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第三部
極悪恋愛小説家編-3
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夫は本当に合コンに熱心らしい。最近は全く帰っておらず、フローラのメンタルも悪化していた。一つ救いなのは、まだ不倫関係にはなっていない事だが、だからといって何も嬉しくもない。
「ふーん、こういう作品なのね……」
フローラは公爵家の書斎でモラーナの作品を読んでいた。表紙や煌びやかで派手な恋愛小説だったが、どこかで見た事があるような話。特に夫の恋愛小説に似ていて眠くもなってきた。新刊にはサイン会のお知らせもあり、一応偵察に行って来ようかと思うが。
「奥さん、読書ですか。読書の秋ですね!」
フィリスが書斎へやってきた。お盆を持っていたが、紅茶やクッキーを持ってきたらしい。
「フィリス、どう思う? モラーナの恋愛小説って面白い?」
フローラは面白いとは思えなかったが、個人の好みだろう。フィリスの意見を聞いてみる事にした。
フィリスは大きな目でモラーナの恋愛小説を見ていた。その視線はだいぶ好意的。
「まあ、私は結構好きですね。確かにテンプレですけど、王道だし、頭使わないで読めるのも。それに女流作家ってだけでもすごくないですか?」
この国は基本的に男尊女卑。作家も男の方が多い。モラーナは文学界隈では評判が悪いと聞いたが、性別で差別されている可能性もあるだろ。そう思うと、無闇に嫌いにはなれない。
「ま、とりあえずモラーナのサイン会へ行ってくるわ」
「確かにどんな女かは気になりますね!」
「あなたも来る?」
「やめときます。これでも仕事溜まってるんですよー」
フィリスは涙声だ。彼女の本職をすっかり忘れていてバツが悪い。フローラは思わず下を向く。
「ごめんなさいね、いつも捜査に協力して貰って」
「いえ、いいんですよ。でも、モラーナは何となく危険人物な気がします」
「その根拠は?」
「ないです、カンです!」
フィリスは無邪気にニカっと笑っていた。
「でも女のカンはよく当たりますよ? それにモラーナの作品の敵役、嫌な性格の子ばかりで憎たらしい。本人がモデルだったりして?」
それはフローラも同意だった。全体手に薄くてテンプレな恋愛小説だったが、敵役の描写はイキイキとしていた。ライバル役の悪役令嬢の描写を思い出すだけでフローラの眉間にも皺がよる。
「とりあえず、モラーナのサイン会に行ってくるわ。あとはよろしく」
「ええ、奥さん! 偵察頑張ってください!」
笑顔でフィリスに送り出され、大都の書店へ向かった。よく来ている書店で、店頭には夫の小説も山積み。ゴシップ誌や冒険小説、各種辞典など種類も豊富だった。今の時代は出版物が一大ブームだった。書店も狭い所だが、王都の貴族の女達で賑わっている。
モラーナの小説も山積みされていた。王道の恋愛小説ばかりだが、サイン会という事もあり、女性達がキャッキャと騒ながら手に取っているのも見える。
サイン会は二階のイベントスペースで行われるらしく、ミニトークショーも行うという。イベントスペースは女性達で混み合い、フローラもそこに紛れ込む事に成功した。今日はメイクもドレスも地味目にして成功だった。イベントスペースにいるモラーナの読者達は地味な雰囲気の令嬢が多かった。あとはフィリスのような田舎娘も多い。ラナの姿もあった。最前列で歓声を送り、推しも完全に変えたようだ。
「みなさん、ごきげんよう。今日はサイン会に出てくれてありがとう」
ステージで話すモラーナは堂々としたものだ。作家とは思えないほどスピーチ慣れしていた。時々客の笑いもとり盛り上げてもいた。仕事は出来るタイプなのだろう。偵察に来ていたフローラの姿には全く気づいていない。
ただ、容姿は微妙。というか悪い方だ。眉毛も太く、肩幅も広めのガッチリ体型で、芋臭い。鼻の穴が大きいので、口元も余計に残念に見えた。たぶん、年齢は二十五歳ぐらいだが、ドヤ顔で恋愛論を語るラモーナを見ていると恥ずかしくもなってきた。もっとも芋臭い顔は逆に堂々としているようにも見え、ステージ映えはしていたが。
服装も派手なドレスを着ていた。流行の型のもので、今の令嬢がよく着ているものだ。裾にもたっぷりレースがあり、ヘッドドレスもシャラシャラと豪華だが、モラーナには全く似合っていない。
