森野探偵事務所物語~1~

巳狐斗

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第23話 写真に埋もれた死体

第23話 写真に埋もれた死体

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麻美子は逮捕され、真己人も嘘の供述、また隠蔽しようとしたことにより、署に連行された。



一樹と真己人は親友だったのに、親友を奪っためぐみに復讐する程の勇気がなかなかもてず、ただ指を加えてみることしか出来なかった。しかし、麻美子はやってくれた。

麻美子は、全てを覚悟の上で犯行に及んだ。麻美子だけに、罪を被せる訳には行かないと思ってのことだった。



と供述。







「ま。仲が良すぎるのも考えものってことかな?というか、その小野原ってやつもえげつねぇな。」


哲也がそこまで話を聞いてポツリと答えた。
大学のホールでは、講義がない学生たちが集い、暇を持て余していた。藍里達もその中のグループの1つである。



「でも、確かにそういうのって悲しいよね。自分が手間隙かけて完成させた物を奪ったりそのまま貰おうってするの。」



陽菜が、ふぅ。と息をつきながらそう答えた直後、藍里達が座っている椅子の後ろから、甲高い声が聞こえてきた。







「まじ!?それ作ったの!?」


「うん……ハンドメイドアプリで売ろうと思って……。」


「えー!なら、私に頂戴!」


「あ、あげるのはちょっと……お金かかるけどいいかな……。」

「えー!?いいじゃん!友達なんだから!!タダにしてよ!あ!ついでにさ!彼氏とオソロのも作って!タダで!!!」

「えぇ……。」







「図々しいにも程があるでしょ…。」


それを聞いていた藍里は顔をひきつらせながら呟いた。しばらく様子を見ていると、別の2人がその2人の元にやってきていた。どうやら、友人らしい。




「ねー!きいてよ!優子ったら、この作品をハンドメイドアプリに展示するって言って!これ欲しいならお金払えって!!友達からお金取ろうとするんだよ!ありえなく無い!?」

タダでくれと言った女性は、頼んだ相手、優子を指さしてそう大声で言った。


話を聞いた2人は、顔を見合わせるとため息をついてその女性に向かって言葉を投げかけた。


「あのさぁ。咲希(さき)。優子は自分の作品を気に入ってくれる人の為になるならって言うことで、わざわざ自分から裁縫店に行って買って作って売ってるんだよ?
しかも、寝る間も惜しんで。

それを何?友達だからタダにしろって図々しすぎるでしょ。」

「優子の苦労も知らないで……酷いね。咲希って……。」


2人からそんな言葉を貰うと思わなかったのか、咲希と呼ばれた人物は目を見開いて呆然と立ち尽くしていた。

「悪いけど、そんな人とは関わりたくないから行くね?」

「優子。もう行こう?」

そう吐き捨てた2人は、優子を連れてどこかに行ってしまい、その後を慌てて咲希がなにかを言いながら追いかけていた。






「……小野原めぐみは、手柄を横取りしたことで恨みを買ってしまって……あの人は得だけをしようとして、信用を失ってしまった………。

『タダより怖いものは無い』って、このことなのかもしれないね……。」



陽菜が苦笑いを浮かべながらそう言うと、藍里も『そうだね。』と、同じように苦笑いをうかべた。







その直後だ。藍里のスマホが鳴り響いたかと思うと、液晶画面に『笠村』という文字が浮かび上がっていた。




「笠村さん?どうしたんだろ?………もしもし?」



『あー。今いいか?』


笠村の、確認するような言葉に二つ返事でかえす。



『小山内麻美子がお前にどうしても伝えなきゃならねぇ事があるらしい。署に来れそうか?』


「伝えること?わかりました!夕方に伺いますね!」

『頼む。』

電話を切った直後、先程までダンベルで筋トレしていた聖人が、手を止めてニヤニヤしながら藍里を見ると、

「また笠村か?なんだよ、最近やたら呼び出されるじゃねぇか。」

とからかうと、それに続いて身を乗り出したのは陽菜も、目をキラキラと輝かせていた。

「なになに!?なんかいい感じ!?今度詳しく教えて!」

「事件関係で呼び出されることが多いってだけだって!」


そう言って慌てて手を振る藍里。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


面会室に通された藍里。
そこには、既に麻美子が座っていた。


「ごめんなさい。森野さんに伝えなきゃならないことがあって呼んだの。」



「なんでしょう?」





藍里の言葉に、麻美子はすぐに


「私が めぐみ を殺した理由。」

と答えた。



「ん?恋人の仇……ですよね?」


「うん。けど、犯行に及ぶきっかけになったことがあってさ……。」


「きっかけ?」


「言い訳しちゃうけど、ある人に言われたの……。ホントに愛していたのなら、そんなやつを許せるのかって……。その人も、似たような目にあってきたから、悔しい気持ちはわかるって言ってて、親身になって聞いてくれてたから……。今思えば、ちょっとした洗脳みたいな感じだったかも……?」

「だれに?」


「なんか、60位のおじいさんだったよ。名前は、『大嶋』とか言ってた。あと………なんだっけ………なんか、動物の名前があったのは覚えてる………。さ……さ………さ……なんとか…………あれ。象って英語でなんだっけ…。」



首を傾げた藍里だったが、『象』という言葉でハッとした……。







「サーカス オブ エレファント……。」





「そう!それ!!知ってるの?」




麻美子の質問に言葉を濁しつつも頷いた藍里。そして、さらに麻美子は続けた。



「その人が言ってたの……この女……つまり、私はまだ序の口だ……って……。」



「序の口…?」



「分からないけど、その人がそう言ってたの。
もしも自分が探偵によって捕まったら、その事を伝えろって……。」




「………他には…?」




「言ってなかったかな?でも、森野さん。気をつけて?犯行に及んだ私もいけないんだけど、あの人………かなり危ないよ。」




「わかりました。情報ありがとうございます。」

「そうだ!これ。よかったらお守りの代わりにして?刑事さん経由で渡しておくから!」

そう言った麻美子は、手首に填めていたブレスレットをしめした。


それを見た藍里は、一つだけ頷くとそのまま会釈をする。麻美子もつられて会釈をすると、踵を返してそのまま面会室から出ていった。




署から出た藍里は『ふーっ。』と息を吐くとぼんやりと考え込んだ。




(サーカス オブ エレファント………まさか、関係ない麻美子さんまで利用するなんて……けど、どうしてこんな事件を起こさせてまで…私にそんなことを伝えるように言ったんだ?)





