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PAST/いくつかの嘘
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しおりを挟むもっと早く、気づくべきだったのだ。ゲートの外に残された翔太は、唇を噛んだ。
ずっと昔……まだ二人が高校生だったころ、遼が突然、翔太と同じ委員会の先輩に会ってみたいと言い出したことがあった。あの時は、なぜ遼がそんなことを言ったのか、わからなかったが……。
『その人って……3年の東條って人と、噂あった?』
あのとき確かに、遼は『東條』の名を口にしていた。なぜ遼が急にその名前を出したのか、自分は気にも止めず、受け流してしまったけれど。
翔太は数カ月前に、遼が自分にした例え話を思い返した。当時、遼と恭臣の間にいったい何があったのか……何となく、推測はできた。
やり切れない苛立ちを抱えながら、ゲートの前で踵を返し、翔太は出国ロビーの中を歩きだす。やがて人込みの中に、見覚えのある姿を見つけ、翔太はふと眉をひそめた。
「なんで、……あんたがここにいるんだ」
スーツ姿のまま、搭乗案内のボードを見上げて佇んでいたその相手の前で、思わず足を止めてそう聞くと、声をかけられた相手は、翔太が誰だかわからない様子で軽く首を傾けた。
仕事を抜けて来たのか、それとも、たまたま時間が空いたのか。遼に会うつもりだったのか……それとも、会わないつもりだったのか。
いずれにしても……東條恭臣がこの場にいるなど、あってはならないことだった。
「あんたは、ここにいちゃいけないはずだ」
重ねて翔太がそう言うと、恭臣はようやく納得したように、頷いてみせた。
「三崎の、友達か」
在学中、話したことなどなかったが……翔太の顔には、見覚えがあった。遼が翔太の隣で、自分には決して見せない明るい笑顔をこぼすのを……たぶん、何度も見ていた。
何度も。
「あんたがここにいたことは……見なかったことに、する。それでいいよな」
憤りを出来る限り抑えて翔太がそう言うと、恭臣は穏やかに答えた。
「……それでいい」
それでいい、と。
PAST/いくつかの嘘 END
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