冥婚の花嫁は義弟に愛を注がれる

水城ひさぎ

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隠し切れぬ思いの未来

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「つゆりが相手でなければ、西園寺さんの申し出なんて断りますよ。当然です」

 力強く言う。誤解しないでほしい。その気持ちが強く伝わってくる。

「ずっと、どんなお気持ちで私を訪ねてくるのだろうと思っておりました……」
「どんなって……。つゆりが愛おしくて抱いていましたよ。子を授かるか授からないかよりも、ただつゆりを愛していたかった。つゆりも、同じ気持ちでしたか?」

 グッと抱き寄せられて、戸惑う。

「私は少し違って……」
「違う?」

 不安げな瞳が目の前で揺れる。そんな目をしないでって、彼の手をそっと握る。

「千隼さんとの子が欲しかったです。だってそうすれば、ずっと千隼さんの側にいられるような気がしたから」
「つゆり」
「千隼さんが好きです。ずっと、綾城堂へ来てくださる日を楽しみにしていました。触れ合えなくても、心はずっとあなたのものでした」

 千隼さんの顔が近づいて、唇が重なる。何度か触れ合ううちに、貪欲になって、さらに深く絡まり合っていく。

「つゆり」

 キスの合間に私の名を呼んで、彼の指が髪をほどく。そのまま下がる指先が、着物の前身を広げて、帯がスルスルとゆるんでいく。

「千隼さん……、このようなところでは……」
「布団を敷く間も惜しいですよ」
「お布団は敷いてあって……」
「それは、誘ってくれてるんですか?」

 千隼さんはくすりと笑って私を抱き上げると、隣の部屋へと入っていく。布団にそっと下ろされて、ぴしゃりとふすまが閉められる。

 薄暗い部屋の窓から、満月の光が差し込む。ぼんやりと闇の中に浮かぶ彼が、私の上へとかぶさってくる。

「つゆりの肌が恋しかったですよ」

 着物をたやすく脱がせて、肌に唇を落としてくる。久しぶりに触れた彼を思うと気恥ずかしくて、身体をよじってしまう。

「逃げずに、もっと見せて」
「……あんまり見ないで」
「満月は明るすぎますか? 庭に咲く、どんな花よりも美しいつゆりがよく見える」

 そう言って、胸のふくらみを大きな手のひらに包んで、つぼみを摘み取るように唇で優しく触れてくる。

 甘い息が漏れてしまうと、耳たぶに息がかかる。

「今すぐにでも、つゆりの中に入りたい」
「そのような言い方は……恥ずかしいです」
「かわいらしいですね、あなたは。もう何度もこうしてきたというのに。今さらですよ」

 足を押し開かれて、宣言通り、もったいぶる様子もなく入ってくる。今までに感じたことのない質量に、息が乱れる。

「覚悟はいいですか? つゆり。思いが通じたとあれば、これまでのように手加減はしませんよ」
「そんなことをおっしゃっるけど……、お優しくしてくださるとわかっています」
「何もわかってませんね。あまりにかわいいと、俺だって壊れるんですよ」

 激しく揺れる力強さの中には、優しさがある。子を成すための行為ではなく、私たちが深く愛し合う証拠を刻むような行為に、身体中が満たされていく。

「いいですか?」

 息を荒らげながら、千隼さんが聞いてくる。

「あ……っ、お待ちになって。赤ちゃんができてはいけません」
「以前は欲しくてたまらなかったではないですか」

 ちょっと笑う彼が妖艶で、どきりとする。

「それはだって……」
「結婚するのなら、いいですか?」
「え、結婚……?」
「つゆりにまた縁談が持ち上がっては困る」

 意地悪そうに言うが、瞳の奥には不安も揺らいでいる。その不安は、彼だけのものではなく……。

「桐生さまはお許しくださるでしょうか……」
「反対するはずがありませんよ。そろそろ結婚したらどうかと、余計な世話ばかりかけてくる親ですしね」
「そういうお話があるの?」
「縁談はすべて断っています。俺は、つゆりとしか結婚したくないんです」
「本当に、私でよろしいの?」
「つゆりがいいんですよ。俺と、結婚しましょう」
「はい」

 うなずくと、私の頭をゆるりとなでた千隼さんが、急に真剣な目をして、足を抱える。そのまま激しく突き立ててくる。

「千隼さん……っ」
「つゆ……り」

 苦しげに息を吐き出したとともに、私の中へ情熱が注ぎ込まれてくるのを感じる。とても温かくて優しい情熱が。

「千隼さん、好き……」

 彼の後ろ頭を引き寄せる。どちらからともなく唇を合わせて、優しく重ね合う。

「俺も、愛してますよ。つゆり……」

 初めて心を通わせた夜は、どれほどか切望していた、最愛の宝を授かる日となった。
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