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しおりを挟む話がしたい、と瀧川が言ってきたのが、その日の部活の後だった。着替えを終え、帰り支度をすませた所で強引に呼びとめられ、悠哉は不機嫌を露にする。
他の部員は案外薄情なもので、じゃあお先、と声をかけると、瀧川と悠哉を部室に残して、あっさり帰ってしまった。
「別に、こちらは話なんてありません」
取り付く島もなく悠哉が言い放つと、瀧川は腕を組んだ姿勢でドアの前に立つ。
「怒ってるのか?」
「どうして俺が、怒らなくちゃいけないんです?」
瀧川が仁王立ちになって部室のドアを塞いでいるせいで、帰るに帰れない。悠哉はハァーッと長いため息をついた。
「そこ、どいてくれませんか。通れない」
「逃げるのか?」
煽るような口調で言われ、悠哉はムッとする。そういう言い方をされると、絶対に後に引くことができない悠哉の性格を計算したうえでの台詞だろう。
……この手に引っ掛かって、結局こいつに付きまとわれる羽目になったのだ。そんなことを苦々しく思い返す。
「なんで俺が、逃げなくちゃいけないんです?」
話があるならさっさとしろと、悠哉は顎をしゃくる。担いでいた鞄を床に放り出し、壁際に立て掛けてあったパイプ椅子を広げて、がしゃんと座った。
「この前のことは、誤解だ。山崎とは別に、何でもない」
「ええ、わかりました」
悠哉が即答すると、瀧川は眉をひそめた。
「……信じてないな?」
「……だから別に、どうでもいいんです、俺は。瀧川先輩が山崎さんのことを好きなら、それはそれで構わない。いっそ、その方が気が楽です」
本当のところ、何よりも一番大切だなんて言われるのは、自分には重すぎるのだ。
その気持ちに答えてやらなかったために、失ってしまった人がいるから。
「……綺麗な人ですよね、山崎さん。誰だって、あんな人に愛されたら幸せだと思う。でも山崎さんには、他に好きな人がいるから……だから先輩は……俺で、我慢する気になったんですか?」
「我慢?」
「それならその方が、俺は気が楽だ」
吐き捨てるように悠哉が言うと、瀧川は悠哉に歩み寄り、ぐいっと両手で襟首を掴んだ。
「……そうやって、逃げるのか。いつまでも、誰かを思ったり思われたりする気持ちから、逃げるのか?」
「………」
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