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吽
虫
しおりを挟むこの世界に存在する虫の種類は実に100万種類超えるほど存在するという。
その中でも、ある種類のムシは約2万種類もいるのだとか。
私たち人間の生活においても、虫が関わる機会が数多く存在するだろう。
今回おご紹介するお話は、G男さんが体験したムシに関する体験だ。
定年を迎えた私は、妻とともにこの片田舎へと移り住んだ。
人の多い都会で余生を過ぎすよりも、静かな田舎でゆっくり過ごしたいというお互いの意見で引っ越しを決めた。
子供たちはとうに自立し、それぞれ家庭を持ち、幸せな生活を送っている。
慌ただしかった毎日が嘘のように、見渡す限り緑の広がるこの地で穏やかな日々を過ごしている。
40年ほど働いていた日々が終わり、毎日何をして過ごすか迷っていた私は、妻の勧めでかてい菜園を始めた。
退職金が出たこともあり、お金に余裕はあるので、自分たちの生活の足しになるような野菜を育て始めた。
いままで野菜を育てた経験などなかったが、マニュアル通りに手入れをすれば、意外にうまくいった。
日に日に成長していく私の菜園を見ていると、なんだか愛着も湧いてくる。
「大きくなれよ」
菜園は縁側に近い箇所にあるので、居間からも見えるため、水を与えながら呟いたそんな言葉を妻に聞かれ恥ずかしくなる日もあった。
しかし、順調だと思っていたところで、一つの問題が生じた。
野菜にムシがつくようになった。
周りは緑に囲まれたこの地で虫が発生しないことの方が珍しいと思うが、育てた野菜が虫に食われてしまうのはなんとも嫌な気持ちだ。
農薬を撒くことも考えたが、無農薬で育て上げたかったのと、畑自体そこまで大きくはないので、自らの手で一匹ずつ潰していった。
幸い、付着しているムシは小虫程度の小さなものだったため、除去するのは楽だった。
野菜に実りができ始めたらカバーで多い、茎や葉についているムシを潰す。
そんなことを繰り返し、ついに収穫できるくらいまで大きく実った。
改めて自分が育てた野菜たちを見ると、何とも感慨深い。
全て収穫し終え、今日の夕飯にと妻へと渡した。
普段から妻のりょうりは毎日の楽しみだが、今日はさらに楽しみとなった。
「キャアアアア」
妻の絶叫が聞こえ、私は慌てて台所へと駆けつけた。
「どうした!?指でも切ったのか!?」
「違うの、あなた、これ、野菜の中・・・」
妻が指差す先を見ると先ほど渡した野菜が切られてまな板の上に乗っかっていた。
まな板に置かれた野菜は、誰も触っていないはずなのに僅かに動いている。
いや、正確には、切られた野菜の断面が微細に蠢いている。
恐る恐るその断面を近くで確認する。
夥しい数のムシだった。
断面を覆い尽くさんばかりの大量のムシ。気持ちの悪さといったら十二分だった。
そのムシは私が何匹も何匹も潰してきたあのムシだった。
「取り除いてカバーもつけたりしたがダメだったか」
怯える妻を宥め、その恐ろしい野菜を片付けようとした時、
「あなた、他の野菜は、、、他の野菜は大丈夫なの?」
妻に言われ、はっとして他に収穫した野菜を見た。
たしかに、1つだけ野菜が被害に遭っているよりも、全ての野菜が被害に遭っていると考える方が自然である。
「・・・見てみるよ」
額にはいつの間にか冷や汗をかいている。蠢く虫々の姿が脳裏を過り、苦虫を潰したかのような不愉快さを感じる。
若干震えている手を押さえながら包丁を握る。
私も妻も口を紡ぎ、水道から流れ落ちる水だけが音を発していた。
恐れながら包丁を野菜に入れた。
切ったこの感触は、野菜のものなのか。それとも・・・
2つに割れた野菜の断面を見る。そこには、先ほど見たあの光景と同様のものがあった。
蠢く大量のムシが溢れ、私の手を伝ってこようとする。
気持ち悪さが頂点に達し、私は絶叫しながら全ての野菜を捨てた。
それからゴミ袋を急いでゴミ捨て場に捨て、入念に手を洗った。
居間に戻り、妻と一息つく。
「さっきはすまなかった。私の育てた野菜で怖い思いをさせてしまったね」
「良いんですよ、きにしないでください。あなたのせいじゃありませんよ」
気丈に振る舞う妻の手はまだ震えていた。
ふと、妻が菜園の方を見やる。動きが固まる。私もつられてそちらを向く。
私の育てた野菜類が真っ黒に染まっていた。
全てムシに覆い尽くされ、ただの真っ黒な物体となっていたのだ。
ばかな。さっき収穫した時はなんともなかったのに・・・
もはや恐怖と言っても過言ではないこの感情を私は感じていた。
重い腰を上げ、気持ち悪さと不快感を孕みながら、菜園に植えてある全ての野菜を処分した。
二度と野菜を育てるつもりはない。
今後、野菜を食べたいとも思わない。
いかがだったろうか?
この話の怖いところは人それぞれだろう。
現代において、G男さんのような経験をすることは稀かもしれない。
しかし、それは野菜に限ったことではない。生魚に寄生するアニサキスなど、何かに寄生して生きる虫もこの世には存在する。
日常の隣に潜んでいる彼ら。
大事なのは熱することかもしれませんね。
今日のお話はここまでにしよう。
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