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アイドル転向!?
53話 公式ブログ
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ケガの功名というヤツかは分からないが、例の歌番組でのパフォーマンスはファンの間で話題になったようだ。
舞奈のセンターとして相応しい堂々としたパフォーマンスは好評だったし、私の初選抜としてのパフォーマンスも及第点といった評価だろうか。
私に対する評価が絶賛だった初ステージの頃よりも厳しめな傾向は、むしろ本格的にメンバーとして認められてきた証拠なのだろう。
忙しい合間を縫って練習に励んでいるし、小田嶋麻衣の身体と頭脳は素質としても恵まれているのだろう。練習を行えば行うだけ吸収して上手くなっていくのが自分でも実感出来る。
これは俺にとってとても不思議な感覚だった。
松島寛太の時はどれだけ真剣に物事に取り組んでも、物覚えが悪く身体を動かすことも不器用で全然上手く出来なかった。その根本の感覚が全然違うのだ。それも良い方に違うのだから練習することがとても楽しかった。
その分だけパフォーマンスは間違いなく伸びている。
だけど同じだけの時間を他のメンバーも練習に充てているのだ(もちろん不真面目なメンバーもいるが)。長年の経験の差はそんなに簡単には埋まらない。
しかしそれに対する厳しい客観的な評価こそが「お客様」「色物としてのマネージャーからの転身」だった小田嶋麻衣から、純粋にWISHの一員としてのスタートラインに立てたことのように思えた。
もちろん舞台上でのパフォーマンスだけがアイドル活動の全てではない。
握手会、メディア出演、SNS……そのどれもがアイドルとして重要だ。何をきっかけにアイドルを知り推すようになるかは、ファンそれぞれ本当に十人十色だ。趣味などの個性が思わぬ脚光を浴びるきっかけになることも多い。メンバーはそれぞれ得意な分野を生かして活動してゆけば良いと思う。
だけど私は、やはり舞台上で歌って踊るということこそがアイドルの根本にあるのだと思い始めていた。黒木希も桜木舞奈も舞台上でのパフォーマンスを一番真剣に取り組んでいた。それはステージというものが真剣にならざるを得ない場だからなのだと思う。そこでは自分を偽ることが出来ないのだ。どんな自分も思わぬ形で出てしまう。
まだアイドルとしての活動を始めてからほんの僅かしか経っていない私だけれど、少しだけそのことが理解出来るようになってきた。
「麻衣さん、自撮りで載せる写真悩んでるんですか?あれですよ、変顔とか載せるとファンの人は喜びますよ」
「え、そうかなぁ?…………いやいや、ダメダメダメ、私の初投稿なんだから!」
私がブログ用の自撮りの角度に悩んでいると、舞奈が少し面倒くさそうに絡んできた。ずっと悩んでいる姿がじれったく見えたようだ。
今日も舞奈と同じ現場での仕事だった。やはり選抜メンバー同士ということで同じ仕事になる機会が多い。
変顔も幼いメンバーがやるのなら無邪気で可愛いかもしれないけど、流石に20代も半ば、それも社会人経験のある大人メンバーです!……みたいなキャラクターの私がすることではない。しかも初投稿でいきなり変顔というのはかなり喧嘩を売っていると思われても仕方ない所業だ。
舞奈には例の歌番組でのアクシデントの件について、本番が終わった直後に尋ねた。
結果的に舞奈のミスを私がフォローしたことにはなったが、別に恩に着せてやろうという気は微塵もなかった。
周りのメンバーは咄嗟にフォローした私の方を褒めてくれたのだが、私にはそれよりもマイクを落としたのに全然動揺を見せずにパフォーマンスを続けた舞奈の方が凄いと思えた。
「あ、マイク落ちちゃった件ですね。あ~はいはい、落ちましたねマイク……くらいですかね?まあ流れを止めずに続けることの方が大事なのは当然ですし、初披露なのでお客さんにとっては初見ですからね。堂々としてれば変わった演出だな……くらいに思う人はいるかもしれないですけど間違いではないですからね。最後のセリフの部分も、マイクなしの口パクであえて言葉にしないのもインパクトがあって良いかなと思ったので。あ、まあ、麻衣さんのマイクフォローもアレはアレで良かったと思いますよ」
舞奈から返ってきた答えはこんな感じだった。
もちろん言われてみればそうかもしれないが、舞奈は一瞬の内にそこまで計算したのだろうか?
