カードゲームを持たされて異世界に送られた

お子様

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062 食フェスティバル

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時は過ぎ。
今日は既に大会日。
大勢の人達がこの町を訪れている。


開催したのは『第一回、B級グルメ決定戦!』と言う名前の、食フェスティバル。
この町の食堂だけでなく、国全体から募集をした。

開催するにあたって王様にも許可を取ったので、ある意味『国主催の国内No1決定戦』のようになってしまった。
国が絡むと準備が早い。たった1週間で開催するとはなぁ……。
その代わり、参加者が続々と増えたのはラッキーだった。
そしてそれと共に、来場者も増えた。
現在、町に入りきれないらしく、待ちまで発生しているらしい。

警備しているのは国軍。
こんな事に派遣して良いのか?と疑問に思ったが、王様が許可したらしい。
国軍のお陰で、町の外で入場を待っている人達も安全。

で、俺達だけど……店の手伝いをしている。
家族経営だったけど、この人の量では全然追いつけず、俺達も手伝う事になったのだ。

ちなみに王太子は別。さすがに顔バレする。
じゃあ姫様は? これが意外。バレないのだ。
色んな行事への参加を断って(エスケープして)たらしい。さすが国王主催の舞踏会も逃げるほどだ。
まぁ、極稀に判る人も居るようなので、基本裏方仕事だけど。


「あ~~~、疲れた~~~」
「慣れてないから、キツいわね」
「確かにそうですね」

やっと本日の営業が終了した。
宿が併設されているが、大会中は泊まれない決まりになったので夜は手が空くのだ。
と言っても、店主達は明日の仕込みをしているけど。

「これほどの人が集まるとは思わなかった……」
「でも、それが狙いだったんでしょ?」
「いや、それもあるけど……」
「食べてもらいリピーターになってもらう、でしたか?」
「売り上げをあげて、貯蓄を増やし、潰れなくするってのも目的だったわね」

アイザックさんと姫様には、そういう説明をオリアスがした。
まぁ間違ってはいない。
真の狙いは別にあるけど。


真の狙い。
これは俺と、企画したオリアス、そして王様と王太子の4人(3人と1匹?)だけが知っている。
能力の謀略に相応しい企みだった。汚い手とも言う。

この『第一回、B級グルメ決定戦!』、実は出来レースなのだ!!

審査員は俺達の仲間である王太子がやっている。
つまり、どんなに美味しい物を食べても、優勝はこの店に決まるようになっている。

観客や参加した店から苦情が出ないのかって?
出る訳が無い。なんせ最初から『審査は王太子が行い、王太子個人の好みで決定される』と記載されているのだ!
個人の好みに文句は言えまい。
しかも相手はこの国の王子様。次期王様だぞ? 誰がその味覚に文句を言えるだろうか?
まぁ、ゲテモノ料理を選ばれれば、苦情が殺到するだろうけど。

オリアスは『大会で優勝し、王太子認定の店とする。これでこの店は安泰』って言ってた。
副産物として、先程姫様が言ってた『味を知ってもらう』『リピーターを作る』『貯蓄を作る』ってのがある。
更に『毎年開催して経済効果を生む』『特産の無い村や町でも有名になれる前例が出来る』とかも言ってた。
まぁ、よくもあの短時間で考えるものだ。さすが悪魔。

八百長と気づかれるのはマズいので、姫様やアイザックさんには言ってないんだよ。
バラすような人達じゃないけど、こういうのは知っている人は少ない方が良いからね。

ちなみに、来年からは普通に審査する事になっている。
一度優勝した店は出られない事になっているから、この店が落ち目になる事は無い。
まぁ、店主が調子に乗って研鑽を止めれば、ダメになる可能性もあるが。そこは信じるしかない。



計5日間の開催が終わり、今日は発表日。
この大会で何が一番大変かって、王太子が出店している全ての食べ物を食べないといけない事。
お疲れ様です。恨むならオリアスを。

はい。当然ですが、優勝しました。
店主さん、泣いてるよ。閉店準備が一転して増築しないと捌けない程の盛況ぶりだもんなぁ。

2位はお菓子だった。
俺も食べたが、あれはゼリーみたいな感じ。
色々な果実を内包させ、種類を増やしてた。
確かに美味かったけど、2位になるとはなぁ。
もしかして、腹一杯だったから、軽い物が良かったなんて事は……?

3位は隣町ケルンにある店舗で、刺し身を出品してた。
王太子の説明によると、漁の結果で食べられない日がある事がマイナスだったらしい。

ちなみに、優勝した事で、この店では使う箸がブームになったらしい。
箸や和食を広めるのはラノベの主人公の仕事ではないだろうか?
田舎の一店舗が広めちゃったよ。

ちなみにちなみに。王太子も姫様もアイザックさんも、箸が使えるようになりました。
商機を逃さない商人によって販売された、マイ箸を所有されてます。


ラノベのように乱入者も無く、盛況のまま大会は終了した。
お疲れ様でした。
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