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第2章
第16話:アリアの魔力
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俺は今、明晰夢を見ている。
俺の前には名前も知らない見たこともない女性がいた。
短い黒髪には短いツノが生え、背中には黒い翼が浮かんでいる。
彼女はその切れ長の綺麗な黒い瞳で俺を見ながら言った。
「……緊張してる?」
何がだろうか。
夢の中は見たこともない場所だった。
周りには鬱蒼と木が茂り、動物や虫の声が遠くから聞こえてくる。
そんなジャングルチックなところなど記憶には無かった。
てか、そもそも俺と彼女はこんなところで何をしているのだろうか。
「少しだけ」
俺の口が勝手に開いた。
明晰夢には二つの種類がある。
一つは夢だと分かって自由に動き回れるもの。
二つは夢だと認識しても身体の自由は聞かず、勝手に夢が進んでいってしまうもの。
どうやらこの明晰夢は後者のようだ。
ザクザクと木の枝や草木をかき分けるようにして進んでいく。
この時俺はこんな場所絶対に行った事など無いのに、何故だか懐かしい気分になっていた。
変な夢だ。
「……ねえ、アリア。私だけに出来る事ってなんだろう」
「やっぱり巨大な魔術じゃない?」
俺は即答していた。
これも意図的ではない、勝手にだ。
「確かに、確かにそうなんだけど。私にこの巨大な力を制御すること、出来るのかな……」
その背中はいつもより小さく感じた。
普段は立派に見える彼女でもやっぱり不安はあるのか。
彼女にだけある巨大な力、それはこの世を壊しかねない。
彼女の事など一ミリも知らないのに、俺は彼女に関する知識はあった。
「アリア、私この任務が終わったらやってみたい事あるんだけど、付き合ってくれない……?」
「いいよ……?」
と、何も分からず夢は進んでいく。
湿った地面を踏みしめ森を抜けた所で、誰かが計算したかのように俺は目を覚ました。
♂→♀
「……」
ガバッと布団を持ち上げて跳ね起きる。
ここは変態男――ログの家である。
虫との戦闘で疲れた俺に寝床を貸してくれたのだ。
誰も使っていなかったらしいが、埃一つなくふかふかだった。
変態とは言えども良い人だ。
さて、問題はさっきの明晰夢だが。
気持ち悪いほどのリアリティがあった。
まるで昔、あんな体験をしたかのような。
偶然だろうが何かが引っかかる。
夢の女性の顔がふっと浮かぶ。
あんな人にどこか昔出会っていた気がしなくもない。
「……そんなわけ、ないよな」
窓の外に目をやると高い所に陽がある。
結構長い間眠っていたみたいだ。
「んっ」
ベッドから降りて一階へ向かう。
借りた寝間着は少し大きいが引きずるほどではない。
気を付けながら一歩一歩階段を下りる。
とりあえず二人に起きたことを報告しよう、あとお腹も減った。
「あ、おはようございます」
二人とも一階にいた。
窓際の椅子にはリリーが、部屋の中央にあるソファに家の主人であるログがくつろいで本を読んでいた。
「あ、アリア。少しは元気になった?」
「はい、おかげさまで。ログ、さん、ベッドありがとうございました」
「おう。寝起きもかわいいな」
ガハハと笑う。
「……あ、ありがとうございます」
いまだに『かわいい』と言われるのは反応に困る。
ていうか、かわいいのは当たり前だし!
