24 / 33
23.大神殿と神官。
しおりを挟む
クレスさんの案内でお店へ向かっていく最中、光沢のある真っ白な石の壁で出来た、美しく壮大な神殿が見えた。
柱は優美な曲線を描いて、計算されたように並び立ち、大きさも3階建ての学校の校舎くらいはある。
日本に住んでいたら、絶対にこんな神殿を見ることは無い。思わず足を止めて魅入ってしまった。
「神殿が珍しいですか?」
「うん、こんな立派な神殿は見たことがないから……」
「有名な神殿だよ。愛と豊穣の女神アルテフェルミアさまの大神殿」
大神殿と聞いて、納得してしまう。距離はあるのに、全体がよく解るほど大きく、本当に女神が降臨しそうな雰囲気だった。
ふいに入口の上に飾ってある、鳥の羽と稲穂をモチーフにしたような紋様が気になった。
「あの紋様って……羽と、稲穂……?」
「テンカさん、知らないの?聖鳥ハクシアと稲穂の話し。聖鳥ハクシアが稲穂を運んできた家には、子供が生まれるんだよ」
「昔から伝わる、おとぎ話ですよ。子供が親に、赤ん坊がどこから来るのかと聞かれた時にする話しです」
似たような話を、どこかで聞いたことがあるのを思い出した。
たしか、コウノトリがキャベツ畑から赤ん坊を運んでくるという話だったはず。
「それって、もしかして……鳥が運んでくるみたいに?」
「ええ。女神アルテフェルミアさまのところから、聖鳥ハクシアが運んできて、目印に稲穂を置いていくと……そう教えるんですよ」
「そうそう。おとぎ話みたいなもんだよ」
世界は違っても、親が子供に話す内容はどこも似たようなものかもしれない。
「へぇ~……私の知っている話は、コウノトリっていう鳥がキャベツ畑から赤ん坊を運んで来るって言うの」
「畑から赤ん坊を、ですか?」
「キャベツって何か知らないけどさ、畑って……それだと赤ん坊が、畑から生まれたみたいになるよな?」
レムリアさんもクレスさんも、驚いたようにこちらを見てくる。
今まであまりに気にしなかったけど、そう言われてみたら、キャベツ畑は少し酷いような気がしてきた。
「まあ、言われてみたら……まだ女神さまの所からの方が、いいかも」
「だよなぁ~。なんで畑なんだろ?あ、それよりご飯を食べに行くんだろ?」
「そうですね。ここで赤ん坊がどこから来るのかと話をしても、仕方ありません。行きましょうか」
クレスさんが歩き始めたから、慌てて後を追おうとした時、大神殿の扉が開いて誰かが出てきた。
青と白を基調にした神官服のようなローブを着込んだ、少しだけ少年っぽさの残る青年だった。
距離があるから顔がはっきりわからなかったけれど、茶金色の髪が太陽の光を浴びて、金色に光っているように見えた。
青年の青い瞳と目があったような気がしたけど、きっと気のせいだと思い、その場を離れた。
********************
クレスさんの案内で着いたお店は、大神殿から見える位置に建っていた。
緑色の屋根に真っ白に塗った壁。出入り口には、沢山の花を飾っていて、とても素敵な雰囲気を醸し出している。
ドアを開けて中に入ると、お客さんを知らせるドアベルの音がなった。
すぐに桃色の髪を後ろで団子にしている店員さんが来て、窓際のテーブル席に案内してくれた。
窓側に座ると、レムリアさんが正面に、その横にクレスさんが座る。
「決まりましたら、ベルを鳴らしてお呼びください」
店員さんは、水とメニューを置くとカウンターへと戻っていった。
「どんなメニューがあるの?」
「そうですね……ミミエラの煮込みランチ、揚げフイフイのランチ、トックレラのステーキと、ありますが……」
「俺、トックレラのステーキで!」
メニューを聞いただけだと、何がなんだか解らない。ここはやっぱり、名前の響きで決めるべきかと悩んでしまう。
「本日のおすすめは、揚げフイフイと書かれてますが……どうします?」
「じゃあ、おすすめの揚げフイフイで」
「では私も、揚げフイフイにしましょう」
クレスさんはベルを鳴らして定員さんを呼ぶと、頼んだ。定員さんはすぐにメモをしてカウンターへ入っていった。
店内を見渡してみると、他のお客さんが見当たらない。お昼を過ぎた時間だとしても、これは寂しいと思ってしまう。
「お客さん、少ないのね」
