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しおりを挟む翌日の昼休み、修史は何となく昨日のことが気になって、桂のクラスに足を向けた。
すでにほとんどの生徒が食堂や購買へ移動した後らしく、閑散とした教室の中に、桂の姿はなかった。
「桂は?」
食事に行ったか、それとも放送委員の当番の日だったか。残っていた五、六人の生徒にそう声をかけると、その中の顔見知りの少年が、窓の外を指で示した。
「山崎ならついさっき、気分わるいって帰ったよ」
その答えを聞くなり、修史は身を翻した。階段を駆け降りて昇降口まで行く。そこから校門の方へ目をこらすと、桂の姿が見えた。
修史は上履きのまま、走って桂の後を追いかけた。追いつく前に、足音に気づいた桂が怪訝そうに振り返る。
「……なに?」
「気分が悪いって……?」
そう聞くと、桂は眉をひそめ、それからひらひらと手を振って、修史を追い払うような仕草をする。
「たいしたことない。一人で帰れないほどじゃないから、修史は戻れよ」
「たいしたことないって顔色じゃないだろ、それ」
昨夜、眠っていないのは明らかだった。おそらく原因は、昨日会った、あの聡という男のせいなのだろう。修史はなぜかやり切れずに、唇を噛んだ。そして迷った末に、ゆっくりと言った。
「なあ……何があったか、オレには話せないか? 何か、オレにできることないか、桂」
修史の言葉に、桂は一瞬 驚いたように目をみひらいた。そしてそれから、ゆっくりと微笑んだ。泣きそうな瞳で。
「……遅いよ」
苦しげにかすれた声。
桂は目を閉じた。きっと自分は、もっと早く、この言葉がほしかったのだ。
もう少しだけ、早く。
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