【完結】堅物司書と溺愛魔術師様

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運命?の出会いは突然に

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 ――今日もいい天気だな。

 図書館の古紙とインクの香り、古びた木材の棚には窓から差し込む光の柱が照らされ、その間をキラキラと僅かな埃が舞う。
 この光景が一番大好きである。
 各々が頁をめくる紙ずれの音や、ペンが走る音は集中力を必然的に高め筆が進む。

 コンコンと机を叩く音が響き、集中が途切れ首を上げる。

「………………!!」

 驚き声も出ないが、それも仕方がない。
 なぜこの人がここにと疑問に思う。
 寧ろ叫ばなかったことを褒めて欲しい。

 逆光を背に見下ろす表情は陰になり分からずとも、その姿とローブの色を知らぬ者はこの国にはいない。

 この世で稀な七属性持ち、膨大な魔力と才能で史上初めて二十八歳の若さで魔術師団団長に上り詰め、ましてやデビュタントを済ませたばかりの少女から未亡人までと数多の女性と浮名を流す色男の美丈夫。

 ノア・グランヴェル――その人であった。

「君がロゼッタ?」
「……はっ、い……そうです」
「ファミリーネームは?」
「あー、ありません。平民出身です」
「……そうか、平民出身……」

 困惑気味の表情で目が伏せられると、憂いを帯び色気が溢れ出す。
 なぜ色気を出すのだとツッコミたくなるのを黙って押し殺す。
 存在自体が色気大魔王の如く、机に手をついて立っているだけなのにダラダラと色気が溢れている。

「あの……魔術師長殿が私にどのようなご用件でしょうか」

 恐る恐る聞くが帰ってきた言葉は

「ロゼッタ、魔術師長などと呼ばないでくれ。君には是非ノアと名前で呼んでもらいたい」
「……」

 ――こいつ何言ってんだ。

「ロゼッタは思ったことが顔に出るタイプなんだな。実に好ましい」

 うんうんと絶世の美丈夫が腕を組み一人納得し、未だ呆けているロゼッタをそのままに話を続けている。

 ――確かこの人三十二、三だったよな。しかし、魔術師にしてはいい体躯してるな。鍛えてるのか?やっぱり筋肉鍛えないと夜の方が大変なのかしら?瞳も青く綺麗で、睫毛長い。育毛剤か何か睫毛につけてんのかな?同じ黒髪なのに髪質が全然違う。どんなトリートメント使ってんだろ?こりゃ、モテるわなぁ。眼福眼福。

 思わず話など聞かず現実逃避をしてしまう。
 遠目からならば何度か見ていたし、姿絵も見たことはある。
 ただこんなに近くでご尊顔を眺められるなど露程にも思っていなかった。
 ウハウハの尊き眼福ここに極まりである。
 上背があり魔術師にはない騎士のような鍛えられた筋肉。
 髪は艶やかな黒髪を前髪だけ頬辺りまで伸ばし、後ろは短く切り揃えられ逞しい首筋が現れている。
 前髪から覗く深く青い瞳が、また彼を深淵の海を思わせる神秘的な雰囲気に引き立てていた。

 ――まさに目の保養、最高かよ♡

「……で、そろそろ戻ってきた? 俺の話、聞いて?」

 ノアの声が耳に入り、一気に現実に戻る。

「えっ! あっ! すいません!!」
「うん、素直なところも好ましい。だから、ロゼッタ、君に俺の依頼を受けて欲しい」

 ――声までイケメンてどんな属性。

「また変なこと考えてる?」
「え!いえ!!……依頼、ですか?」
「あぁ、そう『俺』個人の依頼」
「私がですか?補佐官や事務官ではなくて?」
「あぁ、君じゃないと無理だね」
「……それは異動ということですか?ちなみに依頼とはどのような?」
「異動はしなくていい。このまま司書としてで十分だ。依頼内容は、んー、とりあえず手始めに魔術書の解読から、かな」

 ――魔術師長持ち込みの魔術書!?少し興味あるけど…

「それって、私でなくてはダメなものですか?」
「もちろん君じゃなきゃダメなんだ」

 ――あれちょっときな臭くなってきた?面倒だなぁ。

「………………」
「もちろん報酬はたんまりと払おう」

 これでどうだ?とノアの指が二本たつ。

「通常依頼の二倍」

 司書は通常業務外で副職のように他の魔術師や魔女から業務を委託されることがある。
 司書の中でも得意不得意の専門分野があり薬の製薬や、魔術道具の開発など幅は広い。
 そしてその委託業務の報酬は個人のものとなり、金額ももちろん業務内容によって異なる。

 ――魔術書解読の委託。………二倍。

 脳内でシャランカシャンシャランカシャンと音が鳴り響く。

「………………っ!! ぜひよろしくお願いいたします!!」

 騎士団よろしく、素晴らしい敬礼を行うロゼッタ。

 そう、ロゼッタは――――――かなりの守銭奴であった。

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