森野探偵事務所物語 ~2~

巳狐斗

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第1話 ホストクラブ

第1話 ホストクラブ

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(あの人が麗奈さんでなければ、色々と結びつくかも…!)



そう決めて、藍里は急いで帰路につき、ホストクラブパラダイスの前を通り過ぎようとしたその時だった……。







「マジ使えねー!!!」



という暴言が聞こえてきた。目を丸くしてキョロキョロと見渡すと、パラダイスの駐車場に続く道。その影に内田  崇の後ろ姿が見えた。


(内田さん………と………もう一人いる…………あの人は確か………タツルさん?)




2人は藍里が覗き込んでいることには気づかずに、黙々と話をしていた。

いや、話……と言うよりも、内田が一方的に話しているのだが。





「警察から証拠品返されてきたんだけどさぁ!お前何これ?」


「え……?」


「これ!!器!!うーつーわー!!玲子さんの時は、底の模様の色が青色のもの以外は使うなって俺教えただろーが!!!」


内田が暴言を吐きながら、持っている器を指で突き刺すかのように示した。それを指摘されたタツルは、ハッ!として目を見開くと


「すみません……。」

と頭を下げた。

「あのさぁ!お前2ヶ月じゃん!まともに客取れねぇし度々失敗するし……なんなん!おまえ!」


「すみません……。」


「『すみませぇん…。』じゃなくてさぁ、ちゃんとやってくんないとこっちが困んだけど!!?お前マジでゴミだな!」



そう吐き捨てると内田はタツルに乱暴に器を返すと、ドン!とわざと肩をぶつけてきて立ち去っていった。
残されたタツルは、その器を持ってため息をついていた。




「大丈夫ですか…?」


「え…?あ!探偵さん…!」


声をかけられたタツルは、ハッ!とすると罰が悪そうな顔で顔を逸らした。


「もしかして………見ちゃいましたか?すみません。お見苦しいところ……。」

「いやいや。あれは内田さんの言い方がキツイだけですよ。てか、どうしたんですか?」

「先程、警察から証拠品として押収されていた器を返してもらったんです。ほら。あのチョコレートソースが入っていた器。その器を見て、内田さんは注意をしていただけなんです。玲子さんは、底の模様の色が青色でないと気に食わない方なのですが………俺がうっかり、朱色のものを出してしまったんです。」


あれが注意……?

どう見ても八つ当たりかなんかしか見えなかったが、藍里は言えないでいた。


「俺、周りも見えないし、トロ臭いからどうしても内田さんを怒らせてしまうんです。いや、内田さんだけでなく、他のキャスト達もイライラさせてしまって……。」


「そうかな?周り見えてると思うよ?」


「え…?」


「私が内勤として潜入してた時、水くれたでしょ?あの時、喉乾いてたし、貰えた時すごく嬉しかったですよ?」


「あ、あの時か。いえ。大した事ないですよ。結局は、その程度だけですし。」

必死に作り笑いをしながら頭をかいたタツルは、「そろそろ戻りますね。」と言い残して、店の中へと入っていった。




「……どこにでもいるもんなんだね………。言い方キツイ人……。」



藍里はそう呟くと再び家への帰路に着いた。










「うーん………見直してみたはいいけど、やっぱり毒を入れた瞬間…ないなぁ……。」



それに、麻田麗奈と名乗っている女性は、玲子のことは全く目に入っていない様子で、担当と酒を楽しんでいた。



(完全に白とみていいか。)



藍里はそう考えると『ふぅ…』と一息つきながら伸びをする。
パタリと床に寝転がった所で、部屋全体が薄暗くなっているのに気づいた藍里は、壁にかけられた時計に目をやると時刻は19時30分をちょうど過ぎたところが、うっすらと見えた。


「あー………ご飯。なににしよ……。」


もう少し映像も見たいから、簡単に済ませられるものがいい。とか、ご飯まだあったかな?とか色々と思考をめぐらせながら藍里は立ち上がり、台所へと足を運んだ。






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