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吽
蓋
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ここニッポンにも、古来より伝わる様々な話がある。
特に有名な話として、海辺で見つけた水生生物を助けたら海の底の神殿へと導いてくれる、というものがある。
今回はそんな話のような、奇妙な体験談をお噺しよう。
海沿いにある街に住むB男は、飼い犬のゴンと一緒に休みの日に海岸や砂浜を散歩することが好きだった。
ゴンも砂浜を駆け回るのが好きで、いつも嬉しそうにしている。
ある日、砂浜の端の方までゴンを連れて散歩していたB男は、近くの岩礁にあるものを見つけた。
海岸にはまるで似つかわしくない、古ぼけた壺がそこにはあった。
人の頭部くらいの大きさのその蓋には十字で紙が貼られ、開かないようになっており、滲んで読めないが文字らしきものが記載されていた。
「なんだろう、これ。」
B男はゴンと一緒に壺に近づいてみたが、どこか薄気味悪いその壺の蓋を開ける気にはならなかった。
すぐに帰ろうと思い、振り返り、ゴンのリードを引っ張った。
その時、ゴンが壺に触れてしまい、壺を倒して割ってしまった。
壺は盛大な音をたてて割れてしまった。
しかし、中に何か入っていた様子はなく、そこには壺の残骸のみが残されていた。
壺のことを気にしつつも、ゴンと一緒に帰路についたB男は、買い物を頼まれていたことを思い出した。
商店街で買い物をし、タイミングよくやっていた福引きの券を一枚もらった。
早速引いてみたところ、フード引換券が当選した。
食べ物またはペットフードどちらかのセットと交換可能だったので、ゴンのために後者を選んだ。
だが、喜んだのも束の間、道に躓き派手に転んでしまい、手足に痛々しい傷を負ってしまった。
次の休日、あの薄気味悪い壺が何だったのか、割ってしまったが問題ないのか気になり、ゴンと一緒に海岸へ向かった。
壺があった付近に着いたが、残骸は残っていなかった。
周囲に何もなかったので帰ろうとした時、「ガチャン」と何かが割れる音がした。
ゴンの足元を見ると、壺が割れていた。
前回の壺より、二回りほど小さくなっていたが、酷似した壺だった。
壺の中には、今回も何も入っておらず、蓋がしてあっただけのようだ。
だが、今回の蓋に貼られていた紙の量は明らかに増えており、まるで何かを押さえつけているかのようであった。
家に帰ると、母親が駆け寄ってきた。
「すごいのよ、応募してた懸賞が当たったの!ペット同伴可の一泊二日温泉旅行。」
母がまめに送っていた懸賞に、初めて当選したようだった。しかも、特賞である。
その時、前回壺を壊した時も福引きが当たったことを思い出し、もしかしたらあの壺は幸運の壺なのかもしれないと思った。
次の休日、再度ゴンと一緒に壺を探しに出かけた。
前回同様、割った壺の残骸はなくなっており、付近を隈なく探すが新しい壺も見つけられなかった。
「そう何度もないか。」
そう諦めていた時、携帯電話がなった。知らない番号からだ。
「もしもし、私、副伊湘南署の者ですが、B男さんのお電話でお間違いないですか?」
「…?はい、そうですが」
電話は地元の警察からだった。
「落ち着いて聞いてください。あなたのご両親が、交通事故に遭われて搬送されました」
「そんなばかな、、父母はさっき買い物に行ったばかりですよ?」
内心、焦りながら尋ねるも、B男の両親で間違い無いとのことだ。
「まさか、僕の両親はその事故で…」
「ガチャン」
何かが割れる音がした。
ゴンが、どこにあったかわからないが、また壺を割ったようだ。
そんなことにかまってる暇はない。
「僕の両親はその事故で、死んでしまったのですか?」
震える声で尋ねる。
「いまちょうど病院の先生が処置室から出て来たのですが、一命をとりとめたとのことです」
その言葉を聞き、B男は安堵した。
「先生曰く、生死の境を彷徨っていたが何とか持ち堪えたとのことです。とりあえず、すぐこちらの病院へ来てください」
わかりましたと伝え、電話を切った。何でこんなことに…そう思った時、ふとB男は気づいた。
最初に壺を割った時も、福引きには当たったが怪我を負った。
次に壺を割った時も、懸賞に当たったが今回の事故が起きた。
全て壺が原因なのか、良いことが起きるが悪いことも同時に起こるのか。
しかも、徐々に良し悪しの大きさが大きくなっていって…と考えたところで、ふと思考が止まった。
さっき、壺が割れた音がしていた。
昔話では、海底の神殿で宴を楽しんだ後、決して開けるなと言われながらお包みをもらう。
主人公が言いつけを守らずに蓋を開けると、みるみる年老いてしまうというものだった。
この昔話には様々な解釈があるらしい。
海底の神殿へ行くと、地上の世界と時間の流れが異なるため、戻ってくる頃には何年も経過したことになるという。
自分の知人は誰もこの世にはおらず、主人公は孤独となってしまう。
そんな折、神殿の主人にもらった包みを開け、黄泉の国へと自ら誘われる。
主人公は、得た幸福分の時間を徴収されてさまい、最後は自らの命に手をかけたという解釈もあるとかないとか。
今回の物語は、海辺で見つけた壺を壊したことから始まる奇妙な連鎖をお噺しした。
開けてはいけないパンドラの匣をあけると、幸福を得られるが、代償も得てしまう。
だが、よく考えてみてほしい。
