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出会い

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「よいか、おぬしはまだ未熟……。この森の外、世界を見て学ぶのだ」

「はい…お師匠様」

 私は返事をした。


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 森の中、故郷の事を思い出しながら歩く。あそこから出て早二年。ずいぶん遠くまで来たことを実感した。

「イース、行け」

 鳥の使い魔『イース』を肩から飛び立たせる。水の流れている場所を探して来いと命令した。


「お疲れ様、休んでね」

 しばらくしてイースが戻ってきた。ここから十分くらい歩いたところにあるらしい。そこで休みたい。

「ご飯食べなきゃ…」

腹の虫腹の使い魔が鳴っている。


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「汚い……」

 この川、非常に汚れている。これじゃ魚いないじゃん……。いちおう魔法で感知しようか。いや、やめよ。

「お、お前は!」

 そんな言葉とともにナイフが飛んできた。危ない。これをさっと避ける。

「……?」

 ナイフが飛んできた方向には二人の少女がいた。風貌的に冒険者だろう。

「お前、隣国で賞金首のアンニヒだろ!」

 茶髪で小柄なナイフ使い。そう見て取れる。

「か、覚悟しろぉ~…」

 もう一人は黒髪で大柄。長剣使い。ナイフ使いとは対照的に、ひどくおびえている。いきなり来られておびえられる。私もさすがにショックだ。

「そうだけど、別にあなた達に何かするつもりは……」

 とりあえず落ち着かせよう。そう思って一歩踏み出した瞬間。

「ウィンド!」

 私の背後から矢が飛んできた。すかさず魔法で落とす。

 …流石に予想外なんだけど。

「ヘッヘッヘ、まさかこんな森の中でぇ子猫ちゃん三人に出会えるなんてな~」

 キモイ。それが率直に思った感想。盗賊だろうか。私たちを見て舌なめずりをしている。

「三人とも、こっちに来な。悪いようにはしないからよぉ」

 なめまわすような声。彼女らはおびえ切っている。

「いやだと言ったら?」

「こうする。出てこい! お前ら!」

 私の問いかけの答えをくれた。盗賊の後ろから、…ざっと十数人。

 私は彼女らの近くに行き、守るようにして立つ。

「「え?」」

「大丈夫。すぐに終わるよ」

 笑いかける。

「お前ひとりで戦う気か? やっちまえ!」

 盗賊たちが一斉に走ってきた。

「アクア・パラ」


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「すごいすごいすごい! あんな数の盗賊たちを一発で倒しちゃうなんて!」

「すごいです……」

 私は彼女たちに囲まれていた。盗賊たちを倒した後、袖を引っ張られて連れていかれたのはきれいな小川。日もくれたしご飯を食べようということで、腰を下ろした。

「あの魔法は何!?」とか「どこから来たの?」と質問攻めを受けた。

 で、今に至る。流石に聞かれ疲れた……。

「メイさん……聞きたいことが…」

 黒髪大柄もといアミが切り出す。

「どうしたの?」

「あうっ…えっと…」

「メイってさ、何で旅してるの?」

 茶髪小柄もといカサラが、口ごもったアミをフォローするように割り込んできた。

「……私自身の成長のためかな」

 またお師匠様の言葉を思い出した。

「じゃあ…さ、私たちと一緒に来ない?」

「え? それってどういう…?」

 こんなこと言われるとは思っていなかった。

「そのまんまの意味。私たちと一緒に冒険しない? ってこと」

 突然の申し入れに躊躇する。さっきピンチを救っただけなのに…。

「私たち今はこんなのだけど、いつかは魔王を倒して見せるくらいの冒険者になりたいの。協力してくれないかな? そ、それにメイ自身の成長にもつながるんじゃないかな?」

 そうか。救っただけじゃない。救ったからだ。真剣なカサラの目を見て気づいた。

 ……お師匠様、私…転機が来たみたいです。

「いいよ。一緒に行こう」

 二人の顔に笑顔が浮かんだ。








次回~「ギルドに行こう」 十一月十九日 七時半更新。
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