彼女も以前は頼りない部分があったのだが、いつの間にか精神的にも強くなっているようだった。頼もしく素晴らしいことではあるのだが、間近で見ていた身としては……しっかりし過ぎてて正直あんまり可愛くない。
「もう、麻衣さん……何回ブログ用の自撮り取り直してるんですか。麻衣さんなんかどっからどう撮っても可愛くて美人なんですから、ちゃっちゃと終わらせて下さいよ」
「いや、そういうわけにもいかないでしょ。やっぱり左側からの映した顔の方が良い気がするし……でもこれから同じアングルの写真ばっかり載せてたらファンの人も見飽きちゃうかなぁ。最初は思い切って正面からの写真の方が良いのかなぁ」
「どっちでも一緒ですよ、麻衣さんの場合。……麻衣さんの顔って本当に左右対称ですよね。私も元々は『自分が一番可愛い、美人だ』と思って生きてきましたけど、WISHに入って大きく自信を失くしましたし、なんなら麻衣さんに初めて会った時が一番ショックでしたよ……。アイドルより美人なマネージャーなんてメンタル崩壊させに掛かってたでしょ、社長も」
舞奈に言われて転生した当初のことを思い出した。
たしかに鏡を見た時はその美少女っぷりに自ら惚れ惚れしたものだ。今も鏡を見て驚くこともある。松島寛太としての日々を思い出していた後などは尚更だ。
だけど慣れてくるとその中でも気になる部分が出て来るし、コンディションの良し悪しにも敏感だ。むしろ整い過ぎていてあまり個性のないつまらない顔に思える時もある。
でもそれよりも強く感じるのは、ルックスが必ずしもアイドルの最も重要な武器ではないということだ。
黒木希は文句なしの美人で若い女子たちが憧れる顔そのものだったが、必ずしもそれだけで人気が出たわけではない。
桜木舞奈ももちろんとても可愛いが、ルックスだけで言えばそれより上位の子がWISHのメンバーに恐らく何人かはいる。だけど彼女たちが舞奈に匹敵するほどの人気や存在感があるかと言うと、そうではないのが現状だ。
「これがあれば必ず人気のアイドルになれる!」という要素は何だろうか?マネージャー歴を含め3年ほどWISHという国民的アイドルの内部にいるわけだが、未だにそれに答えるのは難しい。
「もー、良いから貸して下さい!」
未だ自撮りの角度に悩んでいる私を見兼ねたのか、舞奈は私のスマホをひったくると写真を撮った。
「あ、ちょっと、もう舞奈ってば返してって…………え?舞奈?何してんの?……ちょっと待って!投稿してるじゃん!」
ひったくったスマホで写真を撮ったのはまだ良いのだが……あろうことか舞奈はそれを貼り付け、そのまま私の公式ブログに投稿してしまったのだった!
