本妻探偵〜彼女の不幸な結婚〜

地野千塩

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占い師炎上編-1

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 共通の敵がいると、例えお互いに共通点がなくても団結できるのか。文花はそんな事を痛感した。

 オフ会は錦糸町のカラオケボックスで行われた。
 参加者は、文花のほかに華、ナオコ、タッチー。文花以外はハンドルネームで本名は不明だった。

 文花はどうにか風邪を治し、夕方カラオケボックスに向かった。文花以外に参加メンバーは働いているので、終業後にしか会えないのだった。

 四人は狭いカラオケボックスで昔の曲を歌った。
文花とナオコは同じ世代なので、小室ファミリーやラルクやモーニング娘などを歌うが、若い華や五十代ぐらいのタッチーが歌う曲はさっぱりわからなかった。

 華はメールから想像したように二十代半ばぐらいの若い女だった。綺麗にメイクをし、髪も巻いている。ピンクのブラウスがよく似合っていた。

  ミイの事がよっぽど憎いらしく、ミイにされた仕打ちをぶつぶつと話す。

「『仕事できないブス!死ねばいい』って毎日言われてね。本当に辛かった」
「わかるわ~、私も小学生のような仕事してるんでしょって毎回言われてたの」

 ナオコはそう言ってオレンジジュースをごくごくと飲み干した。

 ナオコは婚活中、ミイのコンサルを頼んだ時被害にあったと言う。毎回コンサル時に容姿や仕事内容を罵られてすっかり病んでしまったと言う。ナオコは医療関係機関で働いていると言っていたが、それ以上は話さなかった。

 華と違ってナオコは地味な雰囲気だった。メガネをかけ、ほとんど化粧もしていなかった。歳も文花と同じくらいの三十代で、文花はナオコが一番親しみを感じた。

「辛かったわね。ナオコちゃん」

 タッチーは涙もろいのか、華やナオコの話を聞いて、目に涙を浮かべていた。

 文花はタッチーにハンカチを渡す。

「わぁ、ありがとう。文花ちゃん」

 タッチーはハンカチで目元を抑えた。

 タッチーは五十代ぐらいだろうか。目元にくっきりと深いシワがあった。もともと堀の深い美人のようなので、あまり老け込んだ雰囲気はなく、柄ものの派手なシャツが似合っていた。ちょっと魔女っぽい。

 職業は飲食関係と言っていた。副業で占いもやっていると言う。確かに占い師のような少し怪しく艶っぽい雰囲気があった。

 タッチーはミイに直接被害は受けていないが、ネットで彼女がスピリチュアル批判の言動にすっかりアンチになってしまったらしい。なんでもミイの「スピリチュアルにハマる女はブスだ」という言葉が許せないらしい。

 文花が見たところタッチー不美人ではなく、そんな事で傷つくかどうかわからないが、自分が大事にしているものを馬鹿にされたら確かに良い感情は持てないだとうなとも思った。特にタッチーは感情移入しやすいタイプのように見えたし、ネットでのマイナスな言葉の影響も人より受けやすいのかもしれない。

 本名もお互い知らない、年齢もバラバラだが、共通点は「ミイのアンチ」というだけで話が盛り上がる。その会話の中で文花が欲しい情報は特に生まれなかったが、夫と不倫している女が性悪だとわかってほっとする。悪口というのはジャンクフードのようで、身体に悪いと思っていてもついつい口にしてしまう。

「文花ちゃんは、あの女に不倫されてるのね」
「そうなんです。参っちゃいますよ」

 副業が占い師のせいか、華やナオコが歌っている間、タッチーはよく話を聞いてくれた。

「大丈夫よ、旦那さんはあの女とはきっと別れるでしょ」
「そうですかね」

 現在も北海道に旅行に行っている。ミイのプライベートのSNSを見る限り、二人は旅を楽しんでいるようだった。

「わかった、ちょっと占ってあげる」

 タッチはカバンの中から、いくつか石を取り出した。小さな巾着に入っている石はパワーストーンのようだった。黄色やピンクの色とりどりの石をテーブルの上に置いていく。

「タッチー、何やってるんですか?」
「なんですか、これ」

 華やナオコも歌うのをやめ、タッチーの石に注目する。

「ミイの今後を少し見てみます」

 タッチーの言葉にみなこちらに集まってくる。

「静かにして、今情報を読んでるから」

 タッチーは石を触ったり、転がしながら、目を瞑り集中していた。

 思わずみんな無言になり、タッチーの丸みをおびた指先を見ていた。タッチーは小さくうめいたり、呟いたりしながら石を触っていて、まるで石と会話でもしているかのようにも見えた。

「わかった…」

 なぜかタッチーの顔は青ざめていた。

「……浅山ミイはもう少しで死ぬわよ」
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