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しおりを挟むその日の放課後の中央廊下で、桂は笹辺悠哉とすれ違った。悠哉は一瞬だけ桂を見て、軽く会釈をしてみせた。
はたから見れば、それは何て事ない、ごくありふれた校内の光景に見えただろう。
「知り合いか?」
一緒に歩いていた修史が、すれ違った悠哉の方を振り返り、そう聞いてくる。桂は曖昧に首を振った。
「知り合いって言うか……うちのクラスの、瀧川っているだろ。あいつが、気に入ってる後輩」
「じゃあ、陸上部の一年? ……何でおまえに会釈するわけ?」
「さあ。……どうも、誤解してるみたいだな。俺と瀧川の仲」
「………」
何か誤解されるようなことしたのか、と言外に修史の沈黙が問い詰めてくる。桂ははぐらかすように首を傾げた。その途端、コツンと額を拳骨で叩かれる。
「何もしてないって、ほんとに」
言いながら、桂は後ろの悠哉の方を振り返った。
……すれ違ったとき、ほんの一瞬だったけど、悠哉の目が複雑な色を放っていた気がした。悲しいような、苦しいような、諦めたような瞳。それは嫉妬と呼ぶほど、強い光ではなかったけれど。
「……案外、完全にカタオモイってわけでもないかもな」
そんなことを呟いて、桂はくすっと笑んだ。
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