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一章〜出会い〜
アクシデント
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1
皆んなと別れてからどのくらい経っただろう。
こんなの有り?有りなのか?皆んなで来て一人だけ仲間はずれなんて…じゃあ、誘うなよって思ってしまう。
俺は、ベンチに座って楽しそうにしている男の子を見ていた。
「俺も昔はこの子みたいだったのかな」
独り言を言いながら眺めてるなんて、危ないんじゃないか。周りから変な目で見られるな。
そんな事を考えてると、目の前でその男の子が転んで、泣いてしまった。
反射的にすぐに立ち上がり、助けに…は、行けなかった。
今の世の中、周りに誰もいないこの状況で、知らない人が他人の子供と触れ合うということは、ほぼ全員と言っていいほど犯罪の方向に考えてしまう。
もし、今行けば犯罪者と勘違いされるんじゃないか。
思い過ごしかもしれないが、そんな事を考えていた。
その時、俺の脇から駆け寄っていく人がいた。
セミロングで整った顔、身長は一般女性より少し小さいくらいで、可愛いいけど、どこかクールな感じがする女性だった。
「ボク、大丈夫?ケガはない?」
「うぇーん」
「足、すりむいた?」
下に目を下ろすと、男の子のヒザがすりむいていた。
「痛いよね?…はい。これで大丈夫!」
「…ありがとう。お姉ちゃん」
「楽しいのはわかるけど、あまり無理しちゃダメだよ?」
「うん、気をつける!」
その人は自分のバックから傷テープを取り出すとその子供の傷ついたヒザに優しく貼ってあげた。
子供は泣き止み、笑顔になった。
後ろから、その子の母親らしき人が心配そうに走ってきた。
「龍くん!」
「あ、ママ!」
「どこに行ってたの!?トイレに行くって言ったきり、戻ってこないから心配したじゃない!一人で騒いでケガまでして!」
「ごめんなさい。でも、お姉ちゃんが手当てしてくれたんだ」
母親はその時そのお姉さんがいるのに気がついた。
「あ、すいません。ケガの手当てまでしてもらって。ありがとうございましたぁ」
「いえ、当たり前ですよ」
その親子は会釈をすると水族館の中へと歩いて行った。
俺はその場にただ立っていただけだ。そこにいたたまれなくなって、その場から離れようとした時、そのお姉さんから話しかけられた。
「あの、なんで助けなかったんですか?」
「え?」
「今、目の前で子供が転んで泣いてました。すぐ立ち上がったから、助けに行くのかと思ったら全然動かないし、最低ですね」
最低だと言われれば確かに最低だ。何も反論できない。でも、一言だけ返してみた。
「…最低、ですね。でも、他人が他人の子供に近づくと犯罪者だと勘違いされるじゃないですか」
「だったら、私は犯罪者ですか?」
「え?」
「子供に声をかけた私は犯罪者ですか?」
「いや、そういう…」
「犯罪者と勘違いされるから泣いてる子供を助けないんですか?」
一つ返したら十戻ってきた。かなり詰めてくる。そりゃあ、俺にだって助けたい気持ちはあったけど、まぁ、動けなかったのは確かだ。
でも、他人にそこまで言われる筋合いはないんじゃないか?
「すいませんけど、確かに俺がすぐ助けに行かなかったのは悪かったですよ?でも、そこまであなたに言われる筋合いはありません」
「開き直りですか?」
「開き直りって、そういう…」
なぜだろう。今日にかぎってムカついているのは何故だ?いつもならこういう事は軽く流しておくはずなのに…やっぱり、のけ者にされたのが結構頭にきてるのかな。
でも、どうでもよくなって、だんだん怒る気力がなくなってきた。
「わかりました。俺が悪かったです。すいません」
「悪いと思ってます?」
「思ってますよ」
「本当かなぁ」
彼女は俺を疑う眼差しで睨めつけている。
本当、こういう気の強い女の人は苦手だ。こういう時はすぐに離れるのが得策だろう。
俺は適当に言葉を選び、その場から去ろうと後ろを振り向いた。
今日はとことんツイてない。
来なきゃ良かった。
俺は、目の前の水槽で優雅に泳いでいる魚を見て「お前らは本当いいよな?悩みも無くて、ただ生きていく為だけに行動してればいいもんな」なんて、魚に話しかけてみる。
悲しくなってきた。
バタンッ!!
キャー!!
