アルテアースの華 ~勇者召喚に巻き込まれ、適職が農民で子宝に恵まれるってどういうことですか?!~

暁 流天

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12.旅の道中。

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 レムリアさんと旅を初めて、色々と驚かされることの方が多かった。
 何か魔術師っぽいと思っていたけど、高位の精霊師だったらしくて、戦闘になると異常なほど強かった。

 それになぜか、勇者達と旅をしていた時に比べたら、強いモンスターばかりを見ている気がする。
 おそらくだけど、レムリアさんが強すぎて弱いモンスターが出てこないんだと思う。それで遭遇するモンスターが、強いのばかりになってしまったみたいだった。

 今もクマ型のモンスターでベアルホワイトとかいう3メートル級の強いレア種相手に余裕で戦っている。
 ベアルホワイトが攻撃しようとするたびに、指先から放たれる疾風でベアルホワイトは後ろに下がっていく。

「うわっ・・・・・・まるで子犬がじゃれているみたい」

 少し距離をとっているけど、周囲にはってある風の防御壁のお影で、余裕で眺めることができる。
 べアルホワイトがずいぶんと後ろに下がると、レムリアさんは軽く指をクルクル回した。指の動きに合わすように、ベアルホワイトの周りに強烈な風が吹き上げて竜巻になった。
 
 竜巻がベアルホワイトを巻き上げて空高くへと引き上げていく。やがてベアルホワイトは、地面に叩きつけられていた挙句に雷撃を受けて動かなくなった。
 完全に動かなくなったのを確認すると、こちらに歩み寄りながら風の防御癖を解いてくれた。

「天華さん、大丈夫でしたか?」
「ううん、見ていただけだから大丈夫。お疲れさま」

 小型のナイフを取り出して、絶命して動かなくなったべアルホワイトに近寄ると、慣れた手つきで皮を剥ぎ取った。
 手早く内臓を取り出すと、お肉も骨から外していって、解体していく。今晩の晩御飯は、美味しい熊鍋に決定と気分よく作業を進めた。

「相変わらず、素晴らしい手つきですね」
「ふふっ、ありがとう。今夜は美味しい熊鍋ね」

 お肉が痛まないうちに手早く下処理をして、今すぐ食べる量だけ分けておく。
 お水を大量に使ったけど、レムリアさんが精霊魔法で水を出してくれるから困らなかった。後はレムリアさんの精霊魔法で明日の分を凍らせて、残りは全部干し肉にしてもらう。

「じゃあ、これをよろしくお願いします」
「ええ、任せてください」

 レムリアさんに残りの肉を任せると、白い毛皮を袋に詰めて、小型の鍋を取り出した。調味料と香草は必需品だから、それも取り出す。後はレムリアさんを待つだけになった。

「お待たせしました」
「ありがとう」

 レムリアさんが大量の干し肉と、凍らせたお肉を持ってきたので、大量の干し肉も袋に名前と日付を書いて袋につめる。凍らせたお肉は特殊な紙に包んで、さらに分厚い袋に詰め込んだ。
 下処理の済んだお肉に調味料を染み込ませ鍋に入れて、レムリアさんの方を見た。

「お水、お願いします」
「はい、どうぞ」

 レムリアさんの掌の上に、水の玉が浮かび上がり、そのまま鍋に飛び込んで普通の水になる。
 火もレムリアさんが出してくれて、すぐに薪が燃え上がった。

「その精霊魔法、すごい便利ね」
「そうですね、役に立っているようで幸いです」
「勇者達といた頃は、火も水も自分で用意しないといけないし……水なんて持てる量が決まっていたから、どこか近くの川から汲んでいたっけ」
「魔法を使える方はいなかったのですか?」

 言われて思い出してみるけど、居なかった。まあ、目的が目的だから、攻撃系の魔法なんていらないのかもしれない。
 そういえば回復担当のプリーストの子は、ずいぶんと勇者のことを気に入ってたっけ。

「プリーストならいたけど……私のことを、あんまりよく思ってなかったみたいで」
「プリーストですか……」

 香り付けの香草を入れて、赤い色をしたプルーフの実を放り込んだ。
 プルーフの実は一口サイズだけど、じゃがいもに似ていて澱粉質だから一緒に煮込むとトロミが出て美味しい。
 この世界では焼いて食べるおやつだったらしいけど、食べてみたら味がじゃがいもだったので、煮込みに使っている。

「あれ、でもいったい誰が料理とかしているんだろう……野営の準備も、料理もしたことなさそうだったのに」
「……勇者がしているのでは?」
「まっさかー……あははっ。冗談が上手ですね……」

 思わず乾いた笑いが出るけど、ありえそうで笑えない。
 あの2人なら、神宮寺くんに押し付けかねないけど……うん、もう何も考えないようにしよう。

「レムリアさんは、ずっと1人で旅をしていたの?」
「私ですか?……そうですね、考えてみれば最初からずっと1人で旅をしていましたね」

 そういえばレムリアさんは、なんで旅をしているんだろうと疑問に思った。
 初めてあった頃に聞いたことがあったような気がするけど、雰囲気的にあまり聞けなかったっけ。

 こんなに外見は素晴らしいし、気品があって身分もかなり高そうだから、きっと寄ってくる女性も多かったはずだ。
 それにお金にも困ってなさそうで、何不自由ない人生をおくりそうなのに、本当に不思議だった。

