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隠し切れぬ思いの未来
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「つゆり、千隼さんとお付き合いしてるって、本当なの?」
離れの座敷で、天音とふたりきり、向かい合っていた。
惣一郎さんとすみれが恋人同士で、すでに二人の間に子どもがいることや、颯太がすみれのために奔走し、私に婚約解消を迫っていたことが明るみになってしまった。
思いもよらない出来事が立て続けに起き、天音は怒りを隠し切れないでいた。
「それは……」
「それは、なんです?」
私は黙り込む。
どうして、千隼さんはあんな嘘をついたのだろう。もっと、体裁のいい言い訳は見つけられたはずだ。
苛立つように指先を動かす天音にたえきれず、のどから絞り出すように声を発した。
「……本当ではありません」
「本当ではない? じゃあ、毎夜毎夜、ふたりでこそこそ何をやっていたの」
天音はわかってるはずだ。だけど、それを口にはしない。私も、言えない。
「……何も。何もしていません」
「何もないなんて、そんな、子どもだましにもならない嘘、誰が信じますか。つゆり、これは裏切りですよ。西園寺さんのお耳に入れば、どのように思われるかわかっているんですかっ。……本当に、困った話ですよ」
憤る天音に深々と頭を下げる。すると、手のひらをそっとなでられた。顔を上げると、あきれと怒りがない交ぜになった表情を崩した天音が、慈愛に満ちた目をする。
「惣一郎さんの気持ちを確かめましょう。すみれさんに会わないでいるのは、つゆりとの結婚を真剣に考えてくださってるからですよ」
そう信じたい思いが天音に言わせたのだろうが、その優しい気持ちに触れたら、目がしらが熱くなる。ぽたりと、涙が彼女の手の甲をぬらす。
「大丈夫。大丈夫よ、つゆり」
赤子をあやすように、天音は私を抱き寄せ、髪をなでた。私は何も言えなくて、母の胸に顔をうずめ、子供のように泣いた。
翌朝、西園寺家に連絡を取った天音は、不服そうに、「2時に行きますよ」と私に言った。どうやら、すぐに会いたいという申し出を断られたようだ。
武彦が惣一郎さんと良からぬ算段を企むのではないかと心配し、彼女の機嫌は悪かった。しかし、そんな心配も杞憂だ。惣一郎さんはもう、この世にいない。あるとしたら、武彦が今度はどんな策を弄してくるのかという危惧だけだ。
約束の時間になり、私と天音はそろって西園寺邸を訪ねた。
「つゆり、千隼さんとお付き合いしてるって、本当なの?」
離れの座敷で、天音とふたりきり、向かい合っていた。
惣一郎さんとすみれが恋人同士で、すでに二人の間に子どもがいることや、颯太がすみれのために奔走し、私に婚約解消を迫っていたことが明るみになってしまった。
思いもよらない出来事が立て続けに起き、天音は怒りを隠し切れないでいた。
「それは……」
「それは、なんです?」
私は黙り込む。
どうして、千隼さんはあんな嘘をついたのだろう。もっと、体裁のいい言い訳は見つけられたはずだ。
苛立つように指先を動かす天音にたえきれず、のどから絞り出すように声を発した。
「……本当ではありません」
「本当ではない? じゃあ、毎夜毎夜、ふたりでこそこそ何をやっていたの」
天音はわかってるはずだ。だけど、それを口にはしない。私も、言えない。
「……何も。何もしていません」
「何もないなんて、そんな、子どもだましにもならない嘘、誰が信じますか。つゆり、これは裏切りですよ。西園寺さんのお耳に入れば、どのように思われるかわかっているんですかっ。……本当に、困った話ですよ」
憤る天音に深々と頭を下げる。すると、手のひらをそっとなでられた。顔を上げると、あきれと怒りがない交ぜになった表情を崩した天音が、慈愛に満ちた目をする。
「惣一郎さんの気持ちを確かめましょう。すみれさんに会わないでいるのは、つゆりとの結婚を真剣に考えてくださってるからですよ」
そう信じたい思いが天音に言わせたのだろうが、その優しい気持ちに触れたら、目がしらが熱くなる。ぽたりと、涙が彼女の手の甲をぬらす。
「大丈夫。大丈夫よ、つゆり」
赤子をあやすように、天音は私を抱き寄せ、髪をなでた。私は何も言えなくて、母の胸に顔をうずめ、子供のように泣いた。
翌朝、西園寺家に連絡を取った天音は、不服そうに、「2時に行きますよ」と私に言った。どうやら、すぐに会いたいという申し出を断られたようだ。
武彦が惣一郎さんと良からぬ算段を企むのではないかと心配し、彼女の機嫌は悪かった。しかし、そんな心配も杞憂だ。惣一郎さんはもう、この世にいない。あるとしたら、武彦が今度はどんな策を弄してくるのかという危惧だけだ。
約束の時間になり、私と天音はそろって西園寺邸を訪ねた。
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