気まぐれ作者の一品

カサアリス

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テーマ「忍者」

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キーン。

少し耳鳴りがする。
それほどまでに静か。
時折、梟の鳴き声が聴こえるがそれ以外の環境音がない。

仕事にはおあつらえ向きの夜だった。

男はそう思いながら森の中へと駆け込んでいく。

男の名は「太田 一義」おおた かずよし
職業は忍者。
とだけ紹介すればかっこいいものだが、実際は結構泥臭い経歴だ。

大学を卒業するも内定は取れず、なんとか非正規雇用で会社勤めになるも営業成績が悪く1年で自主退職クビ

その後ハローワークや職業訓練校等に通い、今は忍者総合組合のパート忍者として下請け業務をしている。

今日もその業務として大手経営者から脱税の証拠を預かり(盗むというと法に引っかかるので)、依頼主であるKさん(守秘義務のため顔も名前も分からない)に届けたところである。

前の会社ならこのまま直帰してつまみとビールで晩酌となったのだが、忍者の仕事は

「ここから1度本部に戻るのが大変なんだよなぁ~これがさ…」

俺はつい本音を零してしまったが、大変なのは仕事より移動であることは事実なのだ。

忍者の仕事は基本的に世間に話せない仕事内容のため(守秘義務!!守秘義務があるからだよ!決して汚い仕事じゃないよ!!)、公共交通機関及び車やバイクなどの乗り物関係は使用できない。

そのため徒歩移動で本部まで帰らなければならない。



パート忍者であるがゆえ、勤務時間は正確に記録しなければならず、残業はあまり好まれない。

というより、残業代は出してくれるものの、上司の小言が煩くてたまらないので残業はしたくないのだ。

「ものの数秒のために徒歩2時間とか馬鹿げてるよ…ホント…」

とはいえ仕事自体は終わっているので少しは気楽だと考えながら森の中を移動していると、



異変に気づいた時には既に体はさらに重くなり、右頬を殴られていた。

咄嗟に受身を取りそのまま距離を大きく開ける。

そして自分を殴った相手を観察していく。

180cmは超えていて横に広い体型だ。
だが太っているというよりは筋肉ダルマと言ったところだろうか。

武器は持ってなさそうだが、四肢の太さが武器の不必要さを物語っている。

「おい、おまえ組合の忍者さんで間違いねぇだろうな。」

相手は確信に満ちた表情で聴いてくる。

「そうだよ!!人違いだったらどうすんだよ!!あんなん喰らったら普通の人はお陀仏だぞ!!」

あとは帰るだけだった俺は思いっきりイライラを相手にぶつける。

相手はその様子にかなり驚いている。

「忍者ってのはクールな性格だと思ってたが意外と人間味があるんだな。」

ガハハハと昔の漫画みたいに割腹のいい笑い方をしたか思うとまた急接近してきた。

すかさずバックステップを入れるが、また体勢を崩してしまう。

相手はそのままの勢いで鳩尾に強烈な一撃を叩き込もうとしてきたので必死に両腕でガードする。

だが俺の体は、いとも簡単に宙に浮くが2m

「はぁ!?!?なにこれ!?!?」

思わず声が出てしまう俺は、にこやかな表情で距離を詰める筋肉ダルマと目線がかち合う。

本能で死を感じた俺は着地と同時に鎖鎌を後ろに投げ木に括り付ける。
そして相手の右ストレートを片手でガードしつつその反動を利用し距離を大きく取る。

(こいつ、能力者かよ…!!)

忍者という仕事上、命を狙われることは多々ある。
しかし、まずバレないようにすることが第一のため、なかなか戦闘になる事はない。
ただし戦闘にあった時は強者しか来ない。

(まぁそれも俺がだからなんだけどさ。)

鼻高々に語ってみるが過信ではなく、実は人智を超えた能力者ぐらいしか出会えないエリートなのだ。

しかし能力者と分かれば、大分距離が稼げた現状でも安心できない。
すかさずクナイを投げ相手を牽制する。

しかしクナイは相手に当たるどころか3m

「嘘だろ…おい…」
確認のために手裏剣も片手で3枚ほど放ってみるが、結果は変わらない。

「残念だがな。ピストルでもライフルでも俺には届かねぇんだ。だからそういうのは無意味なんだよ。」

なんとも国道で煽り運転をするような表情で説明してくれやがって。
だが、クナイや手裏剣を投げてる間は1歩と動かなかったのがその証拠。

(牽制にもならないんじゃ意味無いよな…!!)