……すでに文章を書き終えいつでも投稿出来る状態になっていたことが幸だったのか不幸だったのか……。
しかも使われた写真は眼も半開きだし、ピントもずれてるし。私がマネージャーだったら「う~ん、文章はとっても良いから、もう一回写真だけ撮り直そうか?」っていうヤツだった。
「あ、スゴイ。投稿して3分も経たないのにいいねは1000超えてるし、コメントも300件以上来てるじゃないですか。まあコメントって言っても可愛い可愛いの連発ですけどね」
慌てて自分の投稿を確認するとたしかに舞奈の言う通りだった。しかも今もどんどんその数は増えていた。
しかしこれがWISHのメンバーとして特別多い数字というほどでもない。井上香織が公式ブログで卒業を発表した時はこの比ではなかった(希は自身の配信番組で卒業を発表した)。
コメントも大抵は舞奈の言う通り一言くらいのものだった。中にはボヤけた写真に対するツッコミもあったが「それでも可愛い」という趣旨のコメントばかりだった。
でも時々、少し……ほんの少しだけ、面倒くさそうな長文のコメントもあった。
もちろん公式ブログは3ちゃんねるとは違う。あまり過激な発言は自動的に表示されない仕組みになっているらしいが、色々な思惑を持って応援してくれているファンの人がいることは忘れないようにしなければならない。
これからはアイドル小田嶋麻衣として、より多くの人に見られているという意識を持たねばならない……と再度自分に言い聞かせたのだった。
舞奈のセンターとして相応しい堂々としたパフォーマンスは好評だったし、私の初選抜としてのパフォーマンスも及第点といった評価だろうか。
私に対する評価が絶賛だった初ステージの頃よりも厳しめな傾向は、むしろ本格的にメンバーとして認められてきた証拠なのだろう。
忙しい合間を縫って練習に励んでいるし、小田嶋麻衣の身体と頭脳は素質としても恵まれているのだろう。練習を行えば行うだけ吸収して上手くなっていくのが自分でも実感出来る。
これは俺にとってとても不思議な感覚だった。
松島寛太の時はどれだけ真剣に物事に取り組んでも、物覚えが悪く身体を動かすことも不器用で全然上手く出来なかった。その根本の感覚が全然違うのだ。それも良い方に違うのだから練習することがとても楽しかった。
その分だけパフォーマンスは間違いなく伸びている。
だけど同じだけの時間を他のメンバーも練習に充てているのだ(もちろん不真面目なメンバーもいるが)。長年の経験の差はそんなに簡単には埋まらない。
しかしそれに対する厳しい客観的な評価こそが「お客様」「色物としてのマネージャーからの転身」だった小田嶋麻衣から、純粋にWISHの一員としてのスタートラインに立てたことのように思えた。
もちろん舞台上でのパフォーマンスだけがアイドル活動の全てではない。
握手会、メディア出演、SNS……そのどれもがアイドルとして重要だ。何をきっかけにアイドルを知り推すようになるかは、ファンそれぞれ本当に十人十色だ。趣味などの個性が思わぬ脚光を浴びるきっかけになることも多い。メンバーはそれぞれ得意な分野を生かして活動してゆけば良いと思う。
だけど私は、やはり舞台上で歌って踊るということこそがアイドルの根本にあるのだと思い始めていた。黒木希も桜木舞奈も舞台上でのパフォーマンスを一番真剣に取り組んでいた。それはステージというものが真剣にならざるを得ない場だからなのだと思う。そこでは自分を偽ることが出来ないのだ。どんな自分も思わぬ形で出てしまう。
まだアイドルとしての活動を始めてからほんの僅かしか経っていない私だけれど、少しだけそのことが理解出来るようになってきた。
「麻衣さん、自撮りで載せる写真悩んでるんですか?あれですよ、変顔とか載せるとファンの人は喜びますよ」
「え、そうかなぁ?…………いやいや、ダメダメダメ、私の初投稿なんだから!」
私がブログ用の自撮りの角度に悩んでいると、舞奈が少し面倒くさそうに絡んできた。ずっと悩んでいる姿がじれったく見えたようだ。
今日も舞奈と同じ現場での仕事だった。やはり選抜メンバー同士ということで同じ仕事になる機会が多い。
変顔も幼いメンバーがやるのなら無邪気で可愛いかもしれないけど、流石に20代も半ば、それも社会人経験のある大人メンバーです!……みたいなキャラクターの私がすることではない。しかも初投稿でいきなり変顔というのはかなり喧嘩を売っていると思われても仕方ない所業だ。
舞奈には例の歌番組でのアクシデントの件について、本番が終わった直後に尋ねた。
結果的に舞奈のミスを私がフォローしたことにはなったが、別に恩に着せてやろうという気は微塵もなかった。
周りのメンバーは咄嗟にフォローした私の方を褒めてくれたのだが、私にはそれよりもマイクを落としたのに全然動揺を見せずにパフォーマンスを続けた舞奈の方が凄いと思えた。
「あ、マイク落ちちゃった件ですね。あ~はいはい、落ちましたねマイク……くらいですかね?まあ流れを止めずに続けることの方が大事なのは当然ですし、初披露なのでお客さんにとっては初見ですからね。堂々としてれば変わった演出だな……くらいに思う人はいるかもしれないですけど間違いではないですからね。最後のセリフの部分も、マイクなしの口パクであえて言葉にしないのもインパクトがあって良いかなと思ったので。あ、まあ、麻衣さんのマイクフォローもアレはアレで良かったと思いますよ」
舞奈から返ってきた答えはこんな感じだった。
もちろん言われてみればそうかもしれないが、舞奈は一瞬の内にそこまで計算したのだろうか?
