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第二章
29話
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「終わったぞ」
「ありがと~!」
玲央は振り返ると、嬉しそうに笑って立ち上がった。
スポンジを渡すと、彼はまた「ありがと」と言いそれを受け取り、その引き締まった身体に泡を滑らせていく。
「背中洗ってもらうの、ひさしぶりだったな~。栞季くんは、彼女にやってあげたりしてた?」
「ひみつ」
そう返すと、玲央は目を丸くして、すぐにニヤニヤと笑い出した。
「えー、なにそれ!ってことは、やってあげたことあるんだ?」
「さぁな」
探るような視線を無視して、俺は自分の足元に意識を向ける。手のひらで軽く泡を立て直し、脛から足首、足の甲へと丁寧に滑らせていく。
泡のぬめりが肌を滑るのを感じながら、無言で洗い続けることで、気持ちを落ち着けようとした。
「ちなみに俺はやってあげたことあるけど、やってもらったのは栞季くんがはじめてだよ?」
その言葉に、思わず手を止めそうになった。独り言のように呟かれた”それ”に俺はなんと返せばいいのかわからなかった。“そうなんだ”じゃ素っ気ないし、“俺が初めてなんだ?”も違うし。
結局、俺は何も言えないまま足を洗い終え、泡を流すためにシャワーを手に取った。
ちらりと玲央の方を見ると、彼はもう顔を背けていた。笑っていた口元は、今は湯気に紛れてよく見えない。
全身を流し終え、浴槽の縁から立ち上がると、玲央にシャワーを手渡す。彼はいつもの調子で「ありがと~」と受け取るけれど、視線は合わなかった。
玲央は背を向けたまま、淡々と体についた泡を流していく。やがてシャワーの音が止むと、浴室に残るのは、水の滴る音と、ふたり分の呼吸の音だけだった。
「玲央」
小さく呼びかけても、彼は振り返らない。顔を上げる気配すらない。ため息まじりに玲央の濡れた頬にそっと手を添え、正面から唇を重ねた。
「何拗ねてんの?俺のこと嫌いなのか?」
唇を離し、玲央の目を見つめる。軽く首を傾げて問いかけたときには、もう勝負はついていた。
目の前の玲央は、顔を真っ赤に染めて固まっている。数秒の沈黙のあと、わなわなと肩を震わせた。
「すき~~~~っ!!!」
次の瞬間、彼は声を張り上げて、俺に飛びついてきた。濡れた腕が勢いよく背中に回される。玲央のほうが背が高いせいで、俺の顔は自然と彼の肩口に埋まる格好になった。
「な、ちょ、おま……重い……!」
「やだ、もっとぎゅーってさせて!すき、すき……栞季くんのこと、だいすき……っ」
玲央の息が、耳元に熱くかかる。抱きしめられた身体に、体温とは違う熱が走って、反射的に彼の背中に腕を伸ばした。
「うぅ……さっきのキス、反則すぎるよ」
「……うるさいな」
「ん~、言いたいことはあるけど、まぁいっか!キスしてくれたから許しましょう!!」
「バカじゃねえの」
ぼそっと返しても、玲央は構わずぎゅうぎゅうと抱きついてくる。
「ありがと~!」
玲央は振り返ると、嬉しそうに笑って立ち上がった。
スポンジを渡すと、彼はまた「ありがと」と言いそれを受け取り、その引き締まった身体に泡を滑らせていく。
「背中洗ってもらうの、ひさしぶりだったな~。栞季くんは、彼女にやってあげたりしてた?」
「ひみつ」
そう返すと、玲央は目を丸くして、すぐにニヤニヤと笑い出した。
「えー、なにそれ!ってことは、やってあげたことあるんだ?」
「さぁな」
探るような視線を無視して、俺は自分の足元に意識を向ける。手のひらで軽く泡を立て直し、脛から足首、足の甲へと丁寧に滑らせていく。
泡のぬめりが肌を滑るのを感じながら、無言で洗い続けることで、気持ちを落ち着けようとした。
「ちなみに俺はやってあげたことあるけど、やってもらったのは栞季くんがはじめてだよ?」
その言葉に、思わず手を止めそうになった。独り言のように呟かれた”それ”に俺はなんと返せばいいのかわからなかった。“そうなんだ”じゃ素っ気ないし、“俺が初めてなんだ?”も違うし。
結局、俺は何も言えないまま足を洗い終え、泡を流すためにシャワーを手に取った。
ちらりと玲央の方を見ると、彼はもう顔を背けていた。笑っていた口元は、今は湯気に紛れてよく見えない。
全身を流し終え、浴槽の縁から立ち上がると、玲央にシャワーを手渡す。彼はいつもの調子で「ありがと~」と受け取るけれど、視線は合わなかった。
玲央は背を向けたまま、淡々と体についた泡を流していく。やがてシャワーの音が止むと、浴室に残るのは、水の滴る音と、ふたり分の呼吸の音だけだった。
「玲央」
小さく呼びかけても、彼は振り返らない。顔を上げる気配すらない。ため息まじりに玲央の濡れた頬にそっと手を添え、正面から唇を重ねた。
「何拗ねてんの?俺のこと嫌いなのか?」
唇を離し、玲央の目を見つめる。軽く首を傾げて問いかけたときには、もう勝負はついていた。
目の前の玲央は、顔を真っ赤に染めて固まっている。数秒の沈黙のあと、わなわなと肩を震わせた。
「すき~~~~っ!!!」
次の瞬間、彼は声を張り上げて、俺に飛びついてきた。濡れた腕が勢いよく背中に回される。玲央のほうが背が高いせいで、俺の顔は自然と彼の肩口に埋まる格好になった。
「な、ちょ、おま……重い……!」
「やだ、もっとぎゅーってさせて!すき、すき……栞季くんのこと、だいすき……っ」
玲央の息が、耳元に熱くかかる。抱きしめられた身体に、体温とは違う熱が走って、反射的に彼の背中に腕を伸ばした。
「うぅ……さっきのキス、反則すぎるよ」
「……うるさいな」
「ん~、言いたいことはあるけど、まぁいっか!キスしてくれたから許しましょう!!」
「バカじゃねえの」
ぼそっと返しても、玲央は構わずぎゅうぎゅうと抱きついてくる。
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