君がいない未来

Maaa

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一章〜出会い〜

水族館へ

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1
去年の話だ。

四月の夜、仕事場の自分のデスクで仕事をしていた。

仕事は、施設で献立を作ったり、入所者に対する栄養状態の管理。いわゆる栄養士という職業だ。

朝八時から夕方五時までの八時間労働。大変だけど、それなりに充実していた。

俺は、少し休もうと窓を見た。

そこには大きな桜の木がある。
その桜の木を時々眺めて考え事をしていたりする。

もう二十五歳だというのに、結婚のけの字も出てこないくらい仕事一筋だ。

べつにモテなかったわけでもない、だからといってモテたわけでもない。

普通だ。いたって普通に恋愛してきたつもりだ。

でも最近は、出会いなんてあったもんじゃない。

朝起きて、仕事行って、ジムに行って、寝るの繰り返し…

まぁ、ジムに行けばそこで知り合った人達と出会いがあるが、皆んな体を動かしにきているからそんな出会いはまれだ。

また桜の木に目を向ける。

「そういえば、そろそろ桜祭りの季節だな」

そんな事を思いながら、帰りの支度して外に出た。

外は春だというのにまだ肌寒い。

青森の春は遅い、四月下旬から五月上旬にかけて桜の花が咲く。

卒業式なんて桜じゃなく、雪だ。

道路には桜の花びらが斑点模様のように落ちていた。

2

家に着いたのは何時だろう。夕方四時には暗くなる冬に比べ、外はまだ明るいから時間感覚がおかしい。

時計を見るとまだ六時だった。

部屋に明かりをつけると、昨日読んだ車雑誌が開かれたままテーブルの上に広げてあり、朝急いで出て行った形跡を残していて、いつもの景色が広がっている。

カバンを部屋の脇に置くと、台所に行き鍋に水を入れ、テーブルの上の雑誌を片付け、テレビをつけてからお湯が沸くのをまった。

お湯が沸き、楽しみにしてた「味噌カレー牛乳ラーメン」のカップラーメンに注いで5分…蓋を開けようとしたと同時に携帯が鳴った。
小佐田高瀬からだった。いつもタイミングが悪い。と思いながら電話にでた。

「瀬戸!お前にいい話がある!」
「なんだよ?うるさいな」
「日曜日暇か?皆んなで水族館会行かない?」
「日曜?日曜って明日!?てか、なんで水族館なんだよ?今、夏じゃないぞ?春だよ?春!?」
「いや、たまにはさ。皆んなで出かけたいなぁ…って。あと瀬戸だけなんだよな」
「水族館に?ん~どうしよっかなぁ…」
「頼む!そこをなんとか…」

なんだかんだ言って結局行くと言ってしまう。まぁ、行ったら行ったで結構楽しいとは思うんだけど…。

高瀬は世間話を少しすると喜んで電話を切った。

そして、のびてしまった楽しみの「味噌カレー牛乳ラーメン」を完食してジムに向かった。

3

約束の日になった。

昨日、電話があって昼に弘前駅前にある『りんごの風』と書かれたりんごを持った若い男女の像が待ち合わせ場所だからと連絡があった。

今日のいつものメンバーは専門学校の時からの友達、小佐田高瀬、新藤大紀、菅原和志に、女性が小野寺勝子、曽田彩に、函館の専門学校に通っていた緋山亜子の七人だ。

高瀬はおっちょこちょいだし、やることが空回りしたりするが、友達思いだし、恋愛に関しちゃすごいアドバイスしてくれる。

新藤は、少し俺と似てるかな?違うと言えば、なんでもソツなくこなす。でも、おれと二人だとかなりマイペースだ。

菅原は、一言で言うと真面目なスポーツマン。細身の長身で縁の下の力持ちって感じかな?いつもは控えめだけど、男三人がふざけててもコイツはヤル男だ。俺達には丁度いいストッパー役になっている。

小野寺勝子、コイツとは高校から一緒。だけど、高校の時はクラスも違うし、話した事もなかった。

専門学校で話してみて、同じ高校だからかすぐに仲良くなった。いい感じにまでいったのに、俺の優柔不断と…まぁ、色々あり、少し前までは疎遠だったが、ふとしたきっかけでまた遊ぶようになった。