こんな絵に描いたような美少女、なかなか存在しないのは事実。
「っと、そういえば自己紹介がまだだったな。ボクはログ・クレアク、種族はインキュバスだ。君の事はリリーから良く聞いているよ」
そう言ってログは唐突に俺の手を握った。
「嗚呼、柔らかい。君の優しい熱がボクに伝わってくるよ」
「…………」
「…………」
長い長い沈黙が訪れている。
ログの扱いにはリリーはもちろん、俺も慣れてきていた。
そう、無視すればよいのだ。
「……とまあ、冗談はさておき」
するとログはソファに置いていた本をぱたんと閉じて俺とリリーに向き直った。
「端的に言うと、君が魔術をマスターするのはかなり厳しい」
「え……」
リリーの方を見ると、凄く微妙な顔をしていた。
その顔を見るに、どうやら本当の事らしい。
「ど、どうしてですか……?」
やっと出した俺の声は震えていた。
「君の中にある魔力は少し特殊なんだ。特殊な魔力を使いこなす為のアドバイス的なのは出来ない。ボクもリリーも持っているのは普通の魔力なんだ」
「そんな……」
心臓の拍動がやけに強く大きく感じる。
俺にはこの世界で生きていく術はないのか……。
「でも忘れてはいけない」
「え……」
ログはまっすぐな目で俺に言った。
「君が自身の魔力を扱えるようになった時、君は最高の魔術師になれる。君の魔力はそれが可能だ」
俺の前には名前も知らない見たこともない女性がいた。
短い黒髪には短いツノが生え、背中には黒い翼が浮かんでいる。
彼女はその切れ長の綺麗な黒い瞳で俺を見ながら言った。
「……緊張してる?」
何がだろうか。
夢の中は見たこともない場所だった。
周りには鬱蒼と木が茂り、動物や虫の声が遠くから聞こえてくる。
そんなジャングルチックなところなど記憶には無かった。
てか、そもそも俺と彼女はこんなところで何をしているのだろうか。
「少しだけ」
俺の口が勝手に開いた。
明晰夢には二つの種類がある。
一つは夢だと分かって自由に動き回れるもの。
二つは夢だと認識しても身体の自由は聞かず、勝手に夢が進んでいってしまうもの。
どうやらこの明晰夢は後者のようだ。
ザクザクと木の枝や草木をかき分けるようにして進んでいく。
この時俺はこんな場所絶対に行った事など無いのに、何故だか懐かしい気分になっていた。
変な夢だ。
「……ねえ、アリア。私だけに出来る事ってなんだろう」
「やっぱり巨大な魔術じゃない?」
俺は即答していた。
これも意図的ではない、勝手にだ。
「確かに、確かにそうなんだけど。私にこの巨大な力を制御すること、出来るのかな……」
その背中はいつもより小さく感じた。
普段は立派に見える彼女でもやっぱり不安はあるのか。
彼女にだけある巨大な力、それはこの世を壊しかねない。
彼女の事など一ミリも知らないのに、俺は彼女に関する知識はあった。
「アリア、私この任務が終わったらやってみたい事あるんだけど、付き合ってくれない……?」
「いいよ……?」
と、何も分からず夢は進んでいく。
湿った地面を踏みしめ森を抜けた所で、誰かが計算したかのように俺は目を覚ました。
♂→♀
「……」
ガバッと布団を持ち上げて跳ね起きる。
ここは変態男――ログの家である。
虫との戦闘で疲れた俺に寝床を貸してくれたのだ。
誰も使っていなかったらしいが、埃一つなくふかふかだった。
変態とは言えども良い人だ。
さて、問題はさっきの明晰夢だが。
気持ち悪いほどのリアリティがあった。
まるで昔、あんな体験をしたかのような。
偶然だろうが何かが引っかかる。
夢の女性の顔がふっと浮かぶ。
あんな人にどこか昔出会っていた気がしなくもない。
「……そんなわけ、ないよな」
窓の外に目をやると高い所に陽がある。
結構長い間眠っていたみたいだ。
「んっ」
ベッドから降りて一階へ向かう。
借りた寝間着は少し大きいが引きずるほどではない。
気を付けながら一歩一歩階段を下りる。
とりあえず二人に起きたことを報告しよう、あとお腹も減った。
「あ、おはようございます」
二人とも一階にいた。
窓際の椅子にはリリーが、部屋の中央にあるソファに家の主人であるログがくつろいで本を読んでいた。
「あ、アリア。少しは元気になった?」
「はい、おかげさまで。ログ、さん、ベッドありがとうございました」
「おう。寝起きもかわいいな」
ガハハと笑う。
「……あ、ありがとうございます」
いまだに『かわいい』と言われるのは反応に困る。
ていうか、かわいいのは当たり前だし!
こんな絵に描いたような美少女、なかなか存在しないのは事実。
「っと、そういえば自己紹介がまだだったな。ボクはログ・クレアク、種族はインキュバスだ。君の事はリリーから良く聞いているよ」
そう言ってログは唐突に俺の手を握った。
「嗚呼、柔らかい。君の優しい熱がボクに伝わってくるよ」
「…………」
「…………」
長い長い沈黙が訪れている。
ログの扱いにはリリーはもちろん、俺も慣れてきていた。
そう、無視すればよいのだ。
「……とまあ、冗談はさておき」
するとログはソファに置いていた本をぱたんと閉じて俺とリリーに向き直った。
「端的に言うと、君が魔術をマスターするのはかなり厳しい」
「え……」
リリーの方を見ると、凄く微妙な顔をしていた。
その顔を見るに、どうやら本当の事らしい。
「ど、どうしてですか……?」
やっと出した俺の声は震えていた。
「君の中にある魔力は少し特殊なんだ。特殊な魔力を使いこなす為のアドバイス的なのは出来ない。ボクもリリーも持っているのは普通の魔力なんだ」
「そんな……」
心臓の拍動がやけに強く大きく感じる。
俺にはこの世界で生きていく術はないのか……。
「でも忘れてはいけない」
「え……」
ログはまっすぐな目で俺に言った。
「君が自身の魔力を扱えるようになった時、君は最高の魔術師になれる。君の魔力はそれが可能だ」
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