「今、私は恋をしてるんです」
モラーナのその声は、見た目に反して可愛らしかった。
「実は同業者の作家先生なんですぅ。一目惚れしちゃいました!」
モラーナは顔を真っ赤にしながらスピーチしていたが、フローラの顔は蒼白だった。
「えへ、好きになっちゃったのー! 本当に付き合いたいわ」
これは夫の事を言っているのだろうか。確かにまだ不倫関係ではないが、モラーナの目がやたらと鋭く見える。これは事実上の略奪宣言と解釈した。フローラの表情は固まり、全く笑顔を見せない。
「あら、あなたは?」
ふと、隣を見ると、若い女がいた。目が止まったのは、二つ理由があった。一つは美人だったからだ。この地味な女達の中では掃き溜めの鶴のよう。目も大きく、鼻筋も綺麗だ。個性は薄いが、どう見ても美人。もう一つの理由はドレスがモラーナと全く同じだから。ヘッドドレスも同じだった。
別に珍しい事ではない。若い令嬢が集まればファッションが被る事もあるだろうが、隣にいる彼女の表情は微妙だ。悔しそうに下唇を噛んでいた。
「モラーナなんて最低。消えれば良いのに」
小さな声で呟いているのも聞き逃さなかった。
この美女はモラーナのアンチだろうか。そに割にはわざわざサイン会に来るのは筋が通らない。ラナのように手紙でコソコソと嫌がらせするのがコスパも良いだろうに。
「真似っこモラーナ、こんな女は消えればいい」
そんな事まで呟いていた。これは何か事情を知っているかもしれない。
彼女はイベント会場から逃げようとしたが、ここで逃す訳にはいかない。彼女の腕をとり笑顔を見せた。向こうはリスのように怯えていたので安心させる為だったが、さらにカタカタと怯えていた。フローラは自分の悪役女優顔は、初対面の時は何の得も無いと思うが、わざとおっとりと微笑む。
「私、今はモラーナについて調べてるんです」
「調べてるって何を……?」
「私の夫を略奪する可能性もあるりますから。私、公爵夫人のフローラです。フローラ・アガターですわ」
その名前を出すと、美女は余計に怯えていた。どうやらフローラの悪評はかなり広まっているらしい。
「あのパティの事件を解決した人?」
「ええ。探偵よ。またはサレ公爵夫人って呼ばれてますけど。出版社の近くのでお茶でもしません?」
美女が深く頷いた。この状況では逃げられ無いと悟ったらしい。
「ふーん、こういう作品なのね……」
フローラは公爵家の書斎でモラーナの作品を読んでいた。表紙や煌びやかで派手な恋愛小説だったが、どこかで見た事があるような話。特に夫の恋愛小説に似ていて眠くもなってきた。新刊にはサイン会のお知らせもあり、一応偵察に行って来ようかと思うが。
「奥さん、読書ですか。読書の秋ですね!」
フィリスが書斎へやってきた。お盆を持っていたが、紅茶やクッキーを持ってきたらしい。
「フィリス、どう思う? モラーナの恋愛小説って面白い?」
フローラは面白いとは思えなかったが、個人の好みだろう。フィリスの意見を聞いてみる事にした。
フィリスは大きな目でモラーナの恋愛小説を見ていた。その視線はだいぶ好意的。
「まあ、私は結構好きですね。確かにテンプレですけど、王道だし、頭使わないで読めるのも。それに女流作家ってだけでもすごくないですか?」
この国は基本的に男尊女卑。作家も男の方が多い。モラーナは文学界隈では評判が悪いと聞いたが、性別で差別されている可能性もあるだろ。そう思うと、無闇に嫌いにはなれない。
「ま、とりあえずモラーナのサイン会へ行ってくるわ」
「確かにどんな女かは気になりますね!」
「あなたも来る?」
「やめときます。これでも仕事溜まってるんですよー」
フィリスは涙声だ。彼女の本職をすっかり忘れていてバツが悪い。フローラは思わず下を向く。
「ごめんなさいね、いつも捜査に協力して貰って」
「いえ、いいんですよ。でも、モラーナは何となく危険人物な気がします」
「その根拠は?」
「ないです、カンです!」
フィリスは無邪気にニカっと笑っていた。
「でも女のカンはよく当たりますよ? それにモラーナの作品の敵役、嫌な性格の子ばかりで憎たらしい。本人がモデルだったりして?」
