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第二章
20話
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「俺の方こそ、ごめん」
ぽつりとこぼれた言葉に、レイの睫毛がぱちぱちと揺れる。次の瞬間、彼はそっと首を横に振った。
「謝らないで」
俺の手を取ったまま、レイはゆっくりと目を細める。
「じゃあさ、答えられる範囲でいいから、俺が言うことに答えて?」
その穏やかな声の奥には、逃げ場を塞ぐような静けさがあり、淡く熱を帯びたものがあるようにも感じた。
許された気がしたわけじゃない。ただ、レイのその静かな目を、これ以上裏切れなかった。
「……わかった」
俺がそう返すと、レイは一度だけ小さく頷いた。
「それ、痛くない?」
視線が、再び俺の首筋へと向けられる。その視線が触れるだけで、皮膚がひりつくような気がした。
「今は、痛くない」
「そっか」
レイの声には、特に責めるような響きはなかった。少しだけ間を置いて、次の言葉が落ちてくる。
「彼女にされたの?」
その瞬間、返事に迷い、すぐには答えられなかった。
「……彼女じゃない」
それが、今の俺に出せる精一杯の答えだった。レイは軽く目を細めた。その表情には、どこか考え込むような色が浮かぶ。
「じゃあ、知らない人?」
レイは少し首を傾げながら、あくまで穏やかな声音で続ける。
「違う」
きっぱりと否定した声に、レイの視線がぴたりと俺を射抜く。微かに揺れた睫毛の奥で、感情の波がちらと揺れた気がした。息を潜めるような間のあと、レイが次の問いを投げる。
「男?」
「……男」
レイはほんの少しだけ息を吸い、そして淡々と続ける。
「その人のこと、好き?」
心臓の音が、やけに大きく響いた。
俺は依織のことが好きなのかな。一緒に映画見てご飯食べて楽しかった。でも、痛いことをされたのも事実で、どう答えたらいいかわからない。
けれど、このまま沈黙を続けることのほうが、もっと苦しい。
「わかんない……でも、たぶん……好きなのかも」
そう口にした瞬間、何かが決定的に変わってしまったような気がした。
レイは、ひとつだけ瞬きをして、ほんの少しだけ視線を落とす。
そして、またこちらを見る。その瞳には、もう笑みはなかった。
「じゃあさ、噛まれたとき……嫌じゃなかったんだ?」
その言葉の刃先が、胸の奥を抉る。声にならない息が、喉で止まる。
「それ、は……」
何も続けられなかった。レイの目はただ、まっすぐ俺を見ていた。
レイは俺の手を離さなかった。絡めた指をそのままに、もう片方の手をソファについた。
そのまま、ゆっくりとその端正な顔を近づけてくる。
「俺のこと……好きなんだよね?」
わざとらしく、そんなことを言ってくる。挑発的にも聞こえる確信に満ちた声。
息が当たる距離で、レイの瞳が俺を射抜く。反論もできず、ただ目をそらす。そんな俺を見て、レイはかすかに笑った。
「俺が同じことしたら、嫌?」
その問いの意味を理解した瞬間、体をそらして距離を取ろうとするも、レイはじり、じり、とソファに手をついたまま詰め寄ってくる。
「っ……レイ、まて」
次の瞬間、バランスを崩された。視界が傾き、背中がソファに沈む。
息が交じるほど近い距離で、彼はふっと笑う。
「……このまま、ちゅーしてもいい?」
繋がれていた手は離され、指先が頬をなぞった。
ぽつりとこぼれた言葉に、レイの睫毛がぱちぱちと揺れる。次の瞬間、彼はそっと首を横に振った。
「謝らないで」
俺の手を取ったまま、レイはゆっくりと目を細める。
「じゃあさ、答えられる範囲でいいから、俺が言うことに答えて?」
その穏やかな声の奥には、逃げ場を塞ぐような静けさがあり、淡く熱を帯びたものがあるようにも感じた。
許された気がしたわけじゃない。ただ、レイのその静かな目を、これ以上裏切れなかった。
「……わかった」
俺がそう返すと、レイは一度だけ小さく頷いた。
「それ、痛くない?」
視線が、再び俺の首筋へと向けられる。その視線が触れるだけで、皮膚がひりつくような気がした。
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「そっか」
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その瞬間、返事に迷い、すぐには答えられなかった。
「……彼女じゃない」
それが、今の俺に出せる精一杯の答えだった。レイは軽く目を細めた。その表情には、どこか考え込むような色が浮かぶ。
「じゃあ、知らない人?」
レイは少し首を傾げながら、あくまで穏やかな声音で続ける。
「違う」
きっぱりと否定した声に、レイの視線がぴたりと俺を射抜く。微かに揺れた睫毛の奥で、感情の波がちらと揺れた気がした。息を潜めるような間のあと、レイが次の問いを投げる。
「男?」
「……男」
レイはほんの少しだけ息を吸い、そして淡々と続ける。
「その人のこと、好き?」
心臓の音が、やけに大きく響いた。
俺は依織のことが好きなのかな。一緒に映画見てご飯食べて楽しかった。でも、痛いことをされたのも事実で、どう答えたらいいかわからない。
けれど、このまま沈黙を続けることのほうが、もっと苦しい。
「わかんない……でも、たぶん……好きなのかも」
そう口にした瞬間、何かが決定的に変わってしまったような気がした。
レイは、ひとつだけ瞬きをして、ほんの少しだけ視線を落とす。
そして、またこちらを見る。その瞳には、もう笑みはなかった。
「じゃあさ、噛まれたとき……嫌じゃなかったんだ?」
その言葉の刃先が、胸の奥を抉る。声にならない息が、喉で止まる。
「それ、は……」
何も続けられなかった。レイの目はただ、まっすぐ俺を見ていた。
レイは俺の手を離さなかった。絡めた指をそのままに、もう片方の手をソファについた。
そのまま、ゆっくりとその端正な顔を近づけてくる。
「俺のこと……好きなんだよね?」
わざとらしく、そんなことを言ってくる。挑発的にも聞こえる確信に満ちた声。
息が当たる距離で、レイの瞳が俺を射抜く。反論もできず、ただ目をそらす。そんな俺を見て、レイはかすかに笑った。
「俺が同じことしたら、嫌?」
その問いの意味を理解した瞬間、体をそらして距離を取ろうとするも、レイはじり、じり、とソファに手をついたまま詰め寄ってくる。
「っ……レイ、まて」
次の瞬間、バランスを崩された。視界が傾き、背中がソファに沈む。
息が交じるほど近い距離で、彼はふっと笑う。
「……このまま、ちゅーしてもいい?」
繋がれていた手は離され、指先が頬をなぞった。
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