何か倒れる音と悲鳴がした。
振り返るとさっき俺に説教してた女の人が倒れていた。
今度は悩まず、すぐ走り出していた。
「どうしました!?大丈夫ですか!?」
「・・・」
反応がない。これはヤバいんじゃ。
「・・・ん、うぅぅん・・・」
良かった。意識はあるようだ。
「どうしました!?」
近くにいた人がすぐに警備員を呼んだのだろう。駆け足で近寄ってくる。
「すいません。ちょっとよく分からないのですが…いきなり倒れまして」
「意識はあるようですね。お連れの方ですよね?一緒に医務室まで行きましょう」
「え?俺ですか?」
「一緒の方じゃないんですか?」
「あ、はい…いえ・・わかりました。医務室はどこですか?」
そう言うと、警備員さんと二人でその彼女を抱え、医務室へと向かった。
2
医務室について彼女をベットに横にさせると、医務室にいた先生が来て触診しようとしたが、俺と警備員がいるからか手を止め、こちらを振り返った。
そうだよな、邪魔だよな。
俺はそっと医務室を出た。
廊下に出ると、館内の綺麗な水族館とは違い、薄暗く、ダンボールがいくつも積み重なっている。
急いで来たせいか、冷静になると周りはせかせかと走り回っている。
俺は目の前にあった長方形のソファーに座った。
何も考えず座っていたが、ふと今日の出来事を考えてしまった。
水族館でのペア決めでは一人になり、子供を助けないとボロクソに言われ、そしてそのボロクソに言った女が目の前で倒れ、それに付き添っている。
「なんて日だ…」
3
イルカショーまで後十分前。
高瀬達はイルカショーの観客席に座り始まるのを待ちわびている。
亜子が周りをキョロキョロ見渡している。
勝子が話しかけてきた。
「どうしたの亜子ちゃん?」
「瀬戸くん、どこいったのかなぁと思って…でも、いないみたい」
「ほんと、どこ行ったの?アイツ…心配?」
「いや、心配っていうか…うん、心配かな」
「正直でよろしい!でも、瀬戸君もいちいち高瀬の言う事守らなくてもいいのに、勝手に決めたルールなんだし」
「でも、みんな賛成してたよ」
「あれ?そうだっけ?」
二人は顔を合わせて笑顔になった。
「やっと笑った。高瀬がさ、心配してたぞ?やっぱり瀬戸がいないと亜子ちゃんはダメなんだなぁ…って」
勝子が高瀬のモノマネをして話してたら、つい笑ってしまった。
「瀬戸君と合流したら、瀬戸君の機嫌とらないとね」
「うん」
そんなやりとりをしていると、館内アナウンスが流れた。
『乙倉(おとくら)由美さんのご家族の方、いらっしゃいましたらお近くの係員までお声がけくださいますようお願いします。繰り返します…』
「なんだろ?何かあったのかな?体調不良?」
勝子が言ったら、高瀬が会話に入ってきた。
「そりゃあ、こんなに人がいたら一人や二人具合悪くなるよ」
そんな話をしていたら、少し離れた所で、年配の夫婦二人が係員の人に話しかけている。
放送の呼び出してた家族の人だろう。凄く焦っている。
「あの人達かな?」
「多分な。でも、せっかく楽しみにして来たのに可哀想だな」
勝子と高瀬は夫婦を哀れみの目で見ている。
「瀬戸君…」
亜子はそんな夫婦を見ながら、高瀬達の会話を聞いて、不謹慎だけど、瀬戸の事を思い出していた。
「そうだよね、せっかく楽しむ為に来たんだもんね…」
「亜子ちゃん?」
「彩ちゃん、私、瀬戸君探してくるね」
「え?亜子ちゃん?」
「どうした?緋山?」
新藤が隣での二人のやりとりに気づき、亜子を呼び止めた。
亜子は後ろを振り返り、話した。
「やっぱり、瀬戸君もいないとダメだよ!瀬戸君運転手で誘われたの?」
「いや、そんな事…」
「どうした?」
「高瀬…」
高瀬がその場に来た途端、亜子は高瀬を睨んだ。
「私…自分の為に他の人の事を考えないで行動する人は嫌い!」
「え?」
亜子はその言葉を残し走り出した。
高瀬はいきなりのフラれ方にビックリしてしまいその場から動けなかった。
イルカショー会場から出ると、トイレから出てきた菅原とぶつかりそうになった。
「あ、すいません」
「あ、こちらこそ…あれ?緋山さん?どうかした?」
「あ、ごめん。やっぱり、瀬戸君探してくる」
「そっか、そうだよね。皆んなで来たんだし。緋山さん、ごめん。瀬戸をよろしくね」
「うん」
そう言うと亜子はまた走り出した。
4
そろそろイルカショーが始まる時間になろうとしていたが、俺はまだ医務室の前にいた。
放送で彼女の家族の人が呼ばれてる声は聞こえた。でも、まだ到着していないみたいだ。
静かだ。
皆んな、楽しんでるんだろうなぁ…。
まぁ、一人で見た所で何が楽しいのかはわからないが…俺も意地張らないで皆んなと居れば良かったな。
一人で考えてると、足音が聞こえてきた。急いで来てるようだ。
朝、駐車場で岡山ナンバーのレガシィから降りてきた夫婦だ。と言うことは、倒れたのはその時一緒にいた娘さん?