「でも本当に、どうして旅を……」
「……自分自身の今後のことを考えて、その結果としか……」

 レムリアさんは、話し辛そうに視線を下げる。やっぱりこれ以上は、聞いてはダメなんだとなんとなく思ってしまう。
 鍋をかき混ぜると、美味しそうに煮込まれている熊肉とプルーフの実が見える。そろそろ食べ頃だから、器に熊スープを入れてレムリアさんに差し出した。

「はい、温かいうちにどうぞ」
「ありがとうございます」

 一口食べてみると、あっさりしたお肉にほんのり塩味が聞いて美味しい。
 とくに出汁染み込んだプルーフの実が、すごく美味しくてたまらない。
 今日も大満足の仕上がりで、思わず顔がほころぶ。

「これも、美味しいですよ。天華さんは本当に料理上手ですね」
「私が料理上手というか……素材が良かったのよ、きっと」
「いえ、私の時はこれほど美味しく仕上がりませんから……きっと天華さんの腕が良い証拠ですよ」
「そ、そうかしら……」

 すごく自信満々に言ってくれるから、だんだんと恥ずかしくなってくる。

「そうですよ。ぜひとも、毎日食べたいものです」
「え、そんなに長く旅はできないけど」

 レムリアさんは、なぜかピタリと動きを止めた。
 もしかして、何かおかしなことを言ったのかと思ってしまう。
 
 よくよくレムリアさんの言葉の意味を考えたら、あれ、これって毎朝味噌汁を飲みたいと言われてるんじゃあ、と気づいた。
 
 でもここは異世界だし、もしかして勘違いでもっと違う意味があったのかもしれないけど、解らないから考えるのを止めた。

「そういえば、そろそろ一週間が経つけど、もう半分位は進んだかしら?」
「あ、はい。そうですね……そういえばこの近くに、カンロ村という村があるはずですよ」
「カンロ村?」
「小さな村ですが、とても美味しいボンブルという果実酒を作っていることで有名な村ですね」

 そういえばこの世界に来てから、酒類はまだ飲んでないことに気づいた。
 別に酒好きってわけじゃないし、元の世界でもほとんど飲んでなかった。でもとても美味しいと言われると、少しだけ興味がわいた。

「果実酒かぁ……ちょっと飲んでみたいかも」
「そうですか。なら村に立ち寄りましょうか?おそらく明日には付く距離ですよ」
「うん、お願い」
「ええ、いいですよ」

 美味しく料理を食べ上げると、レムリアさんに水を大量に出してもらって後片付けを始める。
 その間、レムリアさんは寝床の準備を初めてくれるからすごく助かる。
 使った物を直すと、レムリアさんのところに向かった。
 
 レムリアさんは精霊魔法で風を起こして空中に巻き上げると、器用に細い木を円状に組み立てて、布で覆って簡易のテントを作っていた。
 テントの中の寝床のシート部分は、下に柔らかな葉っぱが敷き詰められていて、ふかふかに仕上げられていた。

「レムリアさん、テントありがとう」
「いえ、気になさらず。それよりも、明日に備えて休みましょうか」
「う、うん」

 いつもなら焚き火で温まりながら少し休憩をして、テントの中に入っていたけど、今日は言われるままテントに入った。

 テントの中で着ている上着を脱いで、繕い後が目立つ薄い服一枚になる。
 下はそのまま着ているし、薄いといっても大きめのロングTシャツだから大丈夫だけど。
 問題は、このあとだった。少ししてタイミングを図ったように薄着のレムリアさんが入ってきた。

「レムリアさん、少し寝るのが早いような気が……」
「そうですか?明日は少しでも早く出発できるように、早めに寝た方がいいかと思いまして……」
「そうだけど……うん、わかったわ。寝ましょう」

 大人しくシーツの上に寝転がると、寄り添うようにレムリアさんも横になる。
 2人で毛布に包まると、体温を分かち合うように眠る。
 
 暖かいし心地がいいけど、異性と寄り添って眠るなんて、恥ずかしさで心臓が変に煩くて仕方ない。距離を取ろうとすると、引き寄せられて抱きしめられるから、あんまり距離を取れない。

「そういえば、なんで引っ付いて寝ているんだっけ……」
「夜は冷え込むからですよ。こうやっていると暖かいでしょう?」
「そうだけど……」
「何か問題がありますか?」

 レムリアさんは不思議そうに聞いてくるけど、すごくある気がする。最初は何か襲われたりしないだろうかと、緊張してばっかりだったけど、全く手を出してこない。
 
 気がついたら抱きしめられたまま眠っていて、朝になると、とんでもなく綺麗な顔を見て起きるんだけど……朝から心臓に悪い。

 でも道中を守ってもらっているうえに、色々とお世話になってしまっているから、仕方ないと割り切って眠りについた。
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