周りの空気を読み、一番常識人?
曽田彩は、この中で一番扱いが難しい。気まぐれな猫娘だ。

新藤はよく振り回されているが、よくやっているなと感心してしまう。
新藤の適当な感じがいいのかもしれない。

そして、緋山亜子は十年前に栄養士の合同の集まりがあった時に出会った。

まだ二十歳の頃だ。同じグループだったから自然と仲良くなり、今に至る。

緋山もクールビューティって感じがするが、心配性で、いつも気にかけてくれる。

なんて考えながら、俺はまだベットから起きれないままだ。

今更になって面倒になってきた。

それでも重い腰を上げ、支度をした。

支度と言っても、そんなたいした支度などなく、顔を洗い、歯を磨き、髭を剃る。

そして、いつものカジュアルな服装に着替えるだけだ。

約束の場所に時間より少し早く着いた。
まだ、誰も来ていない。

待ち合わせの時間になった。高瀬もまだ来ていない。

「また遅刻か?」

小言を言っていると、道路の向こう側から俺の名前を呼ぶ声がする。

顔を上げると高瀬が笑顔で手を振っている。

なんか、デートの待ち合わせに来た彼女みたいな登場だ。

なんて考えてると、ちょっと気持ち悪くなり少し目をそらした。

高瀬は気にする事なく手を振って走ってくる。

そこに車がきてひかれそうになる。

「何やってんだ!!危ないだろ!!」

車の運転手に怒られて、ヘコヘコ謝っている。

それでも、そのあとは何もなかったかのように手を振って走ってくる。

なんか…高瀬一人だと心配になってズルズル友達やってるような気がする。

お人好しなのかな?と自分で思う。気のせいかもしれないが、高瀬と一緒だとそんな錯覚を見てしまうのかもしれない。

なんて考えてると高瀬が俺の前まで来ていた。

「なんで手を振ってんのに反応しないだよ!おかげで車にひかれる所だっただろ!」
「それ、自業自得…」
「でもな…」

俺は高瀬の話をさえぎり、話を進めた。

「てか、皆んなはまだ来ないの?」
「いや、もう少しで着くって連絡あったんだけど…着てない?」
「いや、着てないよ?」
「遅刻か」
「・・・」
「・・・」

なぜか無言。

「おい!」
「なに?ビックリするなぁ」
「いや、遅刻か…じゃねぇよ!連絡してみるとかあるだろ?」
「人使い荒いなぁ」
「いや、お前が幹事なんだからお前から連絡しないとダメだろ?」

時計を見るともう結構な時間待ってる。高瀬が電話を取り出し、誰かに電話をかけた。

高瀬は時間にルーズすぎるんだよなぁ。

まるでコントだよ。売れない芸人って感じ。

高瀬が電話していると、誰かがでたみたいだ。

「もしもし?新藤?今どこ?」
「・・・あ、そう。わかった。もう少しな」
「了解。待ってまぁす」

高瀬は電話を切ると、俺の方を振り返った。

「今来るって」

それだけ言うと、また黙りこんだ。

高瀬といても、この無言の時間は苦ではないから楽だ。気にしなくてすむ。だって、無言が気になる相手は疲れる。

まぁ、初対面で無言が苦にならない人なんていないだろうけど。

なんて考え事をしていたら「おーい!」と手を振って男…いや、女もいた。

男女五人だ。

「ごめん、遅くなった。かなり待った?」

菅原が申し訳なさそうに謝ってきた。まぁ、仕方ない。

左から男性が二人、女性が三人の順だ。

左から新藤大紀、管原和志、次の小さいセミロングの子が小野寺加津子、次の小さいショートが曽田彩。ロングストレートの人が緋山亜子。

そう、この男二人と女が三人、俺と高瀬の友達だ。

亜子以外は皆んな専門学校時代の友達なんだけど、亜子は俺が皆んなに紹介してグループにいれてもらった。

最初は皆んなよそよそしかったが、今ではもう昔からの友達のように仲が良い。

亜子は申し訳なさそうに、顔の前で手を合わせ謝った。

「ごめん!ごめんね?私がちょっと忘れ物しちゃって…ごめん」
「べ、別に…いいけどさ…」

俺は亜子に言われると弱い。なぜだろう?なんか、強く出れないんだよな。

高瀬はそれをわかって仕掛けてくるから、さらに腹がたつ。

これで全員。

「なぁ、高瀬」
「ん?」
「昨日も聞いたけど、なんで水族館なの?本当は何か企んでない?」
「は?何言ってんだよ!そんな、皆んなで水族館行こうってだけで、企んで俺になんの得があるんだよ!」
「…まぁ、それもそうか」