その夫婦は息切れをしていた。
「あの!娘は!?」
「娘はどこですか!?」
夫婦は血相を変えた顔で俺に詰め寄ってくる。
「あの、すいません。落ち着いて下さい」
「あ、すいません…取り乱してしまって…」
「…娘さんは今医務室の中で見てもらってます。とりあえず、意識は大丈夫みたいなんで…」
「そ、そうですか」
夫婦は大丈夫だと聞いて、少しは安心したみたいだった。
廊下が騒がしかったせいか、医務室から先生が出てきた。
「あ、もしかして乙倉由美さんのご家族の方で?」
「あ、はい。父と母です」
「そうですか、じゃあ中へどうぞ」
老夫婦は中へと入っていった。
これで、やっと解放されるのかな。
家族も来たし、安心だと思い医務室から離れた。
5
館内に戻ると医務室側とは違い、水族館らしくガヤガヤとにぎわっていた。
目の前を子供達が走っていく、その後ろを『こら!走るな!ぶつかったらどうするの!』と言いながら大人が追いかけている。
カップルが水槽の魚を見ながら彼氏がウンチクを自慢げに話している。
そんな水族館の中を瀬戸は一人歩いていた。
「なんか、むなしいな」
瀬戸は一言独り言を話し、近くのベンチに座って下を向いていた。
すると、誰かの足が見えた。
瀬戸は顔を上げるとそこには見知らぬ若い女性が立っていた。
皆んなと別れてからどのくらい経っただろう。
こんなの有り?有りなのか?皆んなで来て一人だけ仲間はずれなんて…じゃあ、誘うなよって思ってしまう。
俺は、ベンチに座って楽しそうにしている男の子を見ていた。
「俺も昔はこの子みたいだったのかな」
独り言を言いながら眺めてるなんて、危ないんじゃないか。周りから変な目で見られるな。
そんな事を考えてると、目の前でその男の子が転んで、泣いてしまった。
反射的にすぐに立ち上がり、助けに…は、行けなかった。
今の世の中、周りに誰もいないこの状況で、知らない人が他人の子供と触れ合うということは、ほぼ全員と言っていいほど犯罪の方向に考えてしまう。
もし、今行けば犯罪者と勘違いされるんじゃないか。
思い過ごしかもしれないが、そんな事を考えていた。
その時、俺の脇から駆け寄っていく人がいた。
セミロングで整った顔、身長は一般女性より少し小さいくらいで、可愛いいけど、どこかクールな感じがする女性だった。
「ボク、大丈夫?ケガはない?」
「うぇーん」
「足、すりむいた?」
下に目を下ろすと、男の子のヒザがすりむいていた。
「痛いよね?…はい。これで大丈夫!」
「…ありがとう。お姉ちゃん」
「楽しいのはわかるけど、あまり無理しちゃダメだよ?」
「うん、気をつける!」
その人は自分のバックから傷テープを取り出すとその子供の傷ついたヒザに優しく貼ってあげた。
子供は泣き止み、笑顔になった。
後ろから、その子の母親らしき人が心配そうに走ってきた。
「龍くん!」
「あ、ママ!」
「どこに行ってたの!?トイレに行くって言ったきり、戻ってこないから心配したじゃない!一人で騒いでケガまでして!」
「ごめんなさい。でも、お姉ちゃんが手当てしてくれたんだ」
母親はその時そのお姉さんがいるのに気がついた。
「あ、すいません。ケガの手当てまでしてもらって。ありがとうございましたぁ」
「いえ、当たり前ですよ」
その親子は会釈をすると水族館の中へと歩いて行った。
俺はその場にただ立っていただけだ。そこにいたたまれなくなって、その場から離れようとした時、そのお姉さんから話しかけられた。
「あの、なんで助けなかったんですか?」
「え?」
「今、目の前で子供が転んで泣いてました。すぐ立ち上がったから、助けに行くのかと思ったら全然動かないし、最低ですね」
最低だと言われれば確かに最低だ。何も反論できない。でも、一言だけ返してみた。
「…最低、ですね。でも、他人が他人の子供に近づくと犯罪者だと勘違いされるじゃないですか」
「だったら、私は犯罪者ですか?」
「え?」
「子供に声をかけた私は犯罪者ですか?」
「いや、そういう…」
「犯罪者と勘違いされるから泣いてる子供を助けないんですか?」
一つ返したら十戻ってきた。かなり詰めてくる。そりゃあ、俺にだって助けたい気持ちはあったけど、まぁ、動けなかったのは確かだ。
でも、他人にそこまで言われる筋合いはないんじゃないか?
