
「許すですって?」

 天音の口調がきつくなる。

「お母さま、実はこれにはわけが……」

 あわてて口をはさむ私の肩に、彼は手を置く。黙っていなさいと言われたみたいだった。

「つゆりさんとお付き合いしています。どのような非難を受けようとも、別れるつもりはありません」
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