彼女も以前は頼りない部分があったのだが、いつの間にか精神的にも強くなっているようだった。頼もしく素晴らしいことではあるのだが、間近で見ていた身としては……しっかりし過ぎてて正直あんまり可愛くない。
「もう、麻衣さん……何回ブログ用の自撮り取り直してるんですか。麻衣さんなんかどっからどう撮っても可愛くて美人なんですから、ちゃっちゃと終わらせて下さいよ」
「いや、そういうわけにもいかないでしょ。やっぱり左側からの映した顔の方が良い気がするし……でもこれから同じアングルの写真ばっかり載せてたらファンの人も見飽きちゃうかなぁ。最初は思い切って正面からの写真の方が良いのかなぁ」
「どっちでも一緒ですよ、麻衣さんの場合。……麻衣さんの顔って本当に左右対称ですよね。私も元々は『自分が一番可愛い、美人だ』と思って生きてきましたけど、WISHに入って大きく自信を失くしましたし、なんなら麻衣さんに初めて会った時が一番ショックでしたよ……。アイドルより美人なマネージャーなんてメンタル崩壊させに掛かってたでしょ、社長も」
舞奈に言われて転生した当初のことを思い出した。
たしかに鏡を見た時はその美少女っぷりに自ら惚れ惚れしたものだ。今も鏡を見て驚くこともある。松島寛太としての日々を思い出していた後などは尚更だ。
だけど慣れてくるとその中でも気になる部分が出て来るし、コンディションの良し悪しにも敏感だ。むしろ整い過ぎていてあまり個性のないつまらない顔に思える時もある。
でもそれよりも強く感じるのは、ルックスが必ずしもアイドルの最も重要な武器ではないということだ。
黒木希は文句なしの美人で若い女子たちが憧れる顔そのものだったが、必ずしもそれだけで人気が出たわけではない。
桜木舞奈ももちろんとても可愛いが、ルックスだけで言えばそれより上位の子がWISHのメンバーに恐らく何人かはいる。だけど彼女たちが舞奈に匹敵するほどの人気や存在感があるかと言うと、そうではないのが現状だ。
「これがあれば必ず人気のアイドルになれる!」という要素は何だろうか?マネージャー歴を含め3年ほどWISHという国民的アイドルの内部にいるわけだが、未だにそれに答えるのは難しい。
「もー、良いから貸して下さい!」
未だ自撮りの角度に悩んでいる私を見兼ねたのか、舞奈は私のスマホをひったくると写真を撮った。
「あ、ちょっと、もう舞奈ってば返してって…………え?舞奈?何してんの?……ちょっと待って!投稿してるじゃん!」
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しかも使われた写真は眼も半開きだし、ピントもずれてるし。私がマネージャーだったら「う~ん、文章はとっても良いから、もう一回写真だけ撮り直そうか?」っていうヤツだった。
「あ、スゴイ。投稿して3分も経たないのにいいねは1000超えてるし、コメントも300件以上来てるじゃないですか。まあコメントって言っても可愛い可愛いの連発ですけどね」
慌てて自分の投稿を確認するとたしかに舞奈の言う通りだった。しかも今もどんどんその数は増えていた。
しかしこれがWISHのメンバーとして特別多い数字というほどでもない。井上香織が公式ブログで卒業を発表した時はこの比ではなかった(希は自身の配信番組で卒業を発表した)。
コメントも大抵は舞奈の言う通り一言くらいのものだった。中にはボヤけた写真に対するツッコミもあったが「それでも可愛い」という趣旨のコメントばかりだった。
でも時々、少し……ほんの少しだけ、面倒くさそうな長文のコメントもあった。
もちろん公式ブログは3ちゃんねるとは違う。あまり過激な発言は自動的に表示されない仕組みになっているらしいが、色々な思惑を持って応援してくれているファンの人がいることは忘れないようにしなければならない。
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