今回の主人公が誰なのかを。はたしてこれはB男の物語といえるのか。
いや、この物語はひょっとする壺を割ったゴンの…。
特に有名な話として、海辺で見つけた水生生物を助けたら海の底の神殿へと導いてくれる、というものがある。
今回はそんな話のような、奇妙な体験談をお噺しよう。
海沿いにある街に住むB男は、飼い犬のゴンと一緒に休みの日に海岸や砂浜を散歩することが好きだった。
ゴンも砂浜を駆け回るのが好きで、いつも嬉しそうにしている。
ある日、砂浜の端の方までゴンを連れて散歩していたB男は、近くの岩礁にあるものを見つけた。
海岸にはまるで似つかわしくない、古ぼけた壺がそこにはあった。
人の頭部くらいの大きさのその蓋には十字で紙が貼られ、開かないようになっており、滲んで読めないが文字らしきものが記載されていた。
「なんだろう、これ。」
B男はゴンと一緒に壺に近づいてみたが、どこか薄気味悪いその壺の蓋を開ける気にはならなかった。
すぐに帰ろうと思い、振り返り、ゴンのリードを引っ張った。
その時、ゴンが壺に触れてしまい、壺を倒して割ってしまった。
壺は盛大な音をたてて割れてしまった。
しかし、中に何か入っていた様子はなく、そこには壺の残骸のみが残されていた。
壺のことを気にしつつも、ゴンと一緒に帰路についたB男は、買い物を頼まれていたことを思い出した。
商店街で買い物をし、タイミングよくやっていた福引きの券を一枚もらった。
早速引いてみたところ、フード引換券が当選した。
食べ物またはペットフードどちらかのセットと交換可能だったので、ゴンのために後者を選んだ。
だが、喜んだのも束の間、道に躓き派手に転んでしまい、手足に痛々しい傷を負ってしまった。
次の休日、あの薄気味悪い壺が何だったのか、割ってしまったが問題ないのか気になり、ゴンと一緒に海岸へ向かった。
壺があった付近に着いたが、残骸は残っていなかった。
周囲に何もなかったので帰ろうとした時、「ガチャン」と何かが割れる音がした。
ゴンの足元を見ると、壺が割れていた。
前回の壺より、二回りほど小さくなっていたが、酷似した壺だった。
壺の中には、今回も何も入っておらず、蓋がしてあっただけのようだ。
だが、今回の蓋に貼られていた紙の量は明らかに増えており、まるで何かを押さえつけているかのようであった。
家に帰ると、母親が駆け寄ってきた。
「すごいのよ、応募してた懸賞が当たったの!ペット同伴可の一泊二日温泉旅行。」
母がまめに送っていた懸賞に、初めて当選したようだった。しかも、特賞である。
その時、前回壺を壊した時も福引きが当たったことを思い出し、もしかしたらあの壺は幸運の壺なのかもしれないと思った。
次の休日、再度ゴンと一緒に壺を探しに出かけた。
前回同様、割った壺の残骸はなくなっており、付近を隈なく探すが新しい壺も見つけられなかった。
「そう何度もないか。」
そう諦めていた時、携帯電話がなった。知らない番号からだ。
「もしもし、私、副伊湘南署の者ですが、B男さんのお電話でお間違いないですか?」
「…?はい、そうですが」
電話は地元の警察からだった。
「落ち着いて聞いてください。あなたのご両親が、交通事故に遭われて搬送されました」
「そんなばかな、、父母はさっき買い物に行ったばかりですよ?」
内心、焦りながら尋ねるも、B男の両親で間違い無いとのことだ。
「まさか、僕の両親はその事故で…」
「ガチャン」
何かが割れる音がした。
ゴンが、どこにあったかわからないが、また壺を割ったようだ。
そんなことにかまってる暇はない。
「僕の両親はその事故で、死んでしまったのですか?」
震える声で尋ねる。
「いまちょうど病院の先生が処置室から出て来たのですが、一命をとりとめたとのことです」
その言葉を聞き、B男は安堵した。
「先生曰く、生死の境を彷徨っていたが何とか持ち堪えたとのことです。とりあえず、すぐこちらの病院へ来てください」
わかりましたと伝え、電話を切った。何でこんなことに…そう思った時、ふとB男は気づいた。
最初に壺を割った時も、福引きには当たったが怪我を負った。
次に壺を割った時も、懸賞に当たったが今回の事故が起きた。
全て壺が原因なのか、良いことが起きるが悪いことも同時に起こるのか。
しかも、徐々に良し悪しの大きさが大きくなっていって…と考えたところで、ふと思考が止まった。
さっき、壺が割れた音がしていた。
昔話では、海底の神殿で宴を楽しんだ後、決して開けるなと言われながらお包みをもらう。
主人公が言いつけを守らずに蓋を開けると、みるみる年老いてしまうというものだった。
この昔話には様々な解釈があるらしい。
海底の神殿へ行くと、地上の世界と時間の流れが異なるため、戻ってくる頃には何年も経過したことになるという。
自分の知人は誰もこの世にはおらず、主人公は孤独となってしまう。
そんな折、神殿の主人にもらった包みを開け、黄泉の国へと自ら誘われる。
主人公は、得た幸福分の時間を徴収されてさまい、最後は自らの命に手をかけたという解釈もあるとかないとか。
今回の物語は、海辺で見つけた壺を壊したことから始まる奇妙な連鎖をお噺しした。
開けてはいけないパンドラの匣をあけると、幸福を得られるが、代償も得てしまう。
だが、よく考えてみてほしい。
今回の主人公が誰なのかを。はたしてこれはB男の物語といえるのか。
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