「少し前に来た時はもう少しいたよ。たぶん、店の向かいにある大衆食堂に客を取られたんだろ」
言われて窓の外を見たら、店の向かい側に大きな大衆食堂が見えた。そこにはお客さんが何人か居るみたいだった。
「あの大衆食堂、前に来た時はなかったんだけどなぁ」
「じゃあ、あそこも開店したばかりなのね」
大衆食堂を見ていると、誰かが店内に入ってきたらしくドアベルの音が響いた。音に気づいた定員さんがドアの前まで行き、客の対応をしているみたいだったけど、客と何か話すとすぐにカウンターに引き込んだ。
また外を見ていると、誰かが隣に来た気配がして振り返った。
振り返った先に居たのは、つい先ほど大神殿の前に居た青年だった。
「え、さっきの……?」
間近で見た青年は、驚くほどの儚い美貌で息を飲んだ。
整った顔立ちに吸い込まれそうなくらいに透き通った深く青い瞳は、長いまつげに覆われていて、どこか憂いに満ちていた。
透き通るような白い肌と、健康的に薄らと色づいている頬と唇は、中性的な美しさを醸し出している。
レムリアさんの顔で免疫がついていたおかげで、見惚れることがなかったのが救いだった。
「……ここ、座ってもいいかな?」
いきなりのことに、何を言われているのかすぐに理解できなかった。
それよりも店内には客がほとんど居なくて、沢山の席が空いているのに、どうして隣の席に座りたいと言っているんだろうと不思議で仕方なかった。
「あの、他にも席は空いてるけど?」
「……うん、見ればわかるけど。僕は貴女の横に座りたいから、聞いてるの」
隣に座りたいと言われているのは解るけれど、見知らぬ人に横に座りたいと言われれば、さすがに返事に困ってしまう。
この青年とは、さっき神殿で一瞬だけ目があっただけで、本当にそれだけ。
「天華さん、断りましょう」
「貴方には聞いてないよ。僕は彼女に聞いてるの……まあ、勝手に座らせてもらうけど」
「え……勝手にって」
レムリアさんの言葉を気にすることなく、神官っぽい人は隣の席に座った。
いきなりの行動に驚きすぎて、誰も止めることができず、茶金色の髪の青年の行動を見つめるだけだった。
柱は優美な曲線を描いて、計算されたように並び立ち、大きさも3階建ての学校の校舎くらいはある。
日本に住んでいたら、絶対にこんな神殿を見ることは無い。思わず足を止めて魅入ってしまった。
「神殿が珍しいですか?」
「うん、こんな立派な神殿は見たことがないから……」
「有名な神殿だよ。愛と豊穣の女神アルテフェルミアさまの大神殿」
大神殿と聞いて、納得してしまう。距離はあるのに、全体がよく解るほど大きく、本当に女神が降臨しそうな雰囲気だった。
ふいに入口の上に飾ってある、鳥の羽と稲穂をモチーフにしたような紋様が気になった。
「あの紋様って……羽と、稲穂……?」
「テンカさん、知らないの?聖鳥ハクシアと稲穂の話し。聖鳥ハクシアが稲穂を運んできた家には、子供が生まれるんだよ」
「昔から伝わる、おとぎ話ですよ。子供が親に、赤ん坊がどこから来るのかと聞かれた時にする話しです」
似たような話を、どこかで聞いたことがあるのを思い出した。
たしか、コウノトリがキャベツ畑から赤ん坊を運んでくるという話だったはず。
「それって、もしかして……鳥が運んでくるみたいに?」
「ええ。女神アルテフェルミアさまのところから、聖鳥ハクシアが運んできて、目印に稲穂を置いていくと……そう教えるんですよ」
「そうそう。おとぎ話みたいなもんだよ」
世界は違っても、親が子供に話す内容はどこも似たようなものかもしれない。
「へぇ~……私の知っている話は、コウノトリっていう鳥がキャベツ畑から赤ん坊を運んで来るって言うの」
「畑から赤ん坊を、ですか?」
「キャベツって何か知らないけどさ、畑って……それだと赤ん坊が、畑から生まれたみたいになるよな?」
レムリアさんもクレスさんも、驚いたようにこちらを見てくる。
今まであまりに気にしなかったけど、そう言われてみたら、キャベツ畑は少し酷いような気がしてきた。
「まあ、言われてみたら……まだ女神さまの所からの方が、いいかも」
「だよなぁ~。なんで畑なんだろ?あ、それよりご飯を食べに行くんだろ?」
