TSサキュバス

藤塚ソラ

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第1章

第8話:卒業祝い

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「あ、お帰り。どう体調は?」

 俺とリリーは魔界に帰ってきた。
 そして出迎えてくれたのは若干のにやけ顔をしたドクターピアだった。

「もう本当に、びっくりするくらい元気になりました……」

 それは先ほどの行為が現実だったことを表す。
 いや、行為じゃない、うん、あれは食事なのだ、お腹が空けば飯を食う、生き物なら当然の道理だろう?

「私が入る隙もないくらいに激しくヤっていましたよ」

「リリーさん! 余計なこと言わないでください!」

 覚えているからこそ嫌なのだ。
 もう穴があったらそこで暮らしたい、一生。

「はは、元気なら結構。よかったじゃないか」

「うぅ……」

 誰か、記憶を消すことの出来る悪魔とかいないだろうか。
 もう本当に嫌だ!

「リリーさん、早くおいしいもの食べさせてくださいよ」

 もう今日はダメだ。
 早くなんか食べて寝たい、そして忘れよう。

「え、おいしいもの? なに、どんな男?」

 もうこの人やだ!
 俺はニヤニヤするリリーを睨みつけた。

「あはは、ごめんごめん。そんな怒んないでよ」

 そんな可愛らしく舌を出しても俺は許さないからな。

「ふふ、じゃあ行こうか。ドクターピアさんもどうですか? アリアの処女卒業祝いって事で。御馳走しますよ」

 誰が処女だ!
 なんでなんだよ、先に捨てるべきものあっただろうが……。

「気持ちは有り難いがお断りさせていただくよ。私はこれから出かけなければいけないのでな。また今度頼むよ」

「そうですか、わかりました。じゃあ色々ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 ぺこりと頭を下げて病室から出ていく。
 病室を出るとすぐ外に出た。

「ここは……」

「あ、そっか。アリアはずっと気絶してたから初めてか」

 この病院だけではない、辺りには見渡す限りの様々な施設があった。
 酒場をはじめ、八百屋や宿屋などの小規模なお店が一帯にずらっと並んでいる。
 そして道を歩くのは様々な種族の悪魔たち。
 俺らみたいな人型の者もいれば、四足歩行の獣やケンタウロスもいる。
 顔がブタだったり、腕が四本生えていたり、見ているとキリがない。
 そしてどの種族の者も仲良く会話をしている。

「……」

 顔が違う者、腕の数が違う者、指の数が違う者、髪の色が違う者、肌の色が違う者が、皆それぞれ同じように過ごしている。
 ここでは全員同じ悪魔なのだ。

「どう? 凄いでしょ」

 うん、すごい。
 この多様性、そしてそれを受け入れていること。
 みんな違って、みんな良い。
 肌の色が違うだけで騒ぐ人間とは全く違っていた。

「へぇ……」

 俺は少し感動した。

「ここはね、魔王城の城下町なの。だから色々な種族が集まるのね」

「魔王城!? あのマンションの屋上で見せてくれた!?」

 え!? 相当な距離だぞ!?
 どうやって俺を運んでくれたんだ!?

「そうそう、あの魔王城があれよ」

 リリーが指した左側には巨大な建物が禍々しきオーラとともに存在していた。

「ど、どうやってここまで来たんですか!?」

「え、そんなの魔術を使ってささっと」

 けろっとリリーは答えた。

「ま、魔力は大事なんじゃないんですか!?」

 たしか言ってたよね!?
 するとリリーは俺に接近してきた。
 そしてそのまま俺のほっぺたを両側から引っ張った。

痛い痛いひたいひたい何するんですかなみすふんでふか!」

「あのね! あれが緊急事態じゃなかったら何が緊急事態なの! 無駄遣いはダメって言ったけど、あれは無駄遣いじゃないでしょ? それとも、助けたのが余計なお世話だったって言いたいの?」

 ずいずいとリリーの顔が迫ってくる、怖い顔だ。
 俺はぶんぶん首を振った。

いえいえひえひえ全く思ってませんまっあくおもっへまへん助けていただきたふけていあだき感謝してますかんひゃしてまふ

 ぱちん。

「いたぁ……」

 両頬が熱い。

「はぁ、まあいいわ。とりあえず私もお腹が空いたからどこか行くわよ」

「はぁい」

 ほっぺをなでながらリリーに付いていく。
 リリーは慣れた動作であるお店に入っていった。
 俺も慌ててついていく。

「あ、りりーさん。今日はお二人ですか」

「私の弟子のアリアです、よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」

 弟子なのか?

「はじめましてアリアさん、ではこちらにどうぞ。あ、リリーさん、今日もあれですか」

「ああお願いします。いつもの・・・・で」

 ドヤァと振り返るリリー。
 俺は反応に困ったのでとりあえず拍手した。
 さあリリーの推すおいしいものとは何なのか、非常に楽しみだ!


 ♂→♀


「おまたせしましたー」

 ドン!

「うわぁ、おいしそう!」

「……!?」

 なんだ、この、ゲテモノは……?
 目の前にあるのは食べ物なのか……?
 真っ黒のこれが……?

 それは最早原型らしきものもなかった。
 黒い液体の中にドロドロの色々の物が入っている。

「いっただきまーす」

 リリーがフォークで巻いたのは、黒い液体がまとわりついた薄ピンク色の腸……?
 そしてそれを土に入れるなりもぐもぐと味わい始めた。

「うわぁ……」

 こんなに引いたのは久々かもしれない。
 いや、うん、はじめてかも。

「ほら、アリアも食べな」

「い、いえ! な、なんか食欲なくて、あはは……」

 うっ、そんなまっすぐな目で見ないでくれ。
 嘘ついてるのがばれそうだ。

「もしもーし、アリアさーん。目を合わせてくださーい」

「……な、なんですか」

 軽く目を合わせる、辛い。
 てかもう、ばれてると思う。

「一口、一口食べてみなって。おいしいからさ、ね?」

「……」

 ま、まあ見た目がだめなだけかもしれないし、いや中身もダメだったろ。
 なんだよあの気持ち悪い腸みたいなやつ。

「ほらほらー、食え食えー」

 フォークがこちらに近づいてくる。
 先には黒塗りのゲテモノが、

「うあぁー!」

 ばく。
 勢い、勢いが大事。
 ああいう見た目がダメなのは見すぎると逆効果だ。
 もっと食欲が失せるからな。

 舌先で感じてしまったぬめっとした触感が気持ち悪い。
 そして、肝心の味は、

「まっず!」

「えぇっ!?」

 ぺっと紙ナプキンにナニカを吐き出し、口の中を水できれいにする。
 ああ、水って旨いな、水サイコー!

 はたして俺がこの世界の生き方になれる日は訪れるのか。
 ちなみに俺はそんな日は一生来ないと思っている。
 とりあえず違うものを頼むとしよう……。
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