「すいませんけど、確かに俺がすぐ助けに行かなかったのは悪かったですよ?でも、そこまであなたに言われる筋合いはありません」
「開き直りですか?」
「開き直りって、そういう…」
なぜだろう。今日にかぎってムカついているのは何故だ?いつもならこういう事は軽く流しておくはずなのに…やっぱり、のけ者にされたのが結構頭にきてるのかな。
でも、どうでもよくなって、だんだん怒る気力がなくなってきた。
「わかりました。俺が悪かったです。すいません」
「悪いと思ってます?」
「思ってますよ」
「本当かなぁ」
彼女は俺を疑う眼差しで睨めつけている。
本当、こういう気の強い女の人は苦手だ。こういう時はすぐに離れるのが得策だろう。
俺は適当に言葉を選び、その場から去ろうと後ろを振り向いた。
今日はとことんツイてない。
来なきゃ良かった。
俺は、目の前の水槽で優雅に泳いでいる魚を見て「お前らは本当いいよな?悩みも無くて、ただ生きていく為だけに行動してればいいもんな」なんて、魚に話しかけてみる。
悲しくなってきた。
バタンッ!!
キャー!!
何か倒れる音と悲鳴がした。
振り返るとさっき俺に説教してた女の人が倒れていた。
今度は悩まず、すぐ走り出していた。
「どうしました!?大丈夫ですか!?」
「・・・」
反応がない。これはヤバいんじゃ。
「・・・ん、うぅぅん・・・」
良かった。意識はあるようだ。
「どうしました!?」
近くにいた人がすぐに警備員を呼んだのだろう。駆け足で近寄ってくる。
「すいません。ちょっとよく分からないのですが…いきなり倒れまして」
「意識はあるようですね。お連れの方ですよね?一緒に医務室まで行きましょう」
「え?俺ですか?」
「一緒の方じゃないんですか?」
「あ、はい…いえ・・わかりました。医務室はどこですか?」
そう言うと、警備員さんと二人でその彼女を抱え、医務室へと向かった。
2
医務室について彼女をベットに横にさせると、医務室にいた先生が来て触診しようとしたが、俺と警備員がいるからか手を止め、こちらを振り返った。
そうだよな、邪魔だよな。
俺はそっと医務室を出た。
廊下に出ると、館内の綺麗な水族館とは違い、薄暗く、ダンボールがいくつも積み重なっている。
急いで来たせいか、冷静になると周りはせかせかと走り回っている。
俺は目の前にあった長方形のソファーに座った。
何も考えず座っていたが、ふと今日の出来事を考えてしまった。
水族館でのペア決めでは一人になり、子供を助けないとボロクソに言われ、そしてそのボロクソに言った女が目の前で倒れ、それに付き添っている。
「なんて日だ…」
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イルカショーまで後十分前。
高瀬達はイルカショーの観客席に座り始まるのを待ちわびている。
亜子が周りをキョロキョロ見渡している。
勝子が話しかけてきた。
「どうしたの亜子ちゃん?」
「瀬戸くん、どこいったのかなぁと思って…でも、いないみたい」
「ほんと、どこ行ったの?アイツ…心配?」
「いや、心配っていうか…うん、心配かな」
「正直でよろしい!でも、瀬戸君もいちいち高瀬の言う事守らなくてもいいのに、勝手に決めたルールなんだし」
「でも、みんな賛成してたよ」
「あれ?そうだっけ?」
二人は顔を合わせて笑顔になった。
「やっと笑った。高瀬がさ、心配してたぞ?やっぱり瀬戸がいないと亜子ちゃんはダメなんだなぁ…って」
勝子が高瀬のモノマネをして話してたら、つい笑ってしまった。
「瀬戸君と合流したら、瀬戸君の機嫌とらないとね」
「うん」
そんなやりとりをしていると、館内アナウンスが流れた。
