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謎の執着
しおりを挟む「実績を認めて下さるのは有難いですが、申し訳なさすぎますっ!」
「俺がいいと言っているし、俺がしたくしていることだ。ロゼッタが気にすることは一㎜もない」
梃子でも譲らないと言いたげなノアに肩を落とし見つめる。
なぜここまで執着するか、疑問が拭えない。
少しずつ譲歩してもらうしかないのかと頭を傾げる。
「ん~、……そもそも魔術師長ってお仕事どうしてるんですか?お暇なんです?」
「そんなわけあるか!これでも魔術師団の団長だぞ。裁いても裁いても仕事が舞い込んでくる。思い出しただけで腹が立ってきた……くそ狸どもめ」
眉間に皺を寄せ肩を怒らせ辛辣に愚痴をこぼすノアだが、それでも色気が溢れている。
よく観察していると、その口元は僅かに上がっているのが見て取れた。
――きっと自分の仕事に誇りを持っているんだな。立派だな……少し見直したかも。
だからこそ、実力者の魔術師団団長と平民で平の図書司書との異色さにやはり人の目が気になり萎縮してしまう。
「なおさら周りに何を言われるか……」
「それこそ気にする必要なんて微塵もない。そもそもお前への評価は俺だけじゃない。ロゼッタも室長から聞いてるだろ?魔術院のセス・ベイリー卿、貴族院のウィリアム・リンドバーグ公爵閣下、王家のマテオ・シールズ殿下が諸手を挙げて絶賛してる。前回の評議会でこの三方がお前に太鼓判を押してるんだ。誰に臆することがある?」
「いや、そうなんですが……」
――それが問題なんだよぉ~!!
件の御三方が何を隠そう私の後見人であり義父であり師である、私の大恩人たちなのだ。
後見人は王弟殿下・陸軍将軍閣下のマテオ様で国境視察の際に私を孤児院から引き取ってくれた。
義父として現リンドバーグ公爵・海軍元帥閣下のウィリアム様を推薦してくださり、公爵家のバックアップのもと沢山の教養を身に付けさせていただいた。
そして師である前魔術師長セス様、幅広い専門的な知識を惜しげもなく教授してくださった。
血が繋がらない孤児を、彼らは心から愛してくれた。
私自身なりより知識をつけるのが楽しかったし、彼らに褒められることがことのほか嬉しかった。
ただ物心つく頃には、自分の出自や七属性・魔力持ちの“女”とゆう国の火種になり得る歪さに気付き、大好きな彼らに迷惑をかけぬよう、優しい彼らを困らせることがないようにと決意し身分を隠し生きてきたのだ。
「だから諦めて、俺に付き合え。図書館が嫌なら外で会えばいい。そもそも図書館だけじゃ時間が足りなかったしな……」
もう諦めの境地に近い。
あからさまに顔に出てしまっている気がする。
御三方との関係を気付かれぬよう生活してきて、もう一人要注意人物に執着されてしまったのだ。
何をどう回避するかなんて皆目見当もつかない。
古代魔術書を読み解く方が、いかに楽しくて簡単か。
「そういうことだ。これからは昼は共にしよう。決まりだ」
と私とは真逆の爽やかな笑顔で去っていった。
――ってか要件は!?
それから毎日昼食はノアと外で食べるようになり、しかも週に何日かは変わらずふらりと図書館に現れて依頼をする。
そんな部署をも超えた関係が気付けば季節が春から初夏に変わり始めて、しかも月に何度かは夕飯を共にする中になっていた。
冷静になれば、なんだこりゃ? と思うのだが、いかんせんノアとの会話が面白すぎるのだ。
知識欲が湧くというか、好奇心を擽るというか。
魔術の話もそうだが、最近はプライベートのことも少しずつ話すことが増えてきた。
その中でも彼の気遣いや優しさを感じるし、丁度良い距離をとってくれる。
話のテンポも合う。
最初の頃は流石浮名を流すチャラいプレーボーイなのかとも思ったが、あまりにも私に対するノアの印象がかけ離れていて年齢=恋愛歴なし、彼氏なしの私にとっては難解である。
それにまだ懸念していた被害はない。
本当、これっぽっちもない。
持ち物の一つや二つ無くなったり、路地裏に連れ込まれ罵倒されたりしたらどうしよう!などと考えていたが、何もない。
閑古鳥が鳴いている。
なので完全に流れに身を任せているのだ。
楽しいことは万歳である。
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