【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚

なっくる

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■第1章 追放と思わぬビッグヒット

第1-3話 異世界のお嬢様(仮)から話を聞こう

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 理事長が変わったことで冒険者学校を放校された、微妙な金スキル持ちのオレ。
 気晴らしに釣りをしていると、謎の老人からグランミスリル製の釣り糸を手渡される。

 その時、謎の金スキルがオレに発現して……使ってみたところ、滝つぼから女の子が釣れました。

 ……う~ん、一言でまとめてみたものの、さっぱり状況がつかめない。

「きゅう……」

 一本釣りで”水揚げ”された女の子は、ルアーをスカートの端に引っ掛け、丈夫な欅の枝に巻き付いた釣り糸にぶら下がる形で、ぐるぐると目を回している。

 艶のある浅黒い肌に、春の日差しを浴びてキラキラと光る美しい銀髪。
 紫色を基調とした、魔法学院の制服風の衣装がよく似合っており、腰に差したマジックワンドが彼女が魔法使いであることを示している。

 豊かな銀髪からのぞく耳はツンと尖っており……書物でしか見たことが無いけど、伝説の……エルフ?

 それよりオレの目を奪ったのは、短めのスカートから伸びるすらりとした美脚である!
 運動不足の魔法使いにありがちな、棒のような脚ではなく、しっかりと鍛えられたふくらはぎのふくらみと、足首の見える黒いローファー……。

 美脚芸術点100!!

 ……いけないイケナイ……初対面の女の子を脚フェチ視点で見るのは失礼だ。

 女の子の転入生が来るたびに、胸談議と脚談議を繰り返すオレとロンドはいつも委員長にシバかれていたことを思い出す。

 それにしてもどうするべきか……目の前にぶら下がっているのは確かにかわいい女の子なんだけど、素性が知れない。

 変な菌とか持っててもヤだしな……いささか失礼な事を考えつつ、慎重に近づいていく。

 そのとき、彼女が目を覚ましたようだ。

 自分が欅の枝に引っかかり、宙づりになっていることに気づいたのか、身をよじってあわて始める。

「んんっ……えっ!? ここはどこですかっ!」

「わたくし、なぜこんな体勢で……って、きゃあああ!」
「スカートが、脱げそうにぃ!」

 不安定な体勢で手足をばたつかせるものだから、ルアーが引っ掛かっているスカートが脱げそうになる。

 危ない!

 彼女が引っ掛かっている枝の高さは3メートルほど……打ち所が悪ければ大怪我をする可能性もある。
 いくら滝つぼから釣れた得体の知れない女の子だと言っても、ほっとけない!
 オレは慌てて彼女の下に駆け寄るものの……。

 すぽん!

「……へっ?」

「きゃああああああっ!」


 ばきんっ!


 やけに軽快な音と共に、彼女の下半身が引っ掛かっていたスカートから抜け、落下してきた彼女のカカト落としが、オレの顔面にクリーンヒットしたのだった。


 ***  ***

「ううっ、先ほどは助けようとして頂いたのに、大変失礼いたしました……鼻が真っ赤になって、大丈夫ですか?」

 数分後、落ち着いたオレたちは、彼女の濡れた服を乾かすために焚火に当たっていた。

 流石にお互い服を脱ぐわけにはいかないので、服を着たままの状態だが。
(彼女のスカートは、オレが目をつぶっている間に回収されました)



 一応オレは紳士なので、三角座りをする彼女の下着が見えてしまわないよう、場所を考えて座り、彼女と情報交換を始めようとしているところだ。

 超かわいいのでドキドキするけど!
 さっきカカト落とし食らったとき”しまぱん”見えたけどっ!
 可愛い女の子の前では紳士でいたいオレなのだっ!

 ……おっと、思わず興奮してしまったが、情報交換を続けよう。

 彼女は、目覚めて3秒で豪快にカカト落としを食らわせてしまったことをたいへん申し訳なく思っているみたいだ。
 オレ的にはむしろ気持ちよ……いやいや紳士モード紳士モード。

 オレは心の中のエロ悪魔を振り払うと、努めて紳士的に話しかける。

「大丈夫、気にしてないよ。 キミにケガが無くて良かった」
「オレの名前はレイル・フェンダー……ラクウェルの街に住んでるんだ」

「見ての通り、冒険者……の卵かな、キミは魔法使いなの?」

 正確には冒険者学校を放校されて無職になったわけだけど、初対面の女の子に無職ですと自己紹介する勇気はない。
 一応本日中はまだ冒険者学校の学生である。うん。

 悲しいほどちっぽけな見栄を張るオレの目の前で、彼女は不思議そうに、こくりと首をかしげる。
 その拍子にさらりと美しい銀髪が揺れ、ピコっと長い耳が動く。
 深窓の貴族令嬢も真っ青になるほどの優雅な仕草。

 うっ……可愛い。

 思わずドキドキしてしまうが、彼女はオレの話した内容がよく飲み込めなかったようで。

「冒険者……?」
「ラクウェル……?」

「わたくしの名前はフィアナルティーゼ……ロゥランドのレティシア王国宮廷”大”魔導士です」
「秘奥義である異世界リンク魔術の研究中に気が付いたらここに……魔術の暴走でしょうか?」

 ロゥランド?
 レティシア王国?
 魔導士に魔術?

 今度はオレが首をかしげる番だ。

 彼女の話す用語がさっぱり分からない……分かったのは彼女の名前がフィアナルティーゼであるという事だけ。
 オレは改めて、自分に発現した新たな金スキルを思い出す。

「深淵の接続者」:グランミスリルのラインに魔力を込めると異世界に繋がる

 ……まさかこの子は異世界の住人なのか?

 いやでもさすがにとかありえないだろ……。
 でも、話を進めていくうち、その疑問は確信となっていき……。

「……なるほど、ここはわたくしがいた世界と違う位相にある、ミドルランドという場所なのですね」

 オレの話を興味深げに聞いていたフィアナルティーゼが、確信を持った様子で頷く。

「そうですか……わたくしが異世界に……」

 そうつぶやくと、うつむいてしまう。
 サラサラの前髪が顔を覆い、長いまつげが日差しにきらめく。

 突然違う世界に連れてこられて不安になっているのかもしれない……オレは気遣うセリフを彼女にかけようとするが……。


「……やりましたわ」

「……へっ?」

 俯いていたはずの、彼女の赤い瞳がきらりと輝く。

「やってやりましたわあああああっ!!」
「見やがりましたかレニの奴っ!!」

「わたくしの魔導理論が最強ッ……異世界リンク魔術を成功させた栄誉はわたくしのものにっ!」

 ふふん、と鼻息も荒く立ち上がると、ガッツポーズを繰り返すフィアナルティーゼ。

 あまりの豹変ぶりにぽかんとするオレ。

 さすがに興奮しすぎて恥ずかしかったのか、フィアナルティーゼは頬を染めながら、とんでもないことを言いだす。

「……こほん……失礼いたしました」
「わたくしったら思わず興奮して……あらためてよろしくお願いします」

「異世界リンク魔術が成功したという事は、レイル・フェンダー……あなたがミドルランドの神なのですのねっ!!」

「違ううううううっっ!?」

 今までの情報交換は何だったのか、意味不明なことを言いだす彼女に、オレの叫びが川面に響き渡るのだった。

 この女の子、天然ちゃんかもしれない……。
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