それはフローラも同意だった。全体手に薄くてテンプレな恋愛小説だったが、敵役の描写はイキイキとしていた。ライバル役の悪役令嬢の描写を思い出すだけでフローラの眉間にも皺がよる。
「とりあえず、モラーナのサイン会に行ってくるわ。あとはよろしく」
「ええ、奥さん! 偵察頑張ってください!」
笑顔でフィリスに送り出され、大都の書店へ向かった。よく来ている書店で、店頭には夫の小説も山積み。ゴシップ誌や冒険小説、各種辞典など種類も豊富だった。今の時代は出版物が一大ブームだった。書店も狭い所だが、王都の貴族の女達で賑わっている。
モラーナの小説も山積みされていた。王道の恋愛小説ばかりだが、サイン会という事もあり、女性達がキャッキャと騒ながら手に取っているのも見える。
サイン会は二階のイベントスペースで行われるらしく、ミニトークショーも行うという。イベントスペースは女性達で混み合い、フローラもそこに紛れ込む事に成功した。今日はメイクもドレスも地味目にして成功だった。イベントスペースにいるモラーナの読者達は地味な雰囲気の令嬢が多かった。あとはフィリスのような田舎娘も多い。ラナの姿もあった。最前列で歓声を送り、推しも完全に変えたようだ。
「みなさん、ごきげんよう。今日はサイン会に出てくれてありがとう」
ステージで話すモラーナは堂々としたものだ。作家とは思えないほどスピーチ慣れしていた。時々客の笑いもとり盛り上げてもいた。仕事は出来るタイプなのだろう。偵察に来ていたフローラの姿には全く気づいていない。
ただ、容姿は微妙。というか悪い方だ。眉毛も太く、肩幅も広めのガッチリ体型で、芋臭い。鼻の穴が大きいので、口元も余計に残念に見えた。たぶん、年齢は二十五歳ぐらいだが、ドヤ顔で恋愛論を語るラモーナを見ていると恥ずかしくもなってきた。もっとも芋臭い顔は逆に堂々としているようにも見え、ステージ映えはしていたが。
服装も派手なドレスを着ていた。流行の型のもので、今の令嬢がよく着ているものだ。裾にもたっぷりレースがあり、ヘッドドレスもシャラシャラと豪華だが、モラーナには全く似合っていない。
「今、私は恋をしてるんです」
モラーナのその声は、見た目に反して可愛らしかった。
「実は同業者の作家先生なんですぅ。一目惚れしちゃいました!」
モラーナは顔を真っ赤にしながらスピーチしていたが、フローラの顔は蒼白だった。
「えへ、好きになっちゃったのー! 本当に付き合いたいわ」
これは夫の事を言っているのだろうか。確かにまだ不倫関係ではないが、モラーナの目がやたらと鋭く見える。これは事実上の略奪宣言と解釈した。フローラの表情は固まり、全く笑顔を見せない。
「あら、あなたは?」
ふと、隣を見ると、若い女がいた。目が止まったのは、二つ理由があった。一つは美人だったからだ。この地味な女達の中では掃き溜めの鶴のよう。目も大きく、鼻筋も綺麗だ。個性は薄いが、どう見ても美人。もう一つの理由はドレスがモラーナと全く同じだから。ヘッドドレスも同じだった。
別に珍しい事ではない。若い令嬢が集まればファッションが被る事もあるだろうが、隣にいる彼女の表情は微妙だ。悔しそうに下唇を噛んでいた。
「モラーナなんて最低。消えれば良いのに」
小さな声で呟いているのも聞き逃さなかった。
この美女はモラーナのアンチだろうか。そに割にはわざわざサイン会に来るのは筋が通らない。ラナのように手紙でコソコソと嫌がらせするのがコスパも良いだろうに。
「真似っこモラーナ、こんな女は消えればいい」
そんな事まで呟いていた。これは何か事情を知っているかもしれない。
彼女はイベント会場から逃げようとしたが、ここで逃す訳にはいかない。彼女の腕をとり笑顔を見せた。向こうはリスのように怯えていたので安心させる為だったが、さらにカタカタと怯えていた。フローラは自分の悪役女優顔は、初対面の時は何の得も無いと思うが、わざとおっとりと微笑む。
「私、今はモラーナについて調べてるんです」
「調べてるって何を……?」
「私の夫を略奪する可能性もあるりますから。私、公爵夫人のフローラです。フローラ・アガターですわ」
その名前を出すと、美女は余計に怯えていた。どうやらフローラの悪評はかなり広まっているらしい。
「あのパティの事件を解決した人?」
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