「そうですね。ここで赤ん坊がどこから来るのかと話をしても、仕方ありません。行きましょうか」
クレスさんが歩き始めたから、慌てて後を追おうとした時、大神殿の扉が開いて誰かが出てきた。
青と白を基調にした神官服のようなローブを着込んだ、少しだけ少年っぽさの残る青年だった。
距離があるから顔がはっきりわからなかったけれど、茶金色の髪が太陽の光を浴びて、金色に光っているように見えた。
青年の青い瞳と目があったような気がしたけど、きっと気のせいだと思い、その場を離れた。
********************
クレスさんの案内で着いたお店は、大神殿から見える位置に建っていた。
緑色の屋根に真っ白に塗った壁。出入り口には、沢山の花を飾っていて、とても素敵な雰囲気を醸し出している。
ドアを開けて中に入ると、お客さんを知らせるドアベルの音がなった。
すぐに桃色の髪を後ろで団子にしている店員さんが来て、窓際のテーブル席に案内してくれた。
窓側に座ると、レムリアさんが正面に、その横にクレスさんが座る。
「決まりましたら、ベルを鳴らしてお呼びください」
店員さんは、水とメニューを置くとカウンターへと戻っていった。
「どんなメニューがあるの?」
「そうですね……ミミエラの煮込みランチ、揚げフイフイのランチ、トックレラのステーキと、ありますが……」
「俺、トックレラのステーキで!」
メニューを聞いただけだと、何がなんだか解らない。ここはやっぱり、名前の響きで決めるべきかと悩んでしまう。
「本日のおすすめは、揚げフイフイと書かれてますが……どうします?」
「じゃあ、おすすめの揚げフイフイで」
「では私も、揚げフイフイにしましょう」
クレスさんはベルを鳴らして定員さんを呼ぶと、頼んだ。定員さんはすぐにメモをしてカウンターへ入っていった。
店内を見渡してみると、他のお客さんが見当たらない。お昼を過ぎた時間だとしても、これは寂しいと思ってしまう。
「お客さん、少ないのね」
「少し前に来た時はもう少しいたよ。たぶん、店の向かいにある大衆食堂に客を取られたんだろ」
言われて窓の外を見たら、店の向かい側に大きな大衆食堂が見えた。そこにはお客さんが何人か居るみたいだった。
「あの大衆食堂、前に来た時はなかったんだけどなぁ」
「じゃあ、あそこも開店したばかりなのね」
大衆食堂を見ていると、誰かが店内に入ってきたらしくドアベルの音が響いた。音に気づいた定員さんがドアの前まで行き、客の対応をしているみたいだったけど、客と何か話すとすぐにカウンターに引き込んだ。
また外を見ていると、誰かが隣に来た気配がして振り返った。
振り返った先に居たのは、つい先ほど大神殿の前に居た青年だった。
「え、さっきの……?」
間近で見た青年は、驚くほどの儚い美貌で息を飲んだ。
整った顔立ちに吸い込まれそうなくらいに透き通った深く青い瞳は、長いまつげに覆われていて、どこか憂いに満ちていた。
透き通るような白い肌と、健康的に薄らと色づいている頬と唇は、中性的な美しさを醸し出している。
レムリアさんの顔で免疫がついていたおかげで、見惚れることがなかったのが救いだった。
「……ここ、座ってもいいかな?」
いきなりのことに、何を言われているのかすぐに理解できなかった。
それよりも店内には客がほとんど居なくて、沢山の席が空いているのに、どうして隣の席に座りたいと言っているんだろうと不思議で仕方なかった。
「あの、他にも席は空いてるけど?」
「……うん、見ればわかるけど。僕は貴女の横に座りたいから、聞いてるの」
隣に座りたいと言われているのは解るけれど、見知らぬ人に横に座りたいと言われれば、さすがに返事に困ってしまう。
この青年とは、さっき神殿で一瞬だけ目があっただけで、本当にそれだけ。
「天華さん、断りましょう」
「貴方には聞いてないよ。僕は彼女に聞いてるの……まあ、勝手に座らせてもらうけど」
「え……勝手にって」
レムリアさんの言葉を気にすることなく、神官っぽい人は隣の席に座った。
いきなりの行動に驚きすぎて、誰も止めることができず、茶金色の髪の青年の行動を見つめるだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる