森野探偵事務所物語~1~

巳狐斗

文字の大きさ
26 / 62
第19話 覚悟

第19話 覚悟

しおりを挟む

「だから!!僕は彼女の婚約者だぞ!?なんで容疑者にされなきゃダメなんだ!?」

藤沢俊輔が、稲垣に向かって噛み付くように怒鳴りつけた。

「お前の部屋を調べたところ、新野紗弥の隠し撮りらしきものが見つかった。それは、お前がストーカーしていたという証拠だろう!」


「それは違う!た、確かに………寝顔が可愛くてこっそり撮ったかもしれないが、本当にそれだけだ!!第1!!遺書は結局偽物だったんだろう!?なら、渚が犯人じゃないか!!」

彼は、ダン!ダン!と、ひっきりなしにテーブルを叩きつけながら無罪を主張していた。ひっきりなしに渚が悪いと言うが、そんな証拠もなく、一人一人の証言を聞くしか出来ない。









「私が疑われても仕方ないのは、自分でもよくわかってます……。」


「…というと?」


稲垣が片眉をあげる。


「……私、親友でありながら……紗弥に嫉妬してたんです……。行けないと思いながら……成功していく沙弥が羨ましくて羨ましくて………最低とか………親友失格と知りながら…………嫌がらせをしていたんです…………。ストーカーに……あってると…思われるように………。」



途切れ途切れに渚は白状し、最終的には顔を手でおおって泣き出してしまった。
 







3人目の男は黙秘をしていた。




「……前田ひとし……だな?」


「……………。」


「聞いてるのか?」



笠村の問いかけに男は何も言わずに俯いたままであった。




黒い髪の毛に黒縁の眼鏡をかけた男は、ムッスリとしていて少し強面のようにも見える。


「彼は…?」


藍里が稲垣に耳打ちする。


「前田ひとし。29歳。職業はサラリーマンで、数週間前に新野紗弥のストーカー容疑で逮捕されていたんだ。証拠もほら。この通り。」


そう言って稲垣が写真を見せる。
どの写真も新野紗弥の物で、いつ撮ったのかわからないような写真が多かった。



ご飯を食べている写真。





こちらを向いている姿。





思わず寝入ってしまった写真。 
 


ベッドの中で眠ってる写真。




また、体をタオル巻きの姿で浴室にいる姿やタオルで前を隠している姿…………ブラジャーをつけている最中の写真まで………。



 どれも、カメラ目線ではないことと




こんなに生活感のある様子から、盗撮であることはすぐに分かる。


「けど、本人は知らないの一点張りなんだ。これだけの写真が家の中から見つかったにも関わらずにだ。」


稲垣がやれやれと言いながら写真を封筒の中に入れる。
入れた直後だ。

「だから何度言ったらわかるんですか!!!?息子はストーカーなどしない!!!親である私がいちばんよく分かるんです!!」



そんな怒鳴り声が聞こえてきて、藍里は思わず体を震わせる。


「あぁ~…前田ひとしの父親だな……。親として、自分の息子がストーカー、殺人なんて信じ難いのもわかるけどね……。」



稲垣が苦笑いをしながら取調室の扉を開ける。


「笠村。悪いが続けていてくれないか?少し、前田の父親の対応をしてくる。」


稲垣のその言葉に笠村の『分かりました。』という声が聞こえてきた。



(今の声………。)



聞き覚えがある。
怒鳴り声だから少し違うかもしれないが……。


藍里は稲垣の後をついてその父親がいるところに向かう。







声がするところに向かうと、1人の警察官が年配の男の対応にオロオロとしていたが、稲垣の姿を見つけると、「助け舟が来た!」と言わんばかりに笑顔になり、


「あ!稲垣警部!」

と叫んだ。

「警部さん!?調度いい!!なんとか ひとし と話をさせてください!!そうしたら何かわかるかもしれません!!」


前田の父親が、噛み付くように稲垣に叫び、稲垣が『まぁまぁ。』と手で諭す。

その後ろからひょこっ!と藍里が顔を覗かせる。

そんな藍里を見た男は、目をぱちくりさせる。



「ん?あれ?君は………あの時………。」



「…………晴臣さん…………でしたっけ?神父さんの…被害者の遺体があった教会の責任者さんの………。ひとしの父親って、この方だったんですね。」


「そうだよ。藍里ちゃん。そっか。前田ひとしは、君は知らなかったっけ。」


藍里。
その名前を聞いた晴臣は『藍里……?』と呟いた後になにか思い出したようにハッ!と顔を上げる。




「も、もしかして君は、女子大生探偵……………藍色の探偵と言われてる、森野藍里…………!?」



「あー…………はい。ソウデス………。」




その言葉を聞いて視線を泳がせる藍里。『女子大生探偵』『藍色の探偵』と声をかけられるのが増えてきたから珍しくはないものの、いざ言われるとなかなか慣れないものである。


「ああ!森野さん!どうかお願いです!息子の無罪を証明してください!!アイツは!ひとしは、いい子なんです!そんな、ストーカーみたいなことなんかしないんです!お願いします!お願いします…!」



と、晴臣は地面に額をぶつけるほどの勢いで土下座をして何度も藍里に頭を下げた。



「は…!晴臣さん!落ち着いて…!分かりましたから…!」


「お願いします…!」





押されて思わず依頼を受けた藍里は何度も振り返りながら頭を下げて立ち去る晴臣を見送ってから『はぁ~~~…。』と盛大にため息をついた。

「藍里ちゃん………結構押しに弱いところあるよね……。」


稲垣は、眉を下げながらそう呟いた後、「使うかい?」と付け足しながら手に持っていた封筒を藍里に差し出す。




「アリガトウゴザイマス…。」




と言って受け取った藍里の顔は文字通り死んでいた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...