27 / 62
第19話 覚悟
第19話 覚悟
しおりを挟む警察署を出て、藍里は真っ直ぐに家へと向かって歩いていた。
「はぁ。まいったなぁ。新野紗弥の殺害の件もまだなのに……。」
とは言え、新野紗弥は偶然居合わせただけと言った方が正しいが、藍里にとっては気になって仕方ないのだ。
封筒をカバンの中に入れて、ピタリと動きを止めて振り返る。
「……。」
ところが、そこには誰もいなかった…。
かに見えた。
チラリとカーブミラーに目線をやると、丁度藍里の視界からは入らないような電柱の裏側に、誰かがこちらの様子を伺っているのがわかった。
遠目からでわからなかったが、何となく女性であることが分かる。
「…………気のせいかー。」
藍里はあえて大きな声でそう呟いてから、再び帰路につく。
そして、スマホを弄るふりをして内蔵カメラで後ろを確認してみる。
……………案の定。
その人物は物陰にコソコソと隠れながら、藍里のあとをついてきていた…………。
藍里は、何食わぬ顔でコンビニの中に入る。
「いらっしゃいま………あれ?森野さん?」
店員が目をぱちくりさせて藍里を見る。そう。このコンビニは、藍里のバイト先でもあったのだ。
「楠野(くすの)さん。ごめん!実は、知らない人につけられてて…………裏口から出してもらえないかな…!?」
手で「お願い」とポーズをとって楠野と呼んだ店員に頼み込んだ藍里に、彼女は胸を張って
「まっかせなさい!」
と答えた。
楠野の協力の甲斐があって、藍里は謎の人物からの追跡を逃れることに成功して、テーブルの上に写真を広げ始めた。
「にしても、ほんとに沢山写真撮ったね~……。うわ。こんな写真まで。」
藍里はテーブルに広げた写真を見ながら呟いた。
見れば見るほど、生活みのある写真ばかりで、中にはタオル巻きの姿で部屋の中をウロウロしているような写真もある。
「まぁ、こんなのが部屋の中にあったら普通にストーカーだって疑うよな。」
一枚の写真を取りながら藍里は呟いた。
ベッドの上で無防備にパジャマのボタンを2つほど外して寝ている新野紗弥が、すやすやと眠っていて、ツヤツヤした唇がとても魅力的である。
(なんの変哲のない写真。…………と言いたいところなんだけど、なんだろう?なんか違和感がある………。)
なにか?と聞かれてもわからないが、何かが引っかかるのだ。
藍里はよし!と意気込むとその写真をまとめてそれぞれの生活の順番に並べてみた。
食事の写真
寝ている写真
着替えている写真
入浴時の写真
掃除の時の写真
大まかに分けるとそんなふうになっていて、藍里は『ウーン』と唸っていた。
(甘かったかな?分けたらなにか掴めるかも?と思ったけど………それにしても……アイドルっていうのはやっぱり小綺麗な顔してるな…………羨ましいわ………。)
「おじゃましまーす!藍ちゃんいる!?」
そんなことを考えていた直後、陽菜が勢いよく中に入ってきた。
「あ。陽菜…………と、その人は?」
そこまで言って、藍里は言葉を切った。
聞いたところで………その人物に既に心当たりがあったのだ。
「藍ちゃん。あのね、この人………。」
「あなたは………私のあとをつけてたね。さっき。」
陽菜の言葉を遮って藍里はその人物に尋ねた。
「そうなの?けど、さっき玄関の前でチャイム鳴らそうかどうか悩んでたし、きっと、何かの依頼なんじゃないかな?」
陽菜の言葉に押されてか、茶色の短髪の女性は、落ち着きなく手を動かしながら
「ごめんなさい。実は…………その、前田ひとしさんの無罪を頼まれたのではないかな?と思って……。晴臣さん………彼の父親に。けど、話しかけるのが何となく勇気が出なくて………。」
と、一つ一つ吐き出すかのように答えた。
「前田ひとし…晴臣……あなた、その親子を知ってる方なんですか?」
思わぬ言葉に目を見開いた藍里。彼女はゆっくりと頭を下げると
「私は、磯谷 由花子(いそがい ゆかこ)……前田ひとしの恋人です…。」
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる