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第23話 ユウの決意
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「わたくしたちが退治したダンジョンも含め、現在出現中のダンジョンは8……」
「そのうち4つはクリア済で、潜っていたダンジョンバスターも無事のようです」
「フェリナ? 状況が分かるのか!」
「はい、こちらで」
ここは事務棟の会議室。
仕事用のタブレットとノートPCをつなぎ、何やら操作していたフェリナ。
タブレットには、C工区の全体図が表示されている。
「フェリナお姉ちゃん、通信障害が起きてるのに、どうやったの?」
「ふふっ、すこし”魔法”をね」
「まほう!?」
「……と言うのは冗談で、ノーツ研が開発した災害時の緊急回線を使っています」
相変わらずこのギルドマスターチートだな……。
「彼らの情報を表示しますね」
フェリナがノートPCを操作すると、タブレットに8名のダンジョンバスターの情報が表示される。
どうやら、4つのダンジョンをクリアした連中の物らしい。
「なあこれ、もしかしてハッキン……」
「非常時ですから♪」
「…………」
やっぱりフェリナは敵に回さない方がよさそうだ。
「彼らが所持していたスキルポイントは……やはり0になっていますね。
C工区の最奥に出現したSSランクダンジョン……仮に”災害ダンジョン”と呼称しますが、コイツに吸い取られたと判断して間違いなさそうです」
フェリナのほっそりとした人差し指が、タブレットの一点を指さす。
漆黒の魔法陣の横に表示されているのはSSランクの文字。
「この近くに出現した2つのCランクダンジョンを攻略中の4名と、Aランクダンジョンを担当していたシロー夫妻の合計6名が行方不明です」
「彼らの情報をモニターできないか?」
「……難しいですね。
災害ダンジョンの近くでは吸い取られたスキルポイントのノイズのせいで、正しい情報を取得できないのです」
何度か試してみるフェリナだが、「UNKNOWN」の表示は変わらない。
「シローおじさんとレミリアお姉ちゃん……助けなきゃ!!」
リーサの言葉に頷く。
幸い、俺がアプリにダウンロードしているスキルポイントには余裕がある。
いくら災害ダンジョンにスキルポイントを吸い取られるとはいっても、Cランクダンジョン2つくらいなら退治できるはずだ。
「わたくしの権限で、ノーツ本部へ緊急のスキルポイント提供を要請しました。
スキルポイントの残高は気にしないでください」
「!! さすがフェリナ!」
「じゃあ、しゅっぱ~つ!!」
勢いよく椅子から立ち上がるリーサ。
「ちょっと待った。
リーサはここでお留守番だ」
そっとリーサの肩を押さえ、椅子に座らせる。
「……って、えええええ!?
そんな、ユウ、ひどいよっ!」
耳と尻尾を逆立てて抗議するリーサだが、ここは譲るわけにはいかない。
「相手は災害級のSSランクダンジョン」
Cランクダンジョンくらいまでなら、見習いのリーサでもステータスの暴力である程度安全に探索できる。
「周囲のダンジョンに影響が出ている可能性もあるしな」
このクラスのダンジョンともなると、正直な話リーサを守りながら立ち回れる自信がない。高位ランクのダンジョンでは、ステータスよりスキル構成や装備が重要になる場合も多い。
リーサはまだ見習いのHランク。
俺のパートナーとして登録しているとはいえ、Cランクのスキルや装備の全てを使えるわけじゃないのだ。
「でも、わたしにはま……」
魔法がある、と言いかけたリーサの口をそっとふさぐ。
「わたくしもユウさんの判断を支持します」
「フェリナお姉ちゃん……」
フェリナも助け船を出してくれる。
「リーサちゃんはダンバス見習いですから、ユウさんのスキルポイントを使って戦います。二人でこの災害ダンジョンに近づけば……」
「……二倍以上のスピードでユウのスキルポイントが減っちゃう?」
さすがに、リーサは理解が速い。
「うぅ……」
不満そうな表情を浮かべながらも、納得してくれたようだ。
「あぶなくなったら、わたしを呼んでね?
