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テーマ「脱衣室」
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「これから清掃させて頂きまーす!」
その言葉を出しながら少し気合いを入れてドアを開ける。
何故なら蒸し蒸しとした熱気と汗だらけの男達が中に居るからだ。
しかも僕の掛け声で全員が一斉に目を向け、ぞろぞろと出口に向かってくる。
気合いでも入れないと掃除をする前に疲れてしまう。
全員が外に出たあとに、タオルの交換や床拭きを行なう。
全くこんな暑い場所を好き好むなんて、僕には考えられない。
そうブツブツと文句を言いながらこのサウナを清掃しているのは、温泉「滝島の湯」で従業員として働く五百蔵 権蔵。ここで働き始めて2年ぐらいが経つ。
この「滝島の湯」はこの地域では珍しい温泉施設で、連日常連から家族連れまで、意外と賑わいのある温泉だ。
この地域では珍しいという言葉を使ったが、実はこの「滝島の湯」の周りは高層ビルに囲まれており、単純に人口密度の高い地域だ。
普通なら空き地があれば高層ビル・高層住宅を建て、手堅く不労所得を稼ぎに行くのだが、この土地ではボーリング中に温泉を掘り当ててしまったため、急いで建設計画を変更して温泉施設になった。
つまりは客層は若めで従業員も若い人が多く、活気のある施設となっている。
そんな中でも五百蔵は、見事に陰な雰囲気と丸メガネの着用から、活気には程遠い従業員であった。
そんな彼がサウナの清掃当番となったので、ブツブツと文句の一つや二つや十や二十が出てくるのも致し方のないことだった。
だが文句は言いながらも仕事は手を抜けない。手を抜くことは五百蔵からすると、敗北を感じて死にたくなってしまうほどの自己嫌悪に陥るからだ。
つまりは、メガネを曇らせ視界が悪いなか、暑いサウナでの仕事をするというのは、真面目に仕事をするなら、 最悪の環境なのである。
「ふぅ、やっと終わった。」
丁寧に、でも時間通りに清掃を終えた五百蔵はもう一度気合いを入れ直し、
「サウナの清掃が終わりました!ご迷惑お掛けしました!」と温泉客に伝わるように声を張り、仕事を終えた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
五百蔵は汗だくになりながら脱衣室にある従業員用の通路に向かっていると、1人の男性が声をかけてきた。
「すいませーん、おにいさん!」と言いながら、ここまで来て欲しいと手振りで伝えてくる。
「はい!ただいま!」
なんでこの疲れている時に呼ばれるかな?!と半ギレ状態だが、それをおくびにも出さず、小走りで男性のところまで向かう。
「すいません。ここに忘れ物があって。」
と男性はロッカーの中に向けて指を指す。
「ご確認致します!」と中身を除くと、そこには黒縁で太めのフレームのメガネが置いてあった。
温泉では脱衣と同時にメガネを外す人は多く、ロッカーに入れてから大浴場に向かう人がほとんどだが、メガネを忘れる人は皆無だ。
何せメガネがなければ視界が悪いのだから、忘れたことに気づかないわけが無い。
メガネ常用者の五百蔵は不思議に思ったが、「お預かりします!ご迷惑おかけしました!」と、とりあえず男性に対応をしその場を去ることにした。
その後、上司に報告するが上司も不思議がっていたため、メガネの忘れ物は稀なのだと察した。
「そしたら休み処まで届けてくれないか?館内放送もお願いしておくよ。」
上司は軽い口調で言ったが、五百蔵からすれば面倒事を押し付けられたようなものだ。
何故なら館内放送をしても基本的にお客さんは聴いていない。
身体を癒しに来ているからかもしれないが、横になっているかおしゃべりをして聴いていないか、はたまた漫画やテレビに夢中で無視しているなど、肝心の人ほど館内放送に気づかないものだった。
その結果、従業員が声を出しながら巡回し、目的の人を探すのがテッパンだった。
つまりは、休み処にいるかどうかも分からない人のメガネを届けるのが仕事となる。
これは本当に面倒だ。
しかも休み処は大きく三つに別れており、食事処・リラックススペース・漫喫スペースと意外と広かったりする。
だが五百蔵はメガネは身体の一部であり、日常生活に支障をきたすほどの大事なものであることも分かるため、気合を入れるしかない。
自己嫌悪に殺されないためにも。
-----------------
「脱衣室にてメガネをお忘れの方、いらっしゃいませんかー!」
何度、この言葉を投げかけただろうか。
でも時間にしては30分程度、休み処を3周しただけである。
それでも見つかるかも分からない人を探すのは苦痛ではあるが、もし視界が悪い人が起きていたら、メガネの有無に気がつくはずだ。だから起きているはずがないと結論が出たので無駄なことではないとも思っていた。
