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隠し切れぬ思いの未来
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「つゆり、重たい花器は私が。何も、引っ越しの日にまで、綾城堂の片付けなどしなくていいんですよ」
忙しなく座敷と台所を行き来する天音が言うから、小さな花器を持ち上げる。
「じっとしてるのも落ち着かないので」
「まあ、あきれた。休める時は休むんですよ。もう、あなた一人の体ではないんですから。それはそうと、千隼さんはそろそろいらっしゃるの?」
玄関の方へ視線を移して、天音が尋ねる。
「はい。新居のお掃除をしてから来てくださるみたい」
「そうなの。千隼さんもお忙しいのに、よく動いてくれますね」
「感謝しています」
「本当にね。あなたたちは付き合ってると言ったり、付き合ってないと言ってみたり、そうかと思えば、結婚するって言い出したり。どうなっているのか。まあ、千隼さんでしたら、安心ですけどね」
惣一郎さんとの婚約が解消されたことで、天音は周囲から揶揄されて、つらい思いもしたのだろう。
恨み節のひとつでも言わないとやっていられないのだと天音は言うが、穏やかな笑顔を見れば、安堵してくれているのだと思う。
「千隼さんのおかげで、結婚式も無事に終えられましたし、新居のマンションも納得行くまで探してくださいましたし、それに……」
お腹をそっとなでる。ここには、千隼さんとの待望の赤ちゃんがいる。
「千隼さんの行動力には驚きましたよ。身内だけとはいえ、素敵な結婚式になりましたしね。来年の落ち着いた頃に、盛大な披露宴を開いてくださるとおっしゃってくださって、本当に安心ですよ」
天音がしみじみとそう言ったとき、綾城堂の戸がノックされる。
「あら、千隼さんかしら?」
「見てきます」
私はすぐさま玄関に向かい、引き戸を開けた。その先には、ひとりの青年が心もとなさげに立っている。
「まあ、岩山さん」
声をかけると、西園寺邸以来、何ヶ月も会っていなかった颯太は、申し訳なさそうに頭をさげた。
「お久しぶりです。すみません、突然」
「お元気でしたか?」
「ええ、はい。おかげさまで。綾城さんもお元気そうですね」
「はい、元気ですよ。今日は、どうされたの?」
尋ねると、颯太は少し言いにくそうに目を泳がせて、眉を下げた。
「落ち着いた頃にご挨拶をと思っていたんですけど、あれから、すみれちゃんもいろいろあって、綾城さんもご結婚が決まったとうかがいましたし、機を逸してしまってました」
「いいんですよ。岩山さんは何も気にされなくて」
颯太が責任を感じる必要は何もない。しかし、それでは彼の気がおさまらなくて、こうして訪ねてきてくれたのだろう。
「つゆり、重たい花器は私が。何も、引っ越しの日にまで、綾城堂の片付けなどしなくていいんですよ」
忙しなく座敷と台所を行き来する天音が言うから、小さな花器を持ち上げる。
「じっとしてるのも落ち着かないので」
「まあ、あきれた。休める時は休むんですよ。もう、あなた一人の体ではないんですから。それはそうと、千隼さんはそろそろいらっしゃるの?」
玄関の方へ視線を移して、天音が尋ねる。
「はい。新居のお掃除をしてから来てくださるみたい」
「そうなの。千隼さんもお忙しいのに、よく動いてくれますね」
「感謝しています」
「本当にね。あなたたちは付き合ってると言ったり、付き合ってないと言ってみたり、そうかと思えば、結婚するって言い出したり。どうなっているのか。まあ、千隼さんでしたら、安心ですけどね」
惣一郎さんとの婚約が解消されたことで、天音は周囲から揶揄されて、つらい思いもしたのだろう。
恨み節のひとつでも言わないとやっていられないのだと天音は言うが、穏やかな笑顔を見れば、安堵してくれているのだと思う。
「千隼さんのおかげで、結婚式も無事に終えられましたし、新居のマンションも納得行くまで探してくださいましたし、それに……」
お腹をそっとなでる。ここには、千隼さんとの待望の赤ちゃんがいる。
「千隼さんの行動力には驚きましたよ。身内だけとはいえ、素敵な結婚式になりましたしね。来年の落ち着いた頃に、盛大な披露宴を開いてくださるとおっしゃってくださって、本当に安心ですよ」
天音がしみじみとそう言ったとき、綾城堂の戸がノックされる。
「あら、千隼さんかしら?」
「見てきます」
私はすぐさま玄関に向かい、引き戸を開けた。その先には、ひとりの青年が心もとなさげに立っている。
「まあ、岩山さん」
声をかけると、西園寺邸以来、何ヶ月も会っていなかった颯太は、申し訳なさそうに頭をさげた。
「お久しぶりです。すみません、突然」
「お元気でしたか?」
「ええ、はい。おかげさまで。綾城さんもお元気そうですね」
「はい、元気ですよ。今日は、どうされたの?」
尋ねると、颯太は少し言いにくそうに目を泳がせて、眉を下げた。
「落ち着いた頃にご挨拶をと思っていたんですけど、あれから、すみれちゃんもいろいろあって、綾城さんもご結婚が決まったとうかがいましたし、機を逸してしまってました」
「いいんですよ。岩山さんは何も気にされなくて」
颯太が責任を感じる必要は何もない。しかし、それでは彼の気がおさまらなくて、こうして訪ねてきてくれたのだろう。
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