アルテアースの華 ~勇者召喚に巻き込まれ、適職が農民で子宝に恵まれるってどういうことですか?!~

暁 流天

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19.不躾な遭遇者。

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 村から出て塗装された道を歩いていると、後ろから辻馬車が走り抜けていき、少し先で止まると、赤い髪の青年を降ろした。
 青年が降りると、辻馬車は走り去った。
 
 辻馬車から降りた赤い髪の青年は、こちらに向かって手を元気に振ってきた。

「お~い!レムリアだろ!俺だよ!俺!俺!」」

 あまりにも俺俺言っているから、ふいに昔流行った詐欺を思い出した。

「……俺俺詐欺?」
「そうですね、詐欺の可能性もあります。無視しましょう」

 レムリアさんは、道先にいる青年を避けるように来た道を戻り始めた。避けられたことに気づいた赤毛の青年は、慌てたように走ってくる。
 赤い髪の青年は、走る速度が早くてすぐに追いついてきた。

「たっく、相変わらずつれないやつだなぁ」
「あなたも、相変わらずですね」

 前に回り込まれると、さすがにレムリアさんも歩くのを止めた。

「で、そこのお嬢ちゃんは?」
「お嬢、ちゃん……?」

 この歳でお嬢ちゃん扱いされて、自然と顔が引きつった。どう見ても、自分より若そうな人にお嬢ちゃん扱いは無い。

「貴方には関係ありませんよ。どうぞ、お一人で旅をしてください」

 レムリアさんは、とても綺麗な笑みを浮かべて、これ以上は関わるなという雰囲気を出していた。
 そんな雰囲気を気にすることもなく、赤毛の青年は機嫌良くレムリアさんに話しかける。

「レムリアたちが向かっているところは、アルテアースだろ?俺もそこに行くんだ」
「そうですか……」

 レムリアさんは相手にしたくないらしくて、それ以上は何も聞かなかった。
 それにしても、この赤い髪の青年は誰だろうと疑問に思う。
 レムリアさんがここまで嫌がるのも珍しいなと思いつつ、レムリアさんに聞いてみることにした。

「あの、レムリアさん……この人は?」
「俺はクレス・ヴァルガンディ!レムリアの友人だよ」

 友人にしては、すごく避けられているように見える。本当に友人かどうか怪しくて、ついレムリアさんを見てしまう。

「……友人というより、知り合いですね」
「ちょ、おいレムリア……ま、いいけどさ」

 なんだかレムリアさんは、友人と認めたくないみたいだった。温度差がここまであるのも珍しいけど、きっと何かあったのかもしれない。

「ヴァルガンディさん?は、どうしてここに?」
「クレスでいいよ。ひと仕事終えて、アルテアースに戻るところなんだよ」
「え、じゃあ辻馬車ってアルテアースに向かってたの?」
「そうそう。で、辻馬車からレムリアを見かけたからさ、声をかけたってわけ」

 それだと最初から馬車に乗っていれば、日にちをかけずにもっと早くアルテアースに着いてたってこと?

 でもそれだと村に立ち寄って植物魔物の見学や種の回収なんてできなかったし、それよりも馬車代もタダじゃない。

 宿代も出してもらっているのに、その上に馬車代まで出してもらうのは、さすがにダメだと思った。

「すみません、言い忘れてましたが・・・・・・私の旅の基本は徒歩です」
「ああ、たまにいるんだよ。旅を楽しみたいから徒歩で歩くやつ」
「そうなの?レムリアさん、気にしないで。レムリアさんにお世話になってるから、そこはレムリアさんのペースで」
「ありがとうございます、天華さん」

 レムリアさんが嬉しそうに微笑んだのを見て、クレスさんは驚いたように目を見開いた。

「あー……なるほど。そういうことか」
「そういうことって?」」

 クレスさんは何かに気づいたらしく、1人で納得していた。

「いんや、何もないよ。それよりお嬢ちゃんの名前、テンカって言うんだな……テンカ嬢ちゃんで」
「あのね、たぶん私の方が年上だから……お嬢ちゃんとか言わないでくれる?」
「は?年上って……もしかして、若作り?」

 お嬢ちゃんや若作りや、失礼なことを言われて、さすがに苛立ってきた。なんとなくレムリアさんが避けていた原因がわかった気がする。

「失礼にも、程があるって知らないの?」
「天華さん、やっぱりここに置いていきましょう」

 レムリアさんは自然と腰に手を回してきて引き寄せてくる。そのまま身を任せると、反転してアルテアースの方に向かって歩いた。

「ちょっと待ってくれよ!せっかく馬車を降りてきたっていうのに、そりゃないよ!」

 慌てて追いかけてくるクレスさんを無視して歩いて行くけど、ほんの少し気の毒になってしまった。
 足を止めて振り返ると、レムリアさんも仕方がないという雰囲気でクレスさんの方を見た。

「仕方ありませんね。アルテアースまでですよ」
「ああ、それでいいよ!俺もアルテアースに帰るところだし!」
「私、戦う力なんてないけど……ルテアースまで、よろしくね。クレスさん」

 今のうちに正直に話して、ついでに挨拶もしておくと、屈託のない笑顔が返ってきた。

「ははっ、レムリアがいれば、テンカさん抜きでも余裕だろう?いや、むしろ俺もいらないくらいだしな!」
「それを解ってて、辻馬車から降りてきたのでしょう?」
「いや、その通りだけどさ。ま。気にすんなって」

 これはもしかして、単純に裏表の無い性格かもしれないと思った。

 それによく見ていると、レムリアさんもちゃんとクレスさんを相手にしているみたいで、そこまで仲が悪いというわけでもなかった。

 アルテアースまであと少しだけど、クレスさんも加わって、穏やかな旅が賑やかに旅になりそうな予感がした。
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