【完結】堅物司書と溺愛魔術師様

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悪意ある噂

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 好例のお茶会を終え数日後、私はいつもの日常を送っていた。

 大好きな蔵書に囲まれ、大好きな匂いに包まれ、筆を走らせる。
 カリカリと筆が走る音が不規則に聞こえ、それが癒しのBGMとなる。

 そんな中、影が差し、不意に声がかかる。

「貴方がロゼッタ? ……ふーん、普通ね」

 ――え? 誰だこの美人

 着ている服は支給される魔術師の通常のローブだが、一目でわかる貴族の令嬢であろう気品を持つ女性が机のすぐそばに立ち見下ろしていた。

「私はナザリー、魔術師団に所属してるわ。で、貴方がロゼッタで間違いないの?」
「あ、はい。初めまして」

 ――おぉ、これが噂の嫌がらせとか?ちょっとドキドキしてきた。しかし綺麗な人だな。どんなこと言われるんだろう。

 場にそぐわぬことを考えながら、一応挨拶を送る。

「貴方と師団長の噂を聞いたのよ。それを確かめたくて会いに来たの。教えてくださる?」
 ――きたきたきた!!
「はぁ、噂とはなんでしょう?」
 ――ドキドキ。この人はノアのことが好きなのかしら?だからもう会うなとか言われるのかな!?私、間女的な立場!?悪女!?悪女ってどんな態度取ればいいんだっけ!?
「…師団長は……貴方に魔力の補給を要望しているとか。貴方は魔力がザルだとか? それは女性もいけるのかしら」
「…………」
「…………」
「……はい?」――アホな声が出た。
 
 恐ろしすぎて詳しく聞きたくなかったが、詳しく聞いた。

 魔術師同士が行うことできる、親密な魔力補給方法がある。そう
 魔力は魔術師の血や体液に含まれ、魔力切れは魔術師にとっては死に直結する。
 その為、魔石やポーションを使い一定の魔力を保つことが定められている。
 ただ非常時、回復魔道具もなく魔力切れを起こした場合に有効となるのが
 いわゆる、キスよりである。

 ――んなアホな。

 ナザリー曰く、私は魔力量が膨大なことをいいことに、ノアを誑かし彼は私をエナジータンクとして寵愛していると噂されてるらしい。

 ――んなアホな! マテオ様の聞いた噂もこれか!!!

「ナザリーさん、そもそも今は平時で魔力切れを起こす程のことなんかあり得ません。粘膜接触で魔力補給なんて……みなさん猥本の見過ぎではありませんか。あ、あと恋愛対象は男性です。まだ初恋もしてない処女です」

 手を軽く挙げ、真実をアピールする。

「あら、それは失礼。しかし、そうよね……平時だしね……ただ貴方と会うようになってから師団長の素行がすこぶる良くなったから、少し噂を信じてしまったのよ。ごめんなさいね」

 最初の横柄なイメージとは違い、ただはっきりした性格なのだろうと改めた。

「あれ? 何してるんだナザリー」
「あぁ、師団長。お疲れ様です。噂が気になり真相を本人に聞きに来たんですの。やはり直接聞くのが一番ですわね。スッキリしました。ロゼッタ、時間をいただきましたわ。ではご機嫌よう」

 ――後ろ姿も、あの金髪も本当綺麗な子だなぁ。

 感心してナザリーの後ろ姿を見つめていると、なぜかすごく眉間に皺を寄せたノアが見下ろしていた。

「もう、終業だろ? 夕飯行くぞ。あとナザリーに言われたこと一言一句報告しろ」…と機嫌が悪い。
 確かに時計を見ると終業時間は過ぎていた。
 話を聞いている間にお腹も空いてきたので、帰り支度を済ませ歩きながら先ほどの噂の件をノアに伝えた。

 いつもの行きつけの飲み屋で、いつも通りの食事やお酒を たしなんでいる。

 ――なんかこの流れが当たり前になってきたな。

 ノアとの交流が当たり前になり、気兼ねなく話ができる。
 しかも、私の好きな知識欲や探求心を刺激してくれる。
 ノアと出会ってから、この上なく充実し贅沢な日々を送っている自覚がある。
 お酒の力もあり、噂話の衝撃は何処へやら気分が上がってきた。
 心も体もポカポカのルンルンだ。少し体が揺れてるのはご愛嬌である。
 ふと彼を見るといつにない真剣な眼差しで見ている。
 なんだろうと首を傾げる。



「その噂、事実にしないか?」



「……………………は?」



 ――こいつ何言ってんの。

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