僕のカノジョは、バーチャルだけどバーチャルじゃない ~耳の素敵な、エルフの女の子がだいすきです~

なっくる

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第3話 ボクとカノジョの異世界デート(オンラインだけど……)

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 RS・オンラインのロゴが表示され、データの読み取りが行われる。
 フレンドの情報が表示され、彼女、ファルがログインしていることがわかる。
 さすが、ファル、時間通り。 些細なことでもうれしい。

 ***  ***

 RS・オンラインのロゴが表示され、データの読み取りが行われる。
 フレンドの情報が表示され、彼、ユウトがログインしていることがわかる。
 さすが、ユウト。 時間に正確なところ、だいすき。

 ***  ***

「ファル!」
「ユウト!」

 だきっ

 お互いのホーム画面 (ゲームの入り口となる画面。このゲームでは、「マイルーム」と呼ばれる)が表示され、2人の3Dモデルが操作できるようになった瞬間、僕たちは抱き合っていた。およそ15時間ぶりの再会とはいえ、ああ、嬉しいなあ。早くスマホで触感や、香りを感じられるようにならないかな。

「マイルーム」は、フレンド同士で、共通のホーム画面として登録することができる。本当にひとつの部屋になっていて、登録したフレンドしか入ることができない。家具などを購入してカスタマイズすることもできる。僕たちのマイルームは板作りの床で、かわいい形をしたテーブルと椅子、ベッド、観葉植物に、紅茶セットが飾られたファンシーな戸棚が置かれている。

 マイルームカスタムに必要な魔法石はなかなかに多いので、ようやく先週アイテムを買い揃えたところだ。それまではデフォルトのフィールドをマイルームにしていたから、なかなかいちゃいちゃできず(コモンフィールドは周りから見えるのだ)に、もんもんとしていたなー。ここは完全はプライベート空間なので、いちゃいちゃできるぞー! 楽しみだ。

 ……おっと、思わず興奮していた。ちゃんとファルの姿を見ないとね。

 彼女はいつものドレス姿。
 ふと、左の前髪に、新しい髪飾りが付いていることに気づく。かわいらしい、レッサーパンダ?の形をした青い髪飾り。彼女の金髪に映えて、きれいだ。

「あっえっと、その髪飾り、新しいの? すごくファルに似合っているよ。かわいいね」
 よし、順調だと思う。女の子に会ったときは、最初にまず褒めろ。僕はネットで調べた「脱・童貞! 高校生男子はここを押さえろ講座」の一文を思い出す。最初にどもってしまったのは、仕方ないだろ、まだ慣れていないんだって。

「えへへ、これはね。 こないだのアップデートで追加されたのを買ったんだ。わたしが飼ってるペットのゴライアスちゃんに似てるの~。現実世界でも同じのを作って、いま、わたしもつけてるんだよ」
 ファルは嬉しそうにはにかむと、たった今撮ったのであろう、一枚の写真を見せてくれる。

 そこには、ファルに抱かれる一匹のもこもこした動物(こちらの世界のレッサーパンダに似ているが、もう少し丸く、毛並みの先が青く光っている。異世界動物! というゴージャスな感じがする)と、満面の笑みを浮かべるファルが写っている。

 おい、ゴライアスちゃんとやら、そこをかわってくれよ……っておお、ゴライアスちゃんの前足が、ファルのおっきな胸にかかっている。それによって少し服がはだけ、胸の谷間が見え……

 こほん、今は発情している場合じゃないので、僕はその写真を大事なものフォルダに保存すると、ファルに向き合った。

「ゴライアスちゃん、もこもこでかわいいね! 現実のファルも、髪飾りよく似合ってる。こういうの作れるんだ。魔導士ってすごいね!」
 女の子の気持ちに同意して、彼女の特徴を褒める。よし、完璧だ!
 マニュアル人間って言わないで。理系男子はこうやって、理論に忠実にしか物事を進められないの!

「えへへ~、ゴライアスちゃん、抱っこして寝ると暖かくて気持ちいいの。 髪飾りはね、わたしもいちおう錬金術師だから、里の裏山から取れる翡翠石から作ったの。 あ、あのあの、こんどユウトに似合う髪飾りを考えて、シロネコトマトで送るね!」
「ほんと!? やったああ! ありがとうファル! お返しも考えるから! ほんとだよ!」
「うん!」

 おおお! ファルからのプレゼント! 女の子からプレゼントもらうの、幼稚園のときに里奈ちゃんから泥団子もらって以来かもだ! ああ、神様ありがとうございます。
 とりあえず僕は近所にある神社の神様に感謝しておいた。

 シロネコトマトは言わずと知れた、日本最大の運送会社だ。先日シルヴェスターランドとの貨物サービスを開始した。通関と輸送に2週間程度の時間がかかるそうだけど、彼女の手作りアイテムをもらえるなんて! これはもう僕、リア充陽キャと言ってもいいのでは?
 僕は童貞らしく、すっかり舞い上がっていた。

 ***  ***

 ふおおお! ユウトにプレゼントを渡せたぞー! お返しも、もらえそうだぞー!
 わたしは心の中でガッツポーズを繰り返しながら、ゴライアスちゃんをぎゅっと抱きしめる。
 少しきついのか、ぺしぺしと前足を動かして、抗議してくるゴライアスちゃん。あ、ごめんね、思わず興奮してた。

 ふう、とわたしは深呼吸する。

 男の子に会ったときは、さりげなくいつもと違う自分を見せましょう。相手が気づいてくれたら、あなたの魅力をアピールしましょう。写真を使ってもいいかもしれません。あくまでかわいく、でも少しえっちなところを見せて。そうすればもう、彼はあなたの虜です。

 先月の帝国ノンノン(10代女子向けのファッション雑誌だ)「脱・地味子! 鈍感男子必殺攻略講座」の一文を思い出す。え、一息でしゃべりすぎって、仕方ないでしょ、まだ慣れていないの!

 でも、胸元をはだけるの、少しどきどきした。こんなんで良かったのかなあ、ねえゴライアスちゃん。
 わたしは、協力してくれた賢いゴライアスちゃんの鼻先をなでる。きゅいきゅいと答えてくれるのがかわいい。

 えへへ、男の子からのプレゼントかあ……105歳のときに、旅人の息子さんから余ったポーションもらって以来かもだ! ああ、神様ありがとうございます。(それはプレゼントなの?っていうツッコミはなしで!)
 彼氏からプレゼントをもらえるなんて! これはもうわたし、リア充陽キャ (最近ニホンではやっている言葉みたい)と言ってもいいのでは?
 わたしは処女らしく、すっかり舞い上がっていた。

 ***  ***

「じゃあ、今日はいつもどおり狩りをして……タウンフィールドで新しいミニゲームが追加されたみたいだから、そこに行こうよ」
「うん!」
 ユウトが今日のプランを提案してくれる。ユウトはいつも引っ込み思案なわたしを引っ張ってくれる。だいすき。

「じゃあ、出発しよう」
 あ、その前に……

「……んっ」
 ぺろっ……

 わたしはいつものように、ユウトに顔を近づけると、そのかわいい耳をひと舐めした。

 ユウトは少しびっくりしてたけど、すくに笑顔になってわたしの耳をぺろり、とひと舐めしてくれる。
 えへへ、気持ちいいな。

 これがわたしたちの「だいすき」の挨拶。

 え、えっちじゃないもん!

 さあ、今日の冒険が始まります。
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