【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚

なっくる

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■第2章 レイル・フェンダー、世界を釣る(まず近所)

第2-4話 レイルとフィル、初めての戦い(後編)

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 オオオオオンッ!

「ちょっ、レイル!? 何ですかこの見た目ファ○クなキモイにょろにょろはっ……ひゃああああっ!?」

 森の中にぽっかりと開いた洞穴から釣り上げてしまった巨大なワーム型モンスター。
 ねっとりとした粘液に覆われた赤土色の胴体は、とても不気味な動きをする。

 牙がびっしりと生えた口からは、異臭がする粘液がこぼれ落ち、そのおぞましさにフィルが少々お下品な悲鳴を上げる。

「これは……グランワーム! しかも女王個体……!」
「地中を自由に動き回り、畑を荒らしたり家畜を襲ったり……たまに人を襲う事もある、厄介なモンスターだ!」

「どうやら、奴らのネスト (巣)にビンゴしてしまったらしいぞ……!」

「わ、わたくし、長くてにょろにょろしたモノが苦手なんです……うええええっ」

 びっしりと鳥肌を立てたフィルが、お嬢様とは思えない悲鳴を上げている。

 よく考えたら、フィルが食い意地を張って欲張ったからじゃん……そう考えたオレは、軽い悪戯を思いつく。

「んで、フィル……獲物が釣れたけど、今夜の晩飯に食べる?」

「じょ、冗談でも勘弁してくださいいっっ!?」

 フィルが上げる素の悲鳴を聞きながら、オレはどうしたもんかと対策を考える。

 グランワームはAランクのボスモンスター……オレの初級剣技では太刀打ちできないし、オレのスキルの中に戦闘向きの物はない。

 豊富な攻撃魔術?のスキルを持つフィルが頼りだが……彼女が落ち着くまで時間を稼ぐ必要があるな……。

 オレは先日授業で聞いたグランワームの習性を思い出し、頭の中で時間稼ぎの策を組み立てる。

「よし、いけそうだ……くらえ、「絢爛なる集魚灯」!」


 カッ!


 グランワームの口の上、退化した目がある辺りに真っ赤な光が煌めく。

 ”絢爛なる”……などと豪華な名前が付いているが、これは夜釣りの時に、光で魚を集める集魚スキル。
 生物を惑わせる魅惑の光を自由に発することが出来るのだっ!!

 ……自分で説明していて、悲しくなってきた……ともかく、グランワームは赤い光に反応する習性がある。

 オレが赤い集魚灯を洞穴の上にある岩の方向へ慎重に操作すると、グランワームはずるりと洞穴から全身を這い出し、赤い光の方に突進する。


 ガンンンッ!


 そのままの勢いで岩に激突するグランワーム。
 いまだ! 奴の弱点である、長大なボディの根元にある生殖器がむき出しだ!

「フィル! いまだ……って、フィル?」

 ここに攻撃魔術をたたき込むんだ!
 そう指示しようと、後ろを振り向くが……。

 立ち尽くしたフィルは、下を向き、ぷるぷると震えている……どうしたんだ、と声を掛けた瞬間、彼女の全身から爆発的な魔力が立ち上る。


 ドウッ!!


「こんのくされミミズぅぅぅぅ!」
「乙女になんてものを見せますのおおおっ!?」
「フレア・バーストっ!!」


 ズガアアアアアアアアアンンッ!!


「だああああああっ!?」

 ブチ切れたフィルの罵声と共に、この世界の魔法使いでは到底使えない極大爆炎魔術が炸裂し、グランワームの巨体を背後にあった大岩と森ごと豪快に吹き飛ばした!


 シュウウウウウウッッ……。


「…………」

 オレはあんぐりと口を開け、目の前に広がっている衝撃的な光景を見つめる。

 うっそうと茂っていた森は、50メートルほど向こうまできれいさっぱり消え去り、冒険者学校のグラウンドほどの焼け野原が広がっている。
 あまりの高熱のためか、発火せずに一瞬で炭化した木がいまだに煙を吹き出している。

「えっと……その……ちょっとおちゃめが過ぎましたわね♪」

「やりすぎだああああっ!」

 ビシッ!

「へうっ!?」

 汗をダラダラと流しながら、思わずかわいくポーズをとるフィルの頭を、思わずチョップしたオレなのだった。


 ***  ***

「もぐもぐ……本日の夕食は野趣にあふれていますね……これがただいま宮廷でブームのジビエ料理!?」

「…………」

 周囲の村や街を困らせていたグランワームを討伐……というか、ネストごときれいさっぱり吹き飛ばしたオレたちは、そそくさとその場を離れると今夜の野営地まで逃げるように移動してきていた。

 今はコテージを張り終え、フレア・バーストの余波でこんがりとウェルダンに焼けていたイノシシを早い夕食代わりにしているところだ。

 最初は自分のやり過ぎ魔術にシュンとしていたフィルだが、すっかりとジビエ料理に夢中になっている。

 こうして飯をパクついているだけだとタダの可愛い女の子なんだけどなあ……オレは先ほどフィルが使った超絶魔術の威力を思い出す。

 やはり大魔導士の名は伊達ではない……あらためて彼女の実力を認識するオレ……フィルは絶対に怒らせないようにしよう。

 と、あらかた料理を食べ終えたフィルが、満足そうな吐息を吐きながら、こくりと首をかしげる。

「でも、おかしいですわね……確かに”フレア・バースト”はわたくしの奥義の一つですが……森を一つ吹き飛ばすほどの威力はありません」
「発動の手ごたえは普通だったのですが……急に威力が……ふむぅ」

 フィルはその形の良い顎に手を当て、思案気な表情を浮かべる。
 ふと、なにかを思いついたのか立ち上がり、オレのそばにやってくる。

「やはり、レイル……あなたから立ち上るこのほのかな魔力の匂いは……くんくん」

「ええっ!? フィルっ!?」

 フィルは急に眼を閉じると、オレの脇や首筋の臭いを嗅ぎだす。

 彼女が鼻を動かすたび、もふもふの耳やサラサラな髪の毛、なにより彼女の甘い吐息がオレの肌に当たって……。

「くふぅ……いい香り……やはりあなたの魔力は、わたくしの魔術を増幅する効果がありそうです」
「ああ、なんてステキなんでしょう……言い遅れましたがわたくし、はしたなくも魔力臭フェチでして……」

「んっ……ああ、体が熱くなりますわ……」

 オレの身体を嗅ぎまわるフィルの動きはよりエスカレートして……もはや抱きつくような形になる。
 しっとりと濡れた彼女の唇が目の前に……。

「うおおおおおおおおっ!?」

 あまりにも甘美で幸せなその感触に、心の中の荒神を押さえるのに失敗したオレは、あえなく目を回すのだった。

 この娘は小悪魔ではなく無意識サキュバスになるに違いない……がくっ。
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