本妻探偵〜彼女の不幸な結婚〜

地野千塩

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疑惑編-1

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 警察はすぐにやってきた。

 夫はパニックになってしまい、事情を聞かれてもほとんど答えられなかった。

 代わりに刑事に一から十まで話さなければならなくなった。

 もちろん夫の不倫相手である事も全て文花が説明した。指紋も取られた。

 ちょうどそこへ連絡を受けたミイの夫がやってきた。

 こちらもかなり動揺していて、泣いてるような笑っている様な複雑な顔をして参っていた。細身の若い男だった。目鼻立ちが整い、ハーフのような男だった。

 彼が夫を見つけると、怒りをあらわにした。

「お前がミイを殺したんだ!」

 夫の胸元に飛びかかり、警官たちが必死に抑えてつけた。

 夫は夫で「お前こそミイちゃんの事愛してないだろう!」と怒鳴り返す始末。

 結局、収集がつかなくなり、パトカーで文花と夫は自宅へ送り返された。

 後日また詳しく話を聞きにくると言う。

「お世話になりました」

 玄関先でパトカーで送ってくれた警官に礼を言う。警官は顔を顰める。

「奥さん、いやに冷静ですね。普通、こんな時に……」
「ええ。これでしばらく夫は不倫出来ませんからねぇ。その点においては嬉しいわ」

 警官は絶句していた。

 この発言は余計だったと思ったが、今更遅い。おそらく、文花も殺害の容疑を持たれると思ったが、実際夫はしばらく不倫は辞められると思うと、そう思うと嬉しい気持ちは抑えつけられなかた。もちろんミイに死んでほしいとは思ってなかったし、凄く嬉しいわけでは無いが。

 家に帰り、服を着替えて憔悴している夫にお茶を淹れた。

 熱い緑茶が飲みたいと言うので、キッチンで湯を沸騰させ、濃い緑茶をポットに淹れた。もちろん無農薬の国産のお茶だ。キッチンに爽やかな匂いが広がり、ようやく文花も少し冷静になってきた。

 この状況はもしかして自分も犯人だと疑われるのではないか、と。

 夫が犯人扱いされても仕方がない状況ではあるが、動機で言えば自分が一番あるのはないか。

「お茶持ってきましたよ」

 離れでぼんやりテレビを見ている夫にポットと湯呑みを渡す。

「ミイが死んだなんてテレビでやってないな……」
「そんあ無名な恋愛コンサルタントを取り上げるほど、テレビ局は暇じゃないでしょう」

 夫は文花の言う事など無視してテレビのチャンネルを変えていた。

「お茶飲んで、少しは落ち着いたら?」
「うん、まあ。というか君は落ち着きすぎてないかい?」
「だって嬉しいだもの。これであなたは不倫できない」
「はは、文花ちゃんが殺したの?」
「殺してません」

 死んで欲しいなどは思っていない。もちろん殺してもいない。人間の命が失われた事は悲しいが、不倫相手が死んだ事は特に悲しくなかった。

 人の死体も親しい人ならもっとショックだったかもしれないが、憎い相手の死体については正直人形が横たわっているようにしか見えなかった。

 夫はため息をついて、リモコンを置き、湯呑みにお茶を注いで、口に含んだ。

「まさかミイが死ぬなんてさ」
「不倫なんてしてると碌な死に方しないのね…」
「血の涙もないヤツだな。あれはきっと呪いだ。糖子がやったんだ」

 文花は夫の後にある机に目お向けるとメモが置いてあるのが見えた。メモには、ミイの死体の様子が書かれていた。おそらくあとで小説のネタにするのだろう。いつ書いたのかは知らないが、文花の事を血も涙もない人間だと非難する資格はあるだろうか。

 ちょうどテレビはCMが終わり、番組が再び始まった。

「それでは次のコーナーに行きます。人気スピリチュアルリストの桜村糖子さんの除霊しちゃうぞ!コーナーです」

 どこかのスタジオから一転、画面から「桜村糖子の除霊しちゃうぞ!」という文字が浮かび上がり、どこかの海辺の洋館が映し出された。

 洋館の前には黒いドレスを着た笑顔の桜村糖子がマイクを持っている。

「今日は呪いの人形の除霊をしま~す!今日は鎌倉のとある洋館に来ているのですが」

 夫と文花は顔を見合わせた。

「この番組生放送よ……」
「は? という事は……?」

 桜村糖子は反抗は不可能だ。

 時計を見た。十四時半だ。

 ミイを殺してすぐ鎌倉に行く事はできるだろうか?ミイの死亡推定時刻はわからないが、お昼に殺されたとしたら絶対に無理だった。
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