アルテアースの華 ~勇者召喚に巻き込まれ、適職が農民で子宝に恵まれるってどういうことですか?!~

暁 流天

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29.一触発と威嚇。

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 レムリアさんと私の会話で色々と察したらしいラズライエルさんは、レムリアさんを睨んだまま動かない。

「ねえ、その話の内容だと……まるで何か関係があったみたいに聞こえるんだけど」
「そ、それは……ほら、着替えとかないからって話しをしてて……」

 なぜかラズライエルさんに言い訳のようなことを言ってしまった。
 なんでこんなことを言ってしまったのか、自分でも不思議だった。

「ふぅん、そう。そういえばさ、湖付近で発見して姿を確認したあとから、テンカさんの気配を掴めるようになったんだけど……」

 意外な話に、思わずラズライエルさんを見た。ラズライエルさんはレムリアさんに、視線を送っていた。

「精霊もどきの邪魔が入ってから、まったく掴めなくなったんだ」
「え、それって……」
「ええ。私が天華さんの気配を少し隠しておきましたが」

 レムリアさんはなんでもないことのように言うけど、かなり重要なことのような気がする。

「やっぱり……妖精とか精霊とかの得意な術だよね。気配隠し」
「お褒めいただき、光栄ですね」
「褒めてないんだけど……それで、どうやって気配消したの?だってテンカさんは人間で、そんな簡単には無理でしょう」
「直接触れて、中から術を施して、気配を覆ったとしか……」

 中からと聞いて、嫌な予感がした。
 記憶がたしかなら、湖付近で襲われて、レムリアさんに助けられた。
 そこから記憶はないけど飲まされた媚薬を抜くために、レムリアさんに色々とされていたはず。
 その時でしか、術を施すタイミングが思いつかない。

「直接、中から?どうやって中からって……まさか君!」
「とても可愛かったですよ、天華さんは」

 レムリアさんは幸せそうに微笑みながら、抱きしめてくる。
 暖かくて、なんだか良い匂いがして、居心地が良いけど……さすがにこれはまずい。

 ふとラズライエルさんを見ると、何かに耐えるように震えていた。
 ここで天使の羽を出されたら、町中の注目を浴びてかなりまずいことになる。
 ただでさえ2人ともありえないくらい容姿が良すぎて、通りすがりの人の視線を釘付けにしているっていうのに、そこで天使の羽はかなり不味い。

「お、落ち着いてラズライエルさん!ここ街中だから!」
「……うん、解ってるよ。それはもう十分、わかってるけど……でも、ね」
「ちなみに2回ほど術を施していたのですが。まさか遭遇するとは、予想外でした」

 2回目は、カンロ村のことを言っているのだと気づいた。
 でも、なぜそこまでラズライエルさんに言うのかが解らないけど、火に油を注いでることは解る。

「レムリアさんも、なんでそこまで教えるの?」
「大人気無いことはわかっています。ですが彼は、守護天使を諦めていないでしょう?」

 守護天使という言葉に反応したラズライエルさんは、レムリアさんに詰め寄っていった。

「当たり前でしょ。そもそも、誰のせいで守護天使になりそびれたと思ってるの?」
「それって、ラズライエルさんの自業自得でしょ?そもそも、さっさと助け出してくれていたら良かっただけの話だから」
「天華さんの言うとおりですよ。私のせいではありません」

 ラズライエルさんの方、つい睨むように見つめてしまう。
 レムリアさんは詰め寄っていたラズライエルさんから、飽きたように顔をそらした。
 少し睨むように見つめていると、耐え切れなくなったらしいラズライエルさんは、降参するように両手を上げた。

「わかった、わかったから!僕が悪かったから!それより、まだ買い物をがあるんだよね?」
「そうですね。先に買いに行きましょうか?」
「え、本当に行くの?」

 この2人を引き連れ下着を買いに行ったら、かなり目立ちすぎる。
 とくにラズライエルさんなんて神官服を着ているから、注目の的にしか見えない。
 人離れした容姿の美形と、神官服を着た儚い系の美形を連れて下着を見に行くなんて……あれ、これかなり特殊な自慢の仕方か、それか変態趣味の人にしか見えない。

「もちろん。たしかすぐそこに女性向けのお店があったはずですから」
「あの、1人で買いに行けるんだけど……むしろ1人で行きたいんだけど」
「ええ。ですがアルテアースは広いですから、お店まで案内しますよ」
「まあ、案内くらいなら……」

 レムリアさんに付いていくと、歩いて10分くらいの距離に噴水のある広場が見えた。
 その広場を囲むように、店が何件も連なっている。
 その中のお店の1つに、入り口の看板に女性用の下着のイラストを可愛らしく描いているお店が見えた。

「あそこですね。この辺りだと、ここしか扱ってないと思いますが……」
「そうなの?もっとあるかと思ってわ」
「あるとは思いますが……買うことがないので」

 レムリアさんは、少し困ったように微笑んだ。
 よく考えたら、レムリアさんが女性用の下着を販売しているお店に詳しかったら、それはそれで嫌だ。
 たぶん、広場の近くに商店街みたいに並んでいたから、このお店を偶然に知っていただけかもしれない。

「では、私は屋敷の掃除に行きますから、天華さんは買い物をしてきてください。これで足りるはずですから」
「え、うん。ありがとう」

 バルトレイで渡されたお金と似たような金貨を5枚渡された。たぶん5メルスみたいな感じだと思うから、5万になるはず。
 レムリアさんに渡された金貨をよく見ると、バルトレスで貰った金貨と模様が違っていた。
 たしかバルトレスは、男性の横顔が描かれていたけど、渡された金貨には女性の顔が描かれていた。

「これ、絵柄が違うの?」
「ええ。材質も質量も同じですが、発行された国により違います。その国を守護している神の顔が掘られています」
「じゃあ、これってもしかしてアルテフェルミアさま?」

 ラズライエルさんが興味を持ったらしくて、私の手元にある金貨を覗き込んできた。
 金貨の絵を見たとたん、少し怒ったように眉を寄せた。

「違うよ。アルテフェルミアさまは、もっと美人だから」
「神の姿を直接見ることはできないので、ほとんどが想像図ですよ」
「想像図って……でも、そうなるわよね」

 金貨を小袋にしまうと、それを懐にしまった。

「じゃあ、私はお店に行くけど……」
「では、買い物が終わったら噴水の前にいてください。掃除が終わり次第、すぐに迎えにきますから」

 レムリアさんはそう告げつると、立ち去ってしまった。
 お店に向かおうとしたとき、ラズライエルさんが居たのを思い出した。

「あの、ラズライエルさんも入るつもり?でも神官服はちょっと目立ち過ぎると思うけど……」
「さすがに入らないよ。僕は、噴水の前で待っているから」

 ラズライエルさんが噴水の辺りまで行くのを見守ると、さっそくお店の中へと入っていった。
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