20 / 33
19.不躾な遭遇者。
しおりを挟む
村から出て塗装された道を歩いていると、後ろから辻馬車が走り抜けていき、少し先で止まると、赤い髪の青年を降ろした。
青年が降りると、辻馬車は走り去った。
辻馬車から降りた赤い髪の青年は、こちらに向かって手を元気に振ってきた。
「お~い!レムリアだろ!俺だよ!俺!俺!」」
あまりにも俺俺言っているから、ふいに昔流行った詐欺を思い出した。
「……俺俺詐欺?」
「そうですね、詐欺の可能性もあります。無視しましょう」
レムリアさんは、道先にいる青年を避けるように来た道を戻り始めた。避けられたことに気づいた赤毛の青年は、慌てたように走ってくる。
赤い髪の青年は、走る速度が早くてすぐに追いついてきた。
「たっく、相変わらずつれないやつだなぁ」
「あなたも、相変わらずですね」
前に回り込まれると、さすがにレムリアさんも歩くのを止めた。
「で、そこのお嬢ちゃんは?」
「お嬢、ちゃん……?」
この歳でお嬢ちゃん扱いされて、自然と顔が引きつった。どう見ても、自分より若そうな人にお嬢ちゃん扱いは無い。
「貴方には関係ありませんよ。どうぞ、お一人で旅をしてください」
レムリアさんは、とても綺麗な笑みを浮かべて、これ以上は関わるなという雰囲気を出していた。
そんな雰囲気を気にすることもなく、赤毛の青年は機嫌良くレムリアさんに話しかける。
「レムリアたちが向かっているところは、アルテアースだろ?俺もそこに行くんだ」
「そうですか……」
レムリアさんは相手にしたくないらしくて、それ以上は何も聞かなかった。
それにしても、この赤い髪の青年は誰だろうと疑問に思う。
レムリアさんがここまで嫌がるのも珍しいなと思いつつ、レムリアさんに聞いてみることにした。
「あの、レムリアさん……この人は?」
「俺はクレス・ヴァルガンディ!レムリアの友人だよ」
友人にしては、すごく避けられているように見える。本当に友人かどうか怪しくて、ついレムリアさんを見てしまう。
「……友人というより、知り合いですね」
「ちょ、おいレムリア……ま、いいけどさ」
なんだかレムリアさんは、友人と認めたくないみたいだった。温度差がここまであるのも珍しいけど、きっと何かあったのかもしれない。
「ヴァルガンディさん?は、どうしてここに?」
「クレスでいいよ。ひと仕事終えて、アルテアースに戻るところなんだよ」
「え、じゃあ辻馬車ってアルテアースに向かってたの?」
「そうそう。で、辻馬車からレムリアを見かけたからさ、声をかけたってわけ」
それだと最初から馬車に乗っていれば、日にちをかけずにもっと早くアルテアースに着いてたってこと?
でもそれだと村に立ち寄って植物魔物の見学や種の回収なんてできなかったし、それよりも馬車代もタダじゃない。
宿代も出してもらっているのに、その上に馬車代まで出してもらうのは、さすがにダメだと思った。
「すみません、言い忘れてましたが・・・・・・私の旅の基本は徒歩です」
「ああ、たまにいるんだよ。旅を楽しみたいから徒歩で歩くやつ」
「そうなの?レムリアさん、気にしないで。レムリアさんにお世話になってるから、そこはレムリアさんのペースで」
「ありがとうございます、天華さん」
レムリアさんが嬉しそうに微笑んだのを見て、クレスさんは驚いたように目を見開いた。
「あー……なるほど。そういうことか」
「そういうことって?」」
クレスさんは何かに気づいたらしく、1人で納得していた。
「いんや、何もないよ。それよりお嬢ちゃんの名前、テンカって言うんだな……テンカ嬢ちゃんで」
「あのね、たぶん私の方が年上だから……お嬢ちゃんとか言わないでくれる?」
「は?年上って……もしかして、若作り?」
お嬢ちゃんや若作りや、失礼なことを言われて、さすがに苛立ってきた。なんとなくレムリアさんが避けていた原因がわかった気がする。
「失礼にも、程があるって知らないの?」
「天華さん、やっぱりここに置いていきましょう」
レムリアさんは自然と腰に手を回してきて引き寄せてくる。そのまま身を任せると、反転してアルテアースの方に向かって歩いた。
「ちょっと待ってくれよ!せっかく馬車を降りてきたっていうのに、そりゃないよ!」
慌てて追いかけてくるクレスさんを無視して歩いて行くけど、ほんの少し気の毒になってしまった。
足を止めて振り返ると、レムリアさんも仕方がないという雰囲気でクレスさんの方を見た。
「仕方ありませんね。アルテアースまでですよ」
「ああ、それでいいよ!俺もアルテアースに帰るところだし!」
「私、戦う力なんてないけど……ルテアースまで、よろしくね。クレスさん」
今のうちに正直に話して、ついでに挨拶もしておくと、屈託のない笑顔が返ってきた。
「ははっ、レムリアがいれば、テンカさん抜きでも余裕だろう?いや、むしろ俺もいらないくらいだしな!」
「それを解ってて、辻馬車から降りてきたのでしょう?」
「いや、その通りだけどさ。ま。気にすんなって」
これはもしかして、単純に裏表の無い性格かもしれないと思った。
それによく見ていると、レムリアさんもちゃんとクレスさんを相手にしているみたいで、そこまで仲が悪いというわけでもなかった。
アルテアースまであと少しだけど、クレスさんも加わって、穏やかな旅が賑やかに旅になりそうな予感がした。
