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吽
駅
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現代において、特に都会であればあるほど欠かせないのが電車である。
都会に住む多くの人々が利用し、交通手段の主軸となっているため、毎日たくさんの人が駅に集まり、そして電車に乗る。
今回はその電車や駅についてのとあるお噺をしよう。
「今日も残業で遅くなったなあ」
C美は、終電ギリギリの電車に間に合うように、急足で駅へと向かった。
典型的なブラック企業で働くC美は、ほとんどいつも終電で帰っている。
仕事を変えようと何度も考えたが、働きながら転職活動に勤しむことができず、また、貯金もないので仕事を辞めることができずにいた。
駅に着くと、今日は平日かつ終電ということもあり、各路線のホームにはぽつぽつとしか人がいなかった。
「ま、そんなこともあるか」
C美はいつも乗る車両の付近で待機していた。
スマホの画面を見続け数分後、最終電車が到着したので乗り込もうとした。
その時、誰かが後ろから軽くぶつかったような感覚があったが、周囲には誰もいなかった。
「??? なに、いまの?」
妙な感覚ではあったが、この電車を逃すと、タクシーで帰るしかないため、急いで乗車した。
車内はガランとしており、誰ものっていなかった。
珍しいこともあるな、くらいの感覚でC美は座席に腰をおろした。
残業につぐ残業の毎日に疲弊しきっているC美は、いつものようにうとうとしてきた。
「あと二十分くらいあるし、軽く寝よう」
C美は眠りに落ちた。
どれくらい時が経っただろうか、ハッとしてC美が目を覚ます。
いつもならば、なんだかんだ十分くらいしか経っていないのだが、スマホを見ると、電車に乗り込んでから一時間以上も経過していた。
まずい、終電なのに乗り過ごした。
焦ったC美だったが、自宅の最寄り駅からこの電車の終点駅まではそう遠くない距離なので、最悪タクシーで帰れるか、と考えていた。
しかし、その時にふと疑問が脳裏をよぎった。
「あれ、なんで1時間も電車に乗ってるんだろ…。どんなにのってても40分くらいで終点の駅に着くはずなのに…」
急に不安が押し寄せて辺りを見渡す。乗客は誰もいない。車内案内の映像も消えている。
窓の外を見ると遠くの方でぼんやりと薄明かりが見えるが、それ以外はただただ漆黒が広がっている。
「ここ、どこ?」
現在地を調べたり、誰かに連絡を取ろうとスマホを確認しようとしたとき、ノイズ混じりのアナウンスが聞こえた。
「次は…と…よ。次は…こ…。お出……右が……す」
不安はさらに掻き立てられ、恐怖へと変わった。そして数秒後、駅へと到着した。
その駅のホームは、まるでブラックライトで照らされているかのような青黒さで、ぼうっ、と照らされていた。
寂れた看板に記された駅名は、ところどころ読めなくなっていたが、「常… ー…こよー」と記載されているようだった。
また、C美が来た方向には「現… ー…んせー」、進行方向には「……世 ーあ…よー」と記載されていた。
降りるべきなのか迷ったが、とりあえず誰かに迎えに来てもらおうと思い、ホームへと降りた。
降りたタイミングで、アナウンスも無しにドアは閉まり、電車は動き出した。
車内の灯りは消えていた。
駅員室に行くと誰もおらず、外に出ようにも改札は鉄柵で閉じられていた。
どうしたら良いかわからず、立ち往生をしていると、スマホに非通知で電話がかかってきた。
「今来乗ってきた電車と逆方向の電車がすぐ来る。必ずそれに乗りなさい。そうしたら元の場所は帰れるから」
誰からかかってきたかもわからないその電話は、そう言い残したらすぐ切れてしまった。
C美は、いま何が起きているのか訳がわからず涙が流れてきたが、直後、ホームに電車がやってきた。見
たこともない、古めかしい薄緑の車体だったが、藁にもすがる思いで乗り込んだ。
次に目を開けると、いつも通りの電車の様子だった。
時刻も終電の電車に乗った直後くらいだった。
さっきの出来事は…夢だったのだろうか。
だが、C美のスマホには、非通知の電話からきた着信に出た記録がしっかりと残されていた。
今回、C美が体験した普段とは違う電車や駅に遭遇するというお話は、一種の神隠しのようなものなのかもしれない。
