好奇心は身を滅ぼす?

お子様

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048 ダンジョン物語

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『あっ、そうだ』
「どうした?」
『どうせならさ、ダンジョンのある町に行こうぜ!』
「ダンジョンか……」

確かにずっと気にはなっている。
見てみたいし、体験してみたい。

もしダンジョンの近くに町があるなら、探索で便利な色々な物を売ってそうだ。
携帯食料とか、魔法道具とか。
そう考えたら行ってみたくなってきたな。

「そうしようか」
『話がわかるねぇ! よっしゃ、ここから俺のダンジョン物語が始まるぜ!』
「ダンジョン物語ってなんだよ?」
『簡単な話だよ。俺みたいな雑魚っぽいヤツがダンジョンに行くだろ?
 すぐ死ぬと思われてる中、バンバンと強敵を倒してインベントリとかに入れて持ち帰るんだよ。
 で、高額取引して大金持ち。それを妬んだバカが襲ってくるけど返り討ち。みたいな』
「ダンジョンで倒したモンスターは肉や皮や角が残るだけで消えるらしいぞ?」
『じゃあドロップ品を大量に持ち帰るんだ!』
「後さ、強敵を倒せるようなヤツを襲うヤツなんか居るか?」
『見た目に騙されるんだよ』
「いや、持って帰ってきた物で強いってバレてるじゃん」
『ぐぬぬ……あっ、ほら、罠を仕掛けて倒したとか、偶然瀕死のを見つけて倒したとか。
 そういう風に都合良く解釈して“たまたまだ”とか“不意打ちすれば勝てる”とか考えるんだよ!』

いや、たまたまって……。大量に持って帰るくらい倒してたら、たまたまじゃないだろ。
それにそんな活躍するヤツが不意打ち程度で負けるわけないじゃん。

『あっ、強敵と戦ってる時に、こっそり後ろから襲ってくるってパターンもあるかな!』
「えっ? その敵を倒して稼げば良いだろ?」
『倒せる実力が無いから他人から奪うんだよ!』
「え~と……仮にさ、後ろからの不意打ちで俺達を倒したとしよう。
 その場合、目の前に倒せない強さのモンスターが残るんだが、どうすんだよ?」
『ひ、瀕死にした頃に襲うんだよ!』
「そもそも、戦闘中の方が周囲を気にしてると思うんだけど」
『判ったよ! これは無し! ありえない話だった!
 じゃあ、俺やその町で仲良くなった人とかを人質にして身代金を取ってくる!』

えっと、何で仮定の話を議論しているのだろうか?
でも、ここで論破しとかなきゃ、到着時に変な行動しそうだから潰しておこう。

「まず、ハリーが人質になる訳無いじゃん。勝てるだろ」
『いやいや、薬で眠らされて~とか、ありそうじゃん』
「……夢を壊すようで悪いけどさ、ハリーも精霊と契約してるよね?
 最近ドラゴンから聞いたんだけど、精霊ってさ、契約者に害を及ぼそうとすると怒るらしいよ?」
『へ? どういう事?』
「だから、眠らせて誘拐しようとしたら、精霊が勝手に?自動的に?攻撃するらしい」

その行動原理がお供え物の為っていうんだから、ちょっと悲しい話だけど。

「精霊の本気の怒りなんて、町くらい簡単に破壊するから、逆に俺達が気をつけないとね」
『マジですか……』
「俺なんて重力を司る精霊と契約してるんだぞ? 何かしようとしたら即ペチャンコだろうな……」
『怖い! じゃあやっぱり親しくなった人を誘拐パターンじゃね?
 基本的に子供か女性が狙われるね。町に着いたら女の子の居る宿屋か、孤児院に行こうぜ!』
「なんで拐われる人を作りに行くんだよ! 交流しなきゃ済む話だ!」
『それじゃあ物語が進まないだろ! 必ず事件に巻き込まれるのが主人公の仕事!』

そんな仕事は嫌だ。

「よし、こうしよう。行くダンジョンは交流のある国にあるヤツ。
 泊まる所はそこを治めてる貴族の人に世話になろう」
『え~、権力に頼るの反対!』
「何でだよ! 一番安全だぞ!」
『貴族にすり寄るなんて主人公失格! 貴族は悪事をしてるって決まりなの!
 …………いや、待てよ。うん、そうしようか』
「待て、今、何を考えた?」
『ん? その貴族は良い人だけど、悪いヤツから恨みを買ってる。
 だから俺達が居る時に、その貴族の子供とか奥さんが誘拐されるとか、商人に騙されるとか何かあるだろうな~と』
「ねぇよ!」

何考えてんだ、こいつ。

『どうでも良いから、早く行け。うるさいわ!!』

ドラゴンに怒られたので出発します。
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