つい、高瀬がやる事には裏があるんじゃないかって思ってしまう。

いつも皆んなをあざむいて何かしらサプライズをしようとする。が、皆んなにはバレてるんだけど。いつも、引っかかってやってる。皆んな、優しい。

「とりあえず、遅れたのはごめん。でも、ここにずっといても仕方ないし、行こ?」

そう声かけたのは勝子だった。
さすが、皆んなのお母さん。

「そうだね。車有料のパーキングに止めてあるし、まずは車に行こ!」
「気になるのはそこかよ!」

新藤が彩にツッコミをいれた。この二人はいつも口論するわりに仲が良い。

喧嘩するほど仲が良いって言うしね。

皆んなで笑いながら車へと向かった。

楽しい1日が始まる。

4

あれから1時間後、車窓の先は青い海が広がっていた。

途中、トイレ休憩とかを挟みつつやっと海まで来た。

ちなみに、俺の車に乗ってるのは助手席に亜子、後部座席に新藤と彩が乗っていた。

高瀬と菅原は勝子の車に乗っていて、俺達より少し遅れている。

亜子が窓の外を見て感動してる。

「わぁ…海だよ!海ぃ!?瀬戸くん見て!」
「うん、見えてるよ。どうした?でも亜希、俺運転中」
「あ、そか。ごめん」

亜子はエヘッっとした顔で頭をかいた。

「瀬戸く~ん!亜子~!イチャつくな!」
「俺達いるの忘れてんじゃないよ!」

彩と新藤が俺たちを白い目で見てる。亜子もワザとらしく頭をかいてるし、何を見せつけたいんだよ。

チラッと後部座席を見ると新藤と彩が手繋いでる?

アレ?

「ていうお前ら何手握ってんだよ?」
「ん?あぁ、本当だぁ!やっぱり?そういう関係?」
「違うわ!偶然だよ!偶然!」

二人は慌てて手を離し、顔を赤らめた。

俺はしてやったりとはにかんだ。

5

昼前には水族館に着いた。五分遅れで高瀬達も到着した。

開館したばかりだからだろうか、ちらほら車が止まっているだけだ。

近くに停まっているレガシィを見たらナンバーが岡山ナンバーだ。

珍しい、岡山ナンバーなんて青森にいるとそう見るものじゃない。

わざわざ西日本から最北端の県に、どんな物好きだ?なんて考えてると、その車から中年の夫婦とその娘が降りてきた。

仲よさそうな家族だ。家族旅行だろうなぁ…と見ているとかすかに高瀬の声が聞こえた。

「おーい!瀬戸!なにしてんだよ!おいてくぞ!?」
「え?あ、おう!」

亜子が待ってくれてる。

「瀬戸くん?何かした?」
「ん?あ、いや…岡山ナンバー珍しいなぁと思ってさ。ちょっと降りてきた家族に見入っちゃったよ」
「岡山ナンバー?本当だ、珍しいね。でも、ボーっとしてるとおいてかれちゃうよ?」

亜子は瀬戸の手をつかんで、みんなの所まで走った。皆んなは受付の前で待っていた。
俺と亜子が行くと、受付を済ませ入館した。
ここの水族館なんて何年ぶりだろう。小学校の遠足以来じゃないか?昔は向かい側に遊園地があったが、今では廃墟になっていた。
何十年も来ないと変わっていくんだろうな。

高瀬が入り口付近で立ち止まり叫んだ。

「よーし!ここで提案だ!」

高瀬が大きい声をだしたら、受付のお姉さんが出てきた。

「お客様、館内はお静かにお願います」
「あ、すいません」

高瀬は頭をかきながら謝っている。やっぱりこうなんだよな。

「で、なんだよ?」
「ここで団体で行ってもしょうがない」
「それで?」
「ここで男女ペアで行こう!」
「はぁ!?バカ?」
「私と彩ちゃんと亜子ちゃん、新ちゃん、瀬戸くんに和くん、それにタカ、男一人多いじゃない?」

勝子がもっともな質問をする。

「え?それは、男一人でしょ?」
「はぁ?タカ、みんなでっていう集まりだったじゃん。一人になったら意味ないだろ!?」

俺は突っ込んでみたが、屁理屈を言い出した。

「みんなで来たじゃん」
「まぁ、でもいいよ。それはそれで楽しそうだし」

新藤は結構ノリ気なのか?いや、面倒くさいだけだろうな。

「みんなに任せるよ」

菅原はいつもこんな感じだ。こうなったらもうどうにもならない。高瀬の意見に従うしかない。不本意だけど。

「じゃあ、男女別でグーパーで決めよう」

みんな、なんだかんだ言って結構乗り気じゃないか。
こうして決まったのが、新藤と彩ペア、菅原と勝子ペア、高瀬と亜子ペアとなった。
つまり、俺はシングル。一人で見る水族館って虚しくないか?行く意味ある?

「よーし!決まったな!じゃあ、今回はこのペアで行く!悪いなぁ、瀬戸」
「何がだよ?」
「亜子ちゃん、もらっちゃって」

亜子は高瀬から一歩離れた。

「嘘だよ、嘘。二人の仲知ってるのにそんな事するわけないだろ?」
「ちょっと、高瀬くん!そんなんじゃないから!」
「あれ?嫌い?」
「嫌いじゃないけど」
「まったく、お互い素直じゃないな」
「うるせぇ」
「とりあえず、これで行くからな」

そう言うと、昼過ぎに水族館の入口に集合ということになって解散した。
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