『乙倉(おとくら)由美さんのご家族の方、いらっしゃいましたらお近くの係員までお声がけくださいますようお願いします。繰り返します…』
「なんだろ?何かあったのかな?体調不良?」
勝子が言ったら、高瀬が会話に入ってきた。
「そりゃあ、こんなに人がいたら一人や二人具合悪くなるよ」
そんな話をしていたら、少し離れた所で、年配の夫婦二人が係員の人に話しかけている。
放送の呼び出してた家族の人だろう。凄く焦っている。
「あの人達かな?」
「多分な。でも、せっかく楽しみにして来たのに可哀想だな」
勝子と高瀬は夫婦を哀れみの目で見ている。
「瀬戸君…」
亜子はそんな夫婦を見ながら、高瀬達の会話を聞いて、不謹慎だけど、瀬戸の事を思い出していた。
「そうだよね、せっかく楽しむ為に来たんだもんね…」
「亜子ちゃん?」
「彩ちゃん、私、瀬戸君探してくるね」
「え?亜子ちゃん?」
「どうした?緋山?」
新藤が隣での二人のやりとりに気づき、亜子を呼び止めた。
亜子は後ろを振り返り、話した。
「やっぱり、瀬戸君もいないとダメだよ!瀬戸君運転手で誘われたの?」
「いや、そんな事…」
「どうした?」
「高瀬…」
高瀬がその場に来た途端、亜子は高瀬を睨んだ。
「私…自分の為に他の人の事を考えないで行動する人は嫌い!」
「え?」
亜子はその言葉を残し走り出した。
高瀬はいきなりのフラれ方にビックリしてしまいその場から動けなかった。
イルカショー会場から出ると、トイレから出てきた菅原とぶつかりそうになった。
「あ、すいません」
「あ、こちらこそ…あれ?緋山さん?どうかした?」
「あ、ごめん。やっぱり、瀬戸君探してくる」
「そっか、そうだよね。皆んなで来たんだし。緋山さん、ごめん。瀬戸をよろしくね」
「うん」
そう言うと亜子はまた走り出した。
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そろそろイルカショーが始まる時間になろうとしていたが、俺はまだ医務室の前にいた。
放送で彼女の家族の人が呼ばれてる声は聞こえた。でも、まだ到着していないみたいだ。
静かだ。
皆んな、楽しんでるんだろうなぁ…。
まぁ、一人で見た所で何が楽しいのかはわからないが…俺も意地張らないで皆んなと居れば良かったな。
一人で考えてると、足音が聞こえてきた。急いで来てるようだ。
朝、駐車場で岡山ナンバーのレガシィから降りてきた夫婦だ。と言うことは、倒れたのはその時一緒にいた娘さん?
その夫婦は息切れをしていた。
「あの!娘は!?」
「娘はどこですか!?」
夫婦は血相を変えた顔で俺に詰め寄ってくる。
「あの、すいません。落ち着いて下さい」
「あ、すいません…取り乱してしまって…」
「…娘さんは今医務室の中で見てもらってます。とりあえず、意識は大丈夫みたいなんで…」
「そ、そうですか」
夫婦は大丈夫だと聞いて、少しは安心したみたいだった。
廊下が騒がしかったせいか、医務室から先生が出てきた。
「あ、もしかして乙倉由美さんのご家族の方で?」
「あ、はい。父と母です」
「そうですか、じゃあ中へどうぞ」
老夫婦は中へと入っていった。
これで、やっと解放されるのかな。
家族も来たし、安心だと思い医務室から離れた。
5
館内に戻ると医務室側とは違い、水族館らしくガヤガヤとにぎわっていた。
目の前を子供達が走っていく、その後ろを『こら!走るな!ぶつかったらどうするの!』と言いながら大人が追いかけている。
カップルが水槽の魚を見ながら彼氏がウンチクを自慢げに話している。
そんな水族館の中を瀬戸は一人歩いていた。
「なんか、むなしいな」
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