でも
今度は周りの木々に隠れて移動しながら、手裏剣を投げ続ける。

だが結果は同じ。
いくつ投げても、後ろなどの死角から投げても必ず垂直に落ちてしまい、相手に届きそうもない。

相手は手裏剣は怖くないだろうが、俺の姿を捉えきれずにいる様子だ。
頻りに顔を振り、手裏剣が投げられた方向に目を向ける。

先程の笑みが消えた相手は、
「そんなチマチマした戦い方はやめにしようぜ!!忍者さんは火遁や水遁とやらの忍術が得意なんだろ!!火を噴いたり、雷落としたりド派手にやってこうぜ!」
と怒気を腹んだ声で挑発してくる。

だがそんな挑発、俺には通用しない。
というより、

(!!!!!)

思わず心の中でツッコむ。

(まず挑発になってないからな!!!そんなことできたら苦労しねぇんだよ!!!)

元々は平凡以下のサラリーマン、つまりは一般人の俺に出来ることなんてたかが知れてる。

でも相手はそう思ってはいない。それどころかかなり警戒してる様子だ。

それなら、既にから、素直に正面からやり合いますか。

俺は挑発に乗った風に演技しながら、相手と対峙する。

(上手くいってくれよ…上手くいくのは分かってはいるけどよ…)

内心ビビっているがそれを気取られないようにするのが精一杯な俺だった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

(ちまちまちまちま手裏剣だけ投げやがって、どこにいるのかイマイチわかんねぇ。)

俺は、本当は接近戦に持ち込みたい気持ちを抑えながら、忍者の出方を伺っている。

いつもならひたすら追いかけ回してタコ殴りにしてるとこだが、忍者に関しては警戒を怠ってはいけない。



俺は傭兵派遣団体で働いている。
いわゆる雇われ兵隊だ。
依頼があれば戦争でもボディガードでも暗殺でもなんでもやっている。

そりゃこの能力があれば何だってこなせるよな。

俺の能力は重空気範囲グラエナフィールド

特定の範囲内の重力を加算し、が出来る。簡単に言えば、重力を発生させ俺の真上にある空気を下に送り続けることが出来る。

この能力の特徴は重力と凄まじい密度の空気によるバリアが同時に発生させられることだ。

この能力があれば武器も持たずに人を殴り殺せるし、前線で立ってるだけで遠距離攻撃は大抵無効化できる。
なんなら、火炎放射器も毒ガスも俺に届きやしない。

。それが忍者。

うちの団体でも忍者討伐の依頼は多く、世の金持ちは多くの懸賞金を出している。
明日は我が身かもしれねぇんだからそれは仕方ない。

だが、だ。

なぜなら何人も腕利きの能力者を忍者討伐に行かせたが

そうすると団体は依頼失敗の名目を得て死んだやつがこれから稼ぐはずのお金が失われる。

つまり、うちの団体の

今回の依頼も何度も首を振ったが、成功報酬の金額のデカさに根負けし依頼を受けたらしい。

でもそんなことはどうでもいい。

俺は「目を見ただけで動きを封じる」やつも「全身が鋼鉄で出来ている」やつも「炎と氷と雷を操る」やつも、
全員をぶち殺しやがったこいつに勝って、強さを証明してやる!!

ふと気づくと手裏剣の雨は止んでおり、忍者が正面に現れた。
まるで俺の警戒を嘲笑うかのように。堂々と。

「やっと出てきやがったか!待たせてんじゃねぇよ!」

威勢のいい声が出たが、飄々と勝ち誇ったような表情をした忍者に実際はビビってる。

挑発が効いたか?どんな大技を出してくる?

様々な懸念が頭の中を飛び交うが、忍者はただ1本のクナイを真っ直ぐ俺に投げてきた。

馬鹿の一つ覚えだと思った。なんなら欠伸でもして挑発してやろうとすら考えた。



真っ直ぐと投げられたクナイは、真っ直ぐ俺の喉までやってきた。

俺はなんとか首を逸らし避けた。
それと同時に疑問詞が頭を埋め尽くす。

(なぜクナイは届いた?能力は解除していないはず?能力強制解除キャンセラーでも発動されたか?だがそれが出来たら最初からやっているはずだ?なぜ?どうして?)