青年が降りると、辻馬車は走り去った。
辻馬車から降りた赤い髪の青年は、こちらに向かって手を元気に振ってきた。
「お~い!レムリアだろ!俺だよ!俺!俺!」」
あまりにも俺俺言っているから、ふいに昔流行った詐欺を思い出した。
「……俺俺詐欺?」
「そうですね、詐欺の可能性もあります。無視しましょう」
レムリアさんは、道先にいる青年を避けるように来た道を戻り始めた。避けられたことに気づいた赤毛の青年は、慌てたように走ってくる。
赤い髪の青年は、走る速度が早くてすぐに追いついてきた。
「たっく、相変わらずつれないやつだなぁ」
「あなたも、相変わらずですね」
前に回り込まれると、さすがにレムリアさんも歩くのを止めた。
「で、そこのお嬢ちゃんは?」
「お嬢、ちゃん……?」
この歳でお嬢ちゃん扱いされて、自然と顔が引きつった。どう見ても、自分より若そうな人にお嬢ちゃん扱いは無い。
「貴方には関係ありませんよ。どうぞ、お一人で旅をしてください」
レムリアさんは、とても綺麗な笑みを浮かべて、これ以上は関わるなという雰囲気を出していた。
そんな雰囲気を気にすることもなく、赤毛の青年は機嫌良くレムリアさんに話しかける。
「レムリアたちが向かっているところは、アルテアースだろ?俺もそこに行くんだ」
「そうですか……」
レムリアさんは相手にしたくないらしくて、それ以上は何も聞かなかった。
それにしても、この赤い髪の青年は誰だろうと疑問に思う。
レムリアさんがここまで嫌がるのも珍しいなと思いつつ、レムリアさんに聞いてみることにした。
「あの、レムリアさん……この人は?」
「俺はクレス・ヴァルガンディ!レムリアの友人だよ」
友人にしては、すごく避けられているように見える。本当に友人かどうか怪しくて、ついレムリアさんを見てしまう。
「……友人というより、知り合いですね」
「ちょ、おいレムリア……ま、いいけどさ」
なんだかレムリアさんは、友人と認めたくないみたいだった。温度差がここまであるのも珍しいけど、きっと何かあったのかもしれない。
「ヴァルガンディさん?は、どうしてここに?」
「クレスでいいよ。ひと仕事終えて、アルテアースに戻るところなんだよ」
「え、じゃあ辻馬車ってアルテアースに向かってたの?」
「そうそう。で、辻馬車からレムリアを見かけたからさ、声をかけたってわけ」
それだと最初から馬車に乗っていれば、日にちをかけずにもっと早くアルテアースに着いてたってこと?
でもそれだと村に立ち寄って植物魔物の見学や種の回収なんてできなかったし、それよりも馬車代もタダじゃない。
宿代も出してもらっているのに、その上に馬車代まで出してもらうのは、さすがにダメだと思った。
「すみません、言い忘れてましたが・・・・・・私の旅の基本は徒歩です」
「ああ、たまにいるんだよ。旅を楽しみたいから徒歩で歩くやつ」
「そうなの?レムリアさん、気にしないで。レムリアさんにお世話になってるから、そこはレムリアさんのペースで」
「ありがとうございます、天華さん」
レムリアさんが嬉しそうに微笑んだのを見て、クレスさんは驚いたように目を見開いた。
「あー……なるほど。そういうことか」
「そういうことって?」」
クレスさんは何かに気づいたらしく、1人で納得していた。
「いんや、何もないよ。それよりお嬢ちゃんの名前、テンカって言うんだな……テンカ嬢ちゃんで」
「あのね、たぶん私の方が年上だから……お嬢ちゃんとか言わないでくれる?」
「は?年上って……もしかして、若作り?」
お嬢ちゃんや若作りや、失礼なことを言われて、さすがに苛立ってきた。なんとなくレムリアさんが避けていた原因がわかった気がする。
「失礼にも、程があるって知らないの?」
「天華さん、やっぱりここに置いていきましょう」
レムリアさんは自然と腰に手を回してきて引き寄せてくる。そのまま身を任せると、反転してアルテアースの方に向かって歩いた。
「ちょっと待ってくれよ!せっかく馬車を降りてきたっていうのに、そりゃないよ!」
慌てて追いかけてくるクレスさんを無視して歩いて行くけど、ほんの少し気の毒になってしまった。
足を止めて振り返ると、レムリアさんも仕方がないという雰囲気でクレスさんの方を見た。
「仕方ありませんね。アルテアースまでですよ」
「ああ、それでいいよ!俺もアルテアースに帰るところだし!」
「私、戦う力なんてないけど……ルテアースまで、よろしくね。クレスさん」
今のうちに正直に話して、ついでに挨拶もしておくと、屈託のない笑顔が返ってきた。
「ははっ、レムリアがいれば、テンカさん抜きでも余裕だろう?いや、むしろ俺もいらないくらいだしな!」
「それを解ってて、辻馬車から降りてきたのでしょう?」
「いや、その通りだけどさ。ま。気にすんなって」
これはもしかして、単純に裏表の無い性格かもしれないと思った。
それによく見ていると、レムリアさんもちゃんとクレスさんを相手にしているみたいで、そこまで仲が悪いというわけでもなかった。
アルテアースまであと少しだけど、クレスさんも加わって、穏やかな旅が賑やかに旅になりそうな予感がした。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる