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第二部
妻の矜持編-1
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パティを殺した犯人はルーナ。動機や殺害方法はフローラが推理した通りだろう。公爵家に押し入り、脅しの手紙を投げたのもルーナとみて間違いないはずだ。
ルーナが脱税までしていた事は予想外だったが、これもアリスから回収した重要な証拠だ。
パティの事件を詳細に記録した愛人ノート(二代目)、それに手元に戻ってきた愛人ノート、ルーナの脱税の記録は金庫にしまい、鍵をかけておいた。
まさかこの愛人ノートが殺人まで引き起こしてしまった事は不本意だが、これ以上事件が起きない事を願うしかない。
「ああ、この男の人、すごい美男子。本当に薔薇のように美しいわ」
翌朝、食堂でアリスはうっとりと目を細め、頬もオレンジ色に染まってる。パンやスープ、ソーセージ、蒸しケーキにも眼中になく、夫の絵を見つめていた。
「美しいわ。こんな綺麗ない男の人がいたなんて!」
「あのね、アリス。これは私の夫よ。何度も不貞を繰り返した男ですよ」
フローラは呆れてツッコミを入れたが、聞く耳を持ってくれない。絵を見つめ、ぽーっと頬を染めていた。
「だって、この男の人、王子様みたい……」
「いやいや、この絵は愛人が描いたものですし、だいぶ漫画的に美化されてますよ!」
フィリスも朝食のオレンジジュースをグラスに注ぎながらツッコミを入れていた。
あの後、実物の公爵に面会させてあげると約束したら、アリスは逃げる事もなく、実に大人しいものだった。朝もこうして起きてきて、食堂で一緒に食事をとっていたが、アリスはずっと夫の絵を見つめていた。
「まあ、あの絵はかなり美化してますよ。実物はもっと色々アレですよ」
アンジェラもグラスにオレンジジュースを入れながらツッコミを入れていた。アンジェラは特に呆れているようで、もうアリスの食事マナーに注意すらしなかった。
「ああ、本当に薔薇みたいにお美しい方だわ」
「本当にゲス夫に何を言っているの……」
フローラも呆れつつ、朝食を食べていたが、内心は意外とそうでもない。少し笑ってしまうぐらいだ。最近は事件に時間を取られ、ゆっくり食事もできなかった。事件のキーマン、しかもイライラさせるアリスではあったが、一緒に食事をするのは、楽しい。
それはアリスもそうだった。友達がゼロだった過去や、ブリジッドの毒親っぷりを愚痴りつつも、笑顔でパンを食べていた。テーブルの上にパンのカスが散らばるが、もう何か怒る気も失せる。
窓の外からは、澄んだ青空も見えた。綺麗な朝の空を見ながら、フローラの心も寛大になっていた。事件が解決に向かい、肩の力も抜けてくる。これで夫が上手くアリスを説得し、白警団に自首させれば、事件は解決と言っていい。コンラッドが「ギャフン!」と言っている顔を想像するだけで、フローラの口元もゆるむ。
「あれ、奥さん。なんか最近元気ですね?」
「ええ、フィリス。コンラッドが遠吠えしている姿を想像すると楽しくって」
「それはわかります! ギャフンと言わせましょ!」
フィリスが大声で笑い、アリスも釣られていた。殺人事件が起きた事など信じられないぐらい平和だった。
もっともこの事件が解決しても、夫も書いた「愛人探偵」が売れるかは不明だ。あと一回重版がかからないと、シリーズ化の話は消える。その事を思うと、胃がキリキリしてくるが、今は事件だ。事件を解決する事を優先しよう。
朝食を食べ終えたフローラはいつも以上にゆっくりと身支度を整えた。薄紫のドレスに着替え、髪もアップし、メイクも派手目にしてみた。どうも悪役女優をしてから、派手な格好をするのも嫌いでなくなった。最後に一応結婚指輪もはめた。一時期は見るのも嫌なものだったが、今はさほど心に負担でもない。おそらく事件解決に忙しく、夫の事は八割以上忘れているからかもしれない。
身支度を整えたフローラは、日傘をさし、夫のいるホテルへ向かった。アンジェラやフィリスにはアリスが逃げないよう監視も頼んだ。今のアリスの雰囲気では、まず逃げやしないだろうが。
あとは夫にアリスの件を話し、協力して貰えば事件はほぼ解決したようなもの。ずっと肩に乗っていた重荷も軽くなり、フローラの口元もニヤつくぐらだったが。
「あなた、来たわ」