ぜったいぜったい、無理しちゃダメだよ?」
「ああ!」
涙を浮かべたリーサの言葉に、力強く頷く。
「くれぐれも、お気をつけて!」
「ぐすっ……本当に気を付けてね!」
リーサとフェリナに見送られ、俺はC工区の最奥に向かう。
「そのうち4つはクリア済で、潜っていたダンジョンバスターも無事のようです」
「フェリナ? 状況が分かるのか!」
「はい、こちらで」
ここは事務棟の会議室。
仕事用のタブレットとノートPCをつなぎ、何やら操作していたフェリナ。
タブレットには、C工区の全体図が表示されている。
「フェリナお姉ちゃん、通信障害が起きてるのに、どうやったの?」
「ふふっ、すこし”魔法”をね」
「まほう!?」
「……と言うのは冗談で、ノーツ研が開発した災害時の緊急回線を使っています」
相変わらずこのギルドマスターチートだな……。
「彼らの情報を表示しますね」
フェリナがノートPCを操作すると、タブレットに8名のダンジョンバスターの情報が表示される。
どうやら、4つのダンジョンをクリアした連中の物らしい。
「なあこれ、もしかしてハッキン……」
「非常時ですから♪」
「…………」
やっぱりフェリナは敵に回さない方がよさそうだ。
「彼らが所持していたスキルポイントは……やはり0になっていますね。
C工区の最奥に出現したSSランクダンジョン……仮に”災害ダンジョン”と呼称しますが、コイツに吸い取られたと判断して間違いなさそうです」
フェリナのほっそりとした人差し指が、タブレットの一点を指さす。
漆黒の魔法陣の横に表示されているのはSSランクの文字。
「この近くに出現した2つのCランクダンジョンを攻略中の4名と、Aランクダンジョンを担当していたシロー夫妻の合計6名が行方不明です」
「彼らの情報をモニターできないか?」
「……難しいですね。
災害ダンジョンの近くでは吸い取られたスキルポイントのノイズのせいで、正しい情報を取得できないのです」
何度か試してみるフェリナだが、「UNKNOWN」の表示は変わらない。
「シローおじさんとレミリアお姉ちゃん……助けなきゃ!!」
リーサの言葉に頷く。
幸い、俺がアプリにダウンロードしているスキルポイントには余裕がある。
いくら災害ダンジョンにスキルポイントを吸い取られるとはいっても、Cランクダンジョン2つくらいなら退治できるはずだ。
「わたくしの権限で、ノーツ本部へ緊急のスキルポイント提供を要請しました。
スキルポイントの残高は気にしないでください」
「!! さすがフェリナ!」
「じゃあ、しゅっぱ~つ!!」
勢いよく椅子から立ち上がるリーサ。
「ちょっと待った。
リーサはここでお留守番だ」
そっとリーサの肩を押さえ、椅子に座らせる。
「……って、えええええ!?
そんな、ユウ、ひどいよっ!」
耳と尻尾を逆立てて抗議するリーサだが、ここは譲るわけにはいかない。
「相手は災害級のSSランクダンジョン」
Cランクダンジョンくらいまでなら、見習いのリーサでもステータスの暴力である程度安全に探索できる。
「周囲のダンジョンに影響が出ている可能性もあるしな」
このクラスのダンジョンともなると、正直な話リーサを守りながら立ち回れる自信がない。高位ランクのダンジョンでは、ステータスよりスキル構成や装備が重要になる場合も多い。
リーサはまだ見習いのHランク。
俺のパートナーとして登録しているとはいえ、Cランクのスキルや装備の全てを使えるわけじゃないのだ。
「でも、わたしにはま……」
魔法がある、と言いかけたリーサの口をそっとふさぐ。
「わたくしもユウさんの判断を支持します」
「フェリナお姉ちゃん……」
フェリナも助け船を出してくれる。
「リーサちゃんはダンバス見習いですから、ユウさんのスキルポイントを使って戦います。二人でこの災害ダンジョンに近づけば……」
「……二倍以上のスピードでユウのスキルポイントが減っちゃう?」
さすがに、リーサは理解が速い。
「うぅ……」
不満そうな表情を浮かべながらも、納得してくれたようだ。
「あぶなくなったら、わたしを呼んでね?
ぜったいぜったい、無理しちゃダメだよ?」
「ああ!」
涙を浮かべたリーサの言葉に、力強く頷く。
「くれぐれも、お気をつけて!」
「ぐすっ……本当に気を付けてね!」
リーサとフェリナに見送られ、俺はC工区の最奥に向かう。
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