はたして、C美がそのまま謎の電車に乗っていたらどうなったのか…。
今回のお噺はここで終わろう。
都会に住む多くの人々が利用し、交通手段の主軸となっているため、毎日たくさんの人が駅に集まり、そして電車に乗る。
今回はその電車や駅についてのとあるお噺をしよう。
「今日も残業で遅くなったなあ」
C美は、終電ギリギリの電車に間に合うように、急足で駅へと向かった。
典型的なブラック企業で働くC美は、ほとんどいつも終電で帰っている。
仕事を変えようと何度も考えたが、働きながら転職活動に勤しむことができず、また、貯金もないので仕事を辞めることができずにいた。
駅に着くと、今日は平日かつ終電ということもあり、各路線のホームにはぽつぽつとしか人がいなかった。
「ま、そんなこともあるか」
C美はいつも乗る車両の付近で待機していた。
スマホの画面を見続け数分後、最終電車が到着したので乗り込もうとした。
その時、誰かが後ろから軽くぶつかったような感覚があったが、周囲には誰もいなかった。
「??? なに、いまの?」
妙な感覚ではあったが、この電車を逃すと、タクシーで帰るしかないため、急いで乗車した。
車内はガランとしており、誰ものっていなかった。
珍しいこともあるな、くらいの感覚でC美は座席に腰をおろした。
残業につぐ残業の毎日に疲弊しきっているC美は、いつものようにうとうとしてきた。
「あと二十分くらいあるし、軽く寝よう」
C美は眠りに落ちた。
どれくらい時が経っただろうか、ハッとしてC美が目を覚ます。
いつもならば、なんだかんだ十分くらいしか経っていないのだが、スマホを見ると、電車に乗り込んでから一時間以上も経過していた。
まずい、終電なのに乗り過ごした。
焦ったC美だったが、自宅の最寄り駅からこの電車の終点駅まではそう遠くない距離なので、最悪タクシーで帰れるか、と考えていた。
しかし、その時にふと疑問が脳裏をよぎった。
「あれ、なんで1時間も電車に乗ってるんだろ…。どんなにのってても40分くらいで終点の駅に着くはずなのに…」
急に不安が押し寄せて辺りを見渡す。乗客は誰もいない。車内案内の映像も消えている。
窓の外を見ると遠くの方でぼんやりと薄明かりが見えるが、それ以外はただただ漆黒が広がっている。
「ここ、どこ?」
現在地を調べたり、誰かに連絡を取ろうとスマホを確認しようとしたとき、ノイズ混じりのアナウンスが聞こえた。
「次は…と…よ。次は…こ…。お出……右が……す」
不安はさらに掻き立てられ、恐怖へと変わった。そして数秒後、駅へと到着した。
その駅のホームは、まるでブラックライトで照らされているかのような青黒さで、ぼうっ、と照らされていた。
寂れた看板に記された駅名は、ところどころ読めなくなっていたが、「常… ー…こよー」と記載されているようだった。
また、C美が来た方向には「現… ー…んせー」、進行方向には「……世 ーあ…よー」と記載されていた。
降りるべきなのか迷ったが、とりあえず誰かに迎えに来てもらおうと思い、ホームへと降りた。
降りたタイミングで、アナウンスも無しにドアは閉まり、電車は動き出した。
車内の灯りは消えていた。
駅員室に行くと誰もおらず、外に出ようにも改札は鉄柵で閉じられていた。
どうしたら良いかわからず、立ち往生をしていると、スマホに非通知で電話がかかってきた。
「今来乗ってきた電車と逆方向の電車がすぐ来る。必ずそれに乗りなさい。そうしたら元の場所は帰れるから」
誰からかかってきたかもわからないその電話は、そう言い残したらすぐ切れてしまった。
C美は、いま何が起きているのか訳がわからず涙が流れてきたが、直後、ホームに電車がやってきた。見
たこともない、古めかしい薄緑の車体だったが、藁にもすがる思いで乗り込んだ。
次に目を開けると、いつも通りの電車の様子だった。
時刻も終電の電車に乗った直後くらいだった。
さっきの出来事は…夢だったのだろうか。
だが、C美のスマホには、非通知の電話からきた着信に出た記録がしっかりと残されていた。
今回、C美が体験した普段とは違う電車や駅に遭遇するというお話は、一種の神隠しのようなものなのかもしれない。
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