アルテアースの華 ~勇者召喚に巻き込まれ、適職が農民で子宝に恵まれるってどういうことですか?!~

暁 流天

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30.天使の祝福。

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 お店に入ると壁に色々な下着が飾られていた。
 上下セットが多くて下は元の世界で使っていたのと似たような感じだったけど、上はブラジャーじゃなかった。
 胸を保護するための胸当てのような物で、何かの皮でできているらしい布は伸縮性があって、肩紐が無くて布の伸縮のみで固定するタイプ。
 もちろんフックなんて物が無いから、ボタンで留めるようになっていた。
 デザインはレースやリボンで飾られているものが多くて、可愛らしいものが多くて迷ってしまう。

「お客様、これなどいかがでしょうか?」
「え、これって……」

 黒色に白のレースが飾られているタイプは、面積が少なくてかなり大人っぽい。
 色が黒だからドレスの下に着たら、薄っすらと下着の形とか色とかが浮いて見えるんじゃないかと気になる。

「あの、ドレスの下に着るタイプはあります?」
「ドレスですか?それでしたら、こういった質素な物が人気です」

 白色に金の蔦模様の刺繍が縁取りされていて、どこか上品な感じに見える。
 これならもし見えてしまっても大丈夫だと思う。見えてもドレスの一部に見えるはず。
 さらに似たような物を数点、色違いで選んだ。
 ふとボタンの代わりにリボンで結ぶタイプの物が目に入った。
 結び目のところをリボンで結ぶところが可愛い。

「あら、こちらですか?こちらも人気商品ですよ。あちらの夜着と一緒に購入される方が多いですね」
「夜着?」
「夜間に着用する服のことです。部屋の中で寛ぐ時などに、使用される方もございます」

 たぶんルームウェアとパジャマを足したような服らしい。
 店員さんが指した方を見ると、飾り気のない夜着が壁に飾られていた。
 ワンピースに近い形状の服は、袖口が広くレースが縫いつけられている。手にとって見ると、膝丈くらいで長さもちょうど良かった。
 後ろの首の部分が大きく開いているのが少し気になったけれど、着易そうに見える。

「これ、背中が広く作られてるんですか?」
「ええ。背中が開いており、リボンの部分が見える仕様となっております」

 さっきのリボンで結ぶタイプの物と組み合わせると良いのかもしれない。
 それに普段着は買ったけれども、夜寝るときに普段着を着て寝るのはおかしい気もするから、これも買ったほうが良いのかもしれない。
 白色と、明るい青い色と、ワインレッドみたいな深みのある赤色の物を選んで、店員さんに渡した。

「では、こちら5点と夜着が3着で、3マルクと2ルビーです」

 金貨や銀貨は、彫られている絵柄だけ違うだけで、呼び方は一緒みたいで安心した。
 さっそく渡された金貨4枚を渡すと、銀貨8枚がお釣りとして帰ってきた。
 品物が入った紙袋を受け取ると、お店を出て広場の噴水へと向かった。



*****************



 なぜか広場の前の噴水に列ができていて、沢山の人が並んでいた。
 そしてラズライエルさんの姿を探すと、どこにも見当たらない。
 まさかと思って列の先頭を見ると、ラズライエルさんが居た。
 相変わらず太陽の光で髪をキラキラと輝かせて、1人1人の頭の上に手をかざして何かを呟いている。
 全身が微かに発光しているように見えるけれど、きっと太陽光のせいだと思いたい。

「あの、何してるの?」

 話しかけると、ラズライエルさんは驚いたようにこちらを見てくる。
 驚いたのは、こっちなんだけど。

「テンカさん、もう終わったの?ちょっと待ってて……あと少しだから」

 ラズライエルさんは列がなくなると、こちらに近づいてきた。

「ええっと、あの列はいったい何?」
「そこで立っていたら、お婆さんが僕の服装で神官だって気づいて、なぜか拝み始めたんだ」

 外見だけなら、中性的な容姿に光を纏っているように見えるから、目の悪い人にはそれっぽく見えたんだと思う。
 でもまさか拝まれていたなんて、さすがに驚いた。

「だから女神アルテフェルミアさまの祝福があるようにって祈ってたら、なぜか人の列が出来てたんだけど……ついでだから、祈ってた」

 ついでって言ってるけど……たぶん、待っているのが暇だから祈っていたんだと思う。
 でも祈るなんて、その神官服は成り行きで着ていたわけじゃなくて、まさか本当に天使なのに神官をしているんじゃあと疑ってしまう

「まさか本当に、神官見習いだったの?」
「違うよ。神官長がこちらの方が動きやすいからって渡してくれただけで、別に本当に神官をしているわけじゃないよ」
「え、でもさっきの祝福は?なんだか慣れているように見えたけど」
「たまに神殿のお手伝いをしているから、そう見えるだけだよ」

 神殿の手伝いで慣れてしまっているから、つい癖でしてしまったということらしい。

「それに僕、天使でしょう?だから僕の祈りには、ある程度の祝福効果はあるんだ。まあ、触れてないし、力をだいぶ抑えてるから半日持てば良いほうだけど……」
「それ、どんな効果があるの?」
「怪我をし難くなったり、免疫力が向上したり……あと恋愛運上昇、子孫繁栄?」

 祝福というだけあって、ちゃんとした効果があるみたいだけど、最後の方は日本でもよく聞いた言葉だった。
 あまりに馴染みがありすぎて、なんだかおかしくなってしまい、小さく笑ってしまう。

「なにそれ……最初の方は解るけど、最後は神社みたい」
「ジンジャ?」
「私の元居た世界で、神さまを祭っている場所のことよ」
「ふ~ん、神殿じゃなくてジンジャっていうんだ……あ、テンカさんもついでに、祝福を」

 一歩前に進んでくると、なぜか顎を掴んで上を向けさせられた。
 いきなりのことに驚いていると、深い青い瞳が閉じられていくのが見える。
 顔が自然に近づいてくるから、本能的に顔を横に向けたら頬に柔らかな感触が触れた。

「っ!ラズライエルさん!」
「天使の祝福のつもりだけど?」

 まったく悪びれもなく、性別不明の微笑を浮かべていたラズライエルさんは、何かに気づいたように視線を遠くに向けた。
 少ししてラズライエルさんは、どこか気まずげに視線を泳がし始めた。
 何があったのか不思議に思って振り返ろうとした時、両肩を背後から掴まれて、そのまま後ろに引き寄せられた。

「いったい何をしているのでしょうか……そこの天使は」

 耳に馴染んだ声が頭上から聞こえてきて、恐る恐る振り返ると、珍しく顔を引きつらせたレムリアさんが居た。
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