今はリラックススペースを中心に声出しをしている。
ただ、当の本人は寝ている可能性しかないので、やはり無駄かもなと感じているところだ。
そんな最中、1人の男性が声をかけてきた。どうやら複数人の集団から抜けてここまで来たみたいだった。
「すいません。サングラスの落し物ってありましたか?」
確か、メガネの件を上司に報告した時にほかの忘れ物も確認したが、鍵やタオルはあれどサングラスは無かったはずだ。
「確か無かったと思いますが、どのような形のサングラスでしょうか?見つけ次第、館内放送を流してお伝えします。」
こちらは他の忘れ物のおかげで働いているのに、別の物までは探せない。
だが、できる限りの事はしようとする姿勢が伝わればクレームにも繋がらない。
そのため丁寧に対応したのだが、
「黒縁で太めのフレームです。大浴場に行く前まではあったはずなんですが…」
なんとも引っかかる特徴を言ってくれた。
「少々お待ちください!確認してまいります!」
テンションが上がり、活気溢れる返答になってしまったが、驚いた男性を尻目にあのメガネを取りに行く五百蔵だった。
-----------------
「ありがとうございます。探しても見つからないし、スタッフに聴いても落ちてないとの事だったので諦めていました。」
そう言って頭を下げる男性に五百蔵は「出来ることをしたまでです。」と嬉しそうに答えた。
ずっとメガネだと思っていたものは実は調光サングラスだった。
見た目は透明なレンズだが日光を浴びると色が変わりサングラスになるものだ。
これでは見た目はメガネのため「黒縁のメガネをお忘れの方」と伝えていては当の本人は気づきようもなかった。
今回は何周も声を出して回っていた五百蔵を見て、声をかけてみようと思い立ったそうで、これが一件落着に繋がったのだ。
仕事で手を抜くとこういう時に自己嫌悪に陥るのだ、と思いながらも、
私たちが探している当の本人も実はこちらの事を探しているものだ。
そう考えながら深深と頭を下げる五百蔵だった。
その言葉を出しながら少し気合いを入れてドアを開ける。
何故なら蒸し蒸しとした熱気と汗だらけの男達が中に居るからだ。
しかも僕の掛け声で全員が一斉に目を向け、ぞろぞろと出口に向かってくる。
気合いでも入れないと掃除をする前に疲れてしまう。
全員が外に出たあとに、タオルの交換や床拭きを行なう。
全くこんな暑い場所を好き好むなんて、僕には考えられない。
そうブツブツと文句を言いながらこのサウナを清掃しているのは、温泉「滝島の湯」で従業員として働く五百蔵 権蔵。ここで働き始めて2年ぐらいが経つ。
この「滝島の湯」はこの地域では珍しい温泉施設で、連日常連から家族連れまで、意外と賑わいのある温泉だ。
この地域では珍しいという言葉を使ったが、実はこの「滝島の湯」の周りは高層ビルに囲まれており、単純に人口密度の高い地域だ。
普通なら空き地があれば高層ビル・高層住宅を建て、手堅く不労所得を稼ぎに行くのだが、この土地ではボーリング中に温泉を掘り当ててしまったため、急いで建設計画を変更して温泉施設になった。
つまりは客層は若めで従業員も若い人が多く、活気のある施設となっている。
そんな中でも五百蔵は、見事に陰な雰囲気と丸メガネの着用から、活気には程遠い従業員であった。
そんな彼がサウナの清掃当番となったので、ブツブツと文句の一つや二つや十や二十が出てくるのも致し方のないことだった。
だが文句は言いながらも仕事は手を抜けない。手を抜くことは五百蔵からすると、敗北を感じて死にたくなってしまうほどの自己嫌悪に陥るからだ。
つまりは、メガネを曇らせ視界が悪いなか、暑いサウナでの仕事をするというのは、真面目に仕事をするなら、 最悪の環境なのである。
「ふぅ、やっと終わった。」
丁寧に、でも時間通りに清掃を終えた五百蔵はもう一度気合いを入れ直し、
「サウナの清掃が終わりました!ご迷惑お掛けしました!」と温泉客に伝わるように声を張り、仕事を終えた。
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五百蔵は汗だくになりながら脱衣室にある従業員用の通路に向かっていると、1人の男性が声をかけてきた。
「すいませーん、おにいさん!」と言いながら、ここまで来て欲しいと手振りで伝えてくる。
「はい!ただいま!」
なんでこの疲れている時に呼ばれるかな?!と半ギレ状態だが、それをおくびにも出さず、小走りで男性のところまで向かう。
「すいません。ここに忘れ物があって。」
と男性はロッカーの中に向けて指を指す。
「ご確認致します!」と中身を除くと、そこには黒縁で太めのフレームのメガネが置いてあった。
温泉では脱衣と同時にメガネを外す人は多く、ロッカーに入れてから大浴場に向かう人がほとんどだが、メガネを忘れる人は