だがそこからは考える隙を与えてくれなかった。

避けた後に正面を向いても忍者はおらず、先程同様に手裏剣の雨が始まった。

ただ先程と違うのはこと。

(避けないと…避けないと…!!)

頭では分かってる。防衛本能も全力で司令を出している。

ただ体は膝を震わせ身を縮めることしか出来ない。



これが俺の体を支配していた。

無数の手裏剣が俺の体を掠めていく。
このままだとただ死を待つだけだ。

「あんた、意外としぶといんだな。」

忍者はいつの間にか姿を現し、下卑た顔でこちらを見ている。

悔しいが

俺の筋肉はそんじょそこらの筋肉ではない。


俺は能力を解除し、一気に忍者との間合いを詰める!
そして、右腕を振りかぶり起死回生の一撃を!!!

………

だが俺の右腕は思い通りに動かなかった。
それ以前に忍者の前に移動した時点で、

それを知ったのは無惨にも、撥ねられた首が宙を舞い、なんとか俺の視界に入ったからだった。
俺は血液が脳から抜けていく感覚と共に死を迎えたのであった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「死んだ?死んだよな?死んでてくれよ??」

そう言いながら相手を凝視する。
あんな化け物だとまだ動けそうで怖いというのが本音だ。

だが、体には四肢も首もなく、肝心の首も動きそうにない。

ひとまず安堵した俺は埋葬しょうこいんめつを始める。
戦闘の形跡を無くすためでもあるが、もうこれ以上の敵に会いたくないと祈る側面もある。

「今日はちょっと大変だな。」
飛び散った四肢と胴体、首を見渡しながらため息混じりに呟いてしまう。

元々の予定ではここまで派手にやる予定では無かった。
というより

先程の戦闘を思い返しながら、を回収する。

最初に相手に殴られた場面だけだと、おそらく遅延ディレイなどの時間操作か、重力グラビドンなどの空間操作かと考えられた。

だが、2度目の殴られた後に垂直に落とされた場面で空間操作だと断定。更にに能力が発動されたことで、1つの仮説が生まれた。

()
つまりは能力を使っている間は本人にも重力が付与されているのだろうと。

もし能力者本人に重力がかかって無ければ、地面に跪かせてタコ殴りすればいい。
だが実際は殴るタイミングで能力を解除していたから俺はぶっ飛ばされた。



そうなるとあの筋肉ダルマは、あの重力がかかっている空間で常人以上の運動能力を発揮出来る化け物。

ここまで分かれば対処できるのがの俺なのよ。

ワイヤー付きの手裏剣を投げて仕込みをし、頃合いを見て木に括ったワイヤーを通したクナイを真正面から投げる。

ワイヤーが通っているから相手に直接刺さる軌道には投げれないが、遠距離攻撃が効く状況になれば痺れを切らせて突撃してくるだろう。
だから今度は手裏剣を全方位から投げまくる。

後は仕込んでいた手裏剣ワイヤーの網に突撃して弱ったところを急所を刺してトドメとなる。

言葉にすれば簡単で何の変哲もないトリック。だが能力者はと思い込むと奥の手を出すしか無くなる。

その奥の手が

だがこいつはそうじゃない。能力に依存しなくとも敵を倒せるタイプだ。
俺はワイヤーの網にかかって怯んだ所で急所を狙う予定だった。

だが相手の膂力は想像以上だった。
ワイヤーの網にかかっても怯むどころか勢いも殺さずに目の前に迫ってきた。

あまりの勢いに四肢は網を通過した時点で千切れたが同時に発生した熱による火傷で、傷口が止血されていた程だった。

でも

構えていた刀を首の位置に合わせておくだけで、勢いそのままで首を切れたため、なんとか倒すことが出来たというわけだ。

そんなことを考えている内に、現場復旧と埋葬は終わり、

「はい、チーズ!」

と写真撮影をする。

九死に一生を得たこととが出るのが相まって、かなりの笑顔だ。

自分でも気色悪いなぁと感じつつ、また帰路へと向かう。
頑張ればお小言を回避出来る!!と意気込みながら、足早に本部に戻るのであった。
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