うーんと考え込むが、これといって心当たりはない。


麻美子さんが実はあのメンバーの1人だった……とも考えたが、口調からしてそれはないとすぐに思われる。





「あ。そういえば。」




と、藍里はふと思い出した。




あの少女のことだ。
あの時、めぐみと遭遇してそれどころではなかったが、今なら調べられる。




藍里はそう切り替えると、スタスタと帰路に着いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


サーカス  オブ  エレファント。


その4人がとある部屋の一室に集まっていた。

色気のある女性は人の内蔵に関する本を読み、

緑髪の少女は、まるで人間であるかのようなロボットにジュースを持ってくるように命じ、

年配の男は、老眼鏡をかけて本を熟読していた。

そんな中、だらしなくソファに寝そべっている金髪の若者がスマホをいじりながら口を開く。



「なーなー。ジーさん。教えてくれよ。なんであのカメラマンの子に事件起こさせること出来たわけ?あんな子絶対に芯を曲げなさそうなのにさ!」



呼ばれた年配の男は、本から目を離さず、口だけを動かした。



「マインドコントロール。聞いたことはあるだろう。」



「あー、洗脳ってやつだっけ?なに!?ジーさん出来るの!?」



男はケラケラと笑いながらそう言うと、年配の男はやっと本から目を離すと

「洗脳は誰にでも可能だ。CMでも、似たようなところはある。」


「へー?なら、そのやり方さえ分かっちまえば、俺でも出来んの?」


「出来んことは無いが、月岡。お前はどうせくだらんことに使うだろうから教えん。知りたければ自分で調べろ。」


「ちぇー。なんだよ。教えてくれたっていいのにさー!それに、くだらない事しねぇよ。女の子をちょこっと落とすだけ。」

唇を尖らせてそう言った華音と呼ばれた男に、今度は緑髪の少女が口を開く。


「それがくだらないってことだよ。ね?大嶋さん?」

少女は、大島と呼んだ年配の男に確認するように聞く。


しかし、返ってきた声は、その4人の誰のものでもなかった。

「夕奏(ゆかな)の言うとうりだ。」


その言葉に、そこにいた誰もが目を開いて、声のする方を見た。
部屋の出入口に立っていたのは、彼らの長である、三笠晋悟がそこに立っていた。



「晋悟様。」


色気のある女性が、嬉しそうに声を上げる。

晋悟は、ゆっくりと歩くと、大嶋の前に立つ。





「あの女は警察に捕まった。お前に言われたとおり、藍里に伝えたそうだ。大嶋。」


「はっ。」


「出来るか?お前の得意なマインドコントロールで、青司の娘をうちに迎えることは……。」


「もちろんでございます。たとえ探偵といえど、人間。そうであれば、可能でございます。」


大嶋の言葉を聞いた晋悟は、クツリと口角を上げると、大嶋の方に手を置く。


「大嶋。これはチャンスだ。お前を蔑んできた奴らを。そして、手柄を横取りしてきた  ア イ ツ ら  に、自分の無能さを思い知らせる………絶好の………な。期待している。」

「期待している。」と共に彼の肩をポン!と叩いた晋悟は、そのまま奥の椅子に向かっていった。

目を見開いた大嶋は、奥歯を噛み締め、怒りに満ちた表情をして、


「はっ。必ず…!」

と、意を決したように口を開いた。




「晋悟様。本気なのですか?我々の意志をことごとく反対したという、青司の娘を仲間にするなんて……。」

女性が立ち上がって晋悟の側まで行くと体をくねらせるように、晋悟のデスクに手を着いて尋ねた。
男性なら、思わず赤くなってしまうような、妖艶な仕草。しかし、晋悟は一切顔色を変えず、


「決断は俺がする。口を挟むな。」


と共に、ギロり女性を睨みつけた。彼女は体をビクリと強ばらせると『失礼しました。』と言って頭を下げる。



「それに、大嶋もこれまでの鬱憤を晴らす為のまたとないチャンスだ。そのチャンスを与えただけだ。杏(あんず)。いずれお前にもそのチャンスをやる。今は自分の能力をじっくりと上げていろ。」




『杏』と呼ばれた女性は、眉間に皺を寄せると深深と頭を下げて

「精進致します。」

と答えた。







「あーあー。マジでこのメンツ……色んなジャンルでめっちゃ優秀なのに、ツレェ過去持ってるよなぁ。」


月岡は、ため息をつくとわざと涙ぐむ仕草をして見せた。


「それ、月岡さんもでしょ?」


夕奏がクスクスと笑いながらそう言うと月岡は、舌を出して『まぁな!』と答えた。








その様子を見ていた晋悟は、口角を上げると1人がけの椅子にどっかりと座って窓から外を覗き見た。







「藍里は……必ず手に入れる…。」




晋悟の、そんな言葉が静かに響いた。



















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