夫のいるホテルのドアを開けた。てっきり原稿中毒になって仕事をしているだろうと思ったが、違った。
「フローラあああああ! どうしよう!」
夫は泣き叫んでいた。
ルーナが脱税までしていた事は予想外だったが、これもアリスから回収した重要な証拠だ。
パティの事件を詳細に記録した愛人ノート(二代目)、それに手元に戻ってきた愛人ノート、ルーナの脱税の記録は金庫にしまい、鍵をかけておいた。
まさかこの愛人ノートが殺人まで引き起こしてしまった事は不本意だが、これ以上事件が起きない事を願うしかない。
「ああ、この男の人、すごい美男子。本当に薔薇のように美しいわ」
翌朝、食堂でアリスはうっとりと目を細め、頬もオレンジ色に染まってる。パンやスープ、ソーセージ、蒸しケーキにも眼中になく、夫の絵を見つめていた。
「美しいわ。こんな綺麗ない男の人がいたなんて!」
「あのね、アリス。これは私の夫よ。何度も不貞を繰り返した男ですよ」
フローラは呆れてツッコミを入れたが、聞く耳を持ってくれない。絵を見つめ、ぽーっと頬を染めていた。
「だって、この男の人、王子様みたい……」
「いやいや、この絵は愛人が描いたものですし、だいぶ漫画的に美化されてますよ!」
フィリスも朝食のオレンジジュースをグラスに注ぎながらツッコミを入れていた。
あの後、実物の公爵に面会させてあげると約束したら、アリスは逃げる事もなく、実に大人しいものだった。朝もこうして起きてきて、食堂で一緒に食事をとっていたが、アリスはずっと夫の絵を見つめていた。
「まあ、あの絵はかなり美化してますよ。実物はもっと色々アレですよ」
アンジェラもグラスにオレンジジュースを入れながらツッコミを入れていた。アンジェラは特に呆れているようで、もうアリスの食事マナーに注意すらしなかった。
「ああ、本当に薔薇みたいにお美しい方だわ」
「本当にゲス夫に何を言っているの……」
フローラも呆れつつ、朝食を食べていたが、内心は意外とそうでもない。少し笑ってしまうぐらいだ。最近は事件に時間を取られ、ゆっくり食事もできなかった。事件のキーマン、しかもイライラさせるアリスではあったが、一緒に食事をするのは、楽しい。
それはアリスもそうだった。友達がゼロだった過去や、ブリジッドの毒親っぷりを愚痴りつつも、笑顔でパンを食べていた。テーブルの上にパンのカスが散らばるが、もう何か怒る気も失せる。
窓の外からは、澄んだ青空も見えた。綺麗な朝の空を見ながら、フローラの心も寛大になっていた。事件が解決に向かい、肩の力も抜けてくる。これで夫が上手くアリスを説得し、白警団に自首させれば、事件は解決と言っていい。コンラッドが「ギャフン!」と言っている顔を想像するだけで、フローラの口元もゆるむ。
「あれ、奥さん。なんか最近元気ですね?」
「ええ、フィリス。コンラッドが遠吠えしている姿を想像すると楽しくって」
「それはわかります! ギャフンと言わせましょ!」
フィリスが大声で笑い、アリスも釣られていた。殺人事件が起きた事など信じられないぐらい平和だった。
もっともこの事件が解決しても、夫も書いた「愛人探偵」が売れるかは不明だ。あと一回重版がかからないと、シリーズ化の話は消える。その事を思うと、胃がキリキリしてくるが、今は事件だ。事件を解決する事を優先しよう。
朝食を食べ終えたフローラはいつも以上にゆっくりと身支度を整えた。薄紫のドレスに着替え、髪もアップし、メイクも派手目にしてみた。どうも悪役女優をしてから、派手な格好をするのも嫌いでなくなった。最後に一応結婚指輪もはめた。一時期は見るのも嫌なものだったが、今はさほど心に負担でもない。おそらく事件解決に忙しく、夫の事は八割以上忘れているからかもしれない。
身支度を整えたフローラは、日傘をさし、夫のいるホテルへ向かった。アンジェラやフィリスにはアリスが逃げないよう監視も頼んだ。今のアリスの雰囲気では、まず逃げやしないだろうが。
あとは夫にアリスの件を話し、協力して貰えば事件はほぼ解決したようなもの。ずっと肩に乗っていた重荷も軽くなり、フローラの口元もニヤつくぐらだったが。
「あなた、来たわ」
夫のいるホテルのドアを開けた。てっきり原稿中毒になって仕事をしているだろうと思ったが、違った。
「フローラあああああ! どうしよう!」
夫は泣き叫んでいた。
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