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■第1章 追放と思わぬビッグヒット
第1-2話 フィッシング・ミーツ・ガール
しおりを挟む不思議な老人が手渡してきた、グランミスリルの釣り糸。
ソイツを筒から取り出した瞬間、オレに新しいスキルが発現する。
この世界の”スキル”は謎が多く、本人が潜在的に保持しているスキルが何かのきっかけに現れるとか、女神の贈り物なので運のいい人間に現れるとか、はたまた先祖からの遺伝だとか……いろいろな説があって結論は出ていないが、今回のように何かのきっかけで発現するという事、取得するのにスキルポイントが必要だという事は確かだ。
オレはさっそく、自分に発現したスキルを確認する。
おお……”金”が2つとか、ラクウェル冒険者学校でも数年に一人レベルの発現率だぞ……!
「激流の太公望」:荒れた海面、川など激しい水面での釣りが出来るようになり、釣果が2倍になる
「深淵の接続者」:グランミスリルのラインに魔力を込めると異世界に繋がる
「激流の太公望」……これはおなじみ釣りスキルだ。
「静水の太公望」と対になるスキルっぽい。
……だからなんで釣りスキルばっかりなんだよ……落胆しかけたオレの目は、2つ目の金スキルに釘付けになる。
……なんだこれ?
こんなスキルは見たことが無い……オレは慌てて学生手帳から、スキル一覧のページを探し出す。
今まで数百種類は確認されている金スキル……その中に「深淵の接続者」というスキルは存在しなかった。
まさか……”ユニークスキル”か……?
世界で初めて確認されたスキルをそう呼ぶ……ユニークスキルを持った人間は、一気にトップ冒険者の仲間入りをしてもおかしくないのだが……。
オレは、震える指でスキルを選択し……スキルポイントを消費して習得する。
大丈夫、スキルポイントは有り余っている。
パアアッ……
オレの身体が金色の光に包まれ、身体の奥が熱くなる……ふぅ、この感覚は何度体験しても気持ちいいな……。
数秒後、光が消え……これでオレは2つの金スキルを使えるようになったはずだ。
「なあ、おじいさん、これをどこで……」
手に入れたんだ?
グランミスリルの釣り糸と不思議な金スキル……もう少し詳しく聞いておこうと、振り返ったオレの目に映ったのは、誰もいない草原だった。
「え? さっきまで気配があったのに……?」
曲がりなりにも冒険者の卵なオレに気配を察知させずにいなくなるとは……。
つくづく変な老人である……っと、とりあえず……せっかく金スキルを2つも習得したんだ。
どこかで試してみたいな……きっかけはどうあれ、正直大儲けである。
オレはうきうきと釣り具を片付けると、別の場所へと移動した。
*** ***
「さてと……この辺りでいいかな?」
オレの目の前には落差100メートル、幅数百メートル以上はある巨大な滝が、轟音を立てている。
世界でも有数の滝……ラクウェル大瀑布である。
噂では滝つぼの深さが100メートルはあるとか……川面は荒れ狂っており、ふつうこんな場所で釣りは出来ない。
オレはドキドキしながらミスリルファイバーの釣り竿を組み立て、じいさんから貰ったグランミスリル製のラインを通す。
「激流の太公望」を発動させ、疑似餌を付けた仕掛けを滝つぼへと投げ込む。
普通は激流に翻弄され、釣りにならないのだけど……。
「うおおお、すげぇ!」
シュン!
僅かにスキルの発動音がしたかと思うと、流されるはずの仕掛けが流水をかき分け、滝つぼの奥へと入っていく。
……数分後、オレの両腕は体長1メートルはあるブルーサーモンの巨体を抱えていた。
コイツは激しい水流のある場所を好み、釣り上げるのが大変難しい釣り人憧れのターゲット……これでオレは王国有数のアングラーにっ!
……などと一人で盛り上がってしまったが、もう一つの”金スキル”も試してみないとな……正直謎のスキルにビビってるので、わざとはしゃいでいたのだ。
冒険者学校でスキル鑑定してもらうべきかなぁ……そんな常識的な考えが頭をもたげるが、すでにラクウェル冒険者学校を放校されていることを思い出し、がっくりと膝をつく。
野良鑑定士に頼むとスキルをパクられることもあるらしいし……ええいっ、男は度胸だっ!
ウジウジしてるのは自分らしくない!
オレはそう思いなおすと、仕掛けを重量のあるルアーに付け替えると、滝つぼの中心目掛け、思いっきりキャストする。
ルアーが着水する瞬間を狙い、「深淵の接続者」を発動させる。
ぽちゃん!
なにかとんでもないことが起きたらどうしよう……身構えるオレをあざ笑うかのように、あっさりと水中に潜っていくルアー。
「……へっ? 何も起きないけど……?」
まさかハズレか?
落胆の色を隠せないオレ……あきらめて仕掛けを引き上げようとした時、突然それは起きた。
フイイイイイインンンッ!
ズズズズズズ……
「うわっ!? ライン (釣り糸)が一気に出ていくっ!」
水面が紫色に怪しく光り……水流が渦を巻き、仕掛けがググっと引っ張られる。
リールがものすごい勢いで逆回転し、釣り糸がどんどん伸びていく……10メートル、20メートル……止まらない。
どう見ても滝つぼの水深より深く……150メートルほど釣り糸が出て行った瞬間、水面がさらに強く輝き、爆発的に盛り上がる。
ズドオオオオオオンンンッ!
「うわわわっ、今度はリールがっ!?」
爆発と同時にものすごい勢いでリールが回転し、釣り糸を巻き取っていく。
ザバアッ!
何か大きなものが、水面から飛び出す。
「きゃああああああああっっ!? なんですかこれえええええっっ!?」
「……はあ?」
銀色と紫色の固まりは、やけに澄んだ悲鳴をあたりに響かせながら大空に放物線を描く。
「ふぎゅう”えっ!?」
その塊はだんだんと少女の形をとると、やけに汚い悲鳴と共に、川面に突き出ていた木の枝に引っかかり……ぷら~んと宙にぶら下がる。
「……きゅう」
「……なんだこれ」
呆然と立ち尽くすオレと目を回している少女……これがこの世界の在り方を変えたかもしれない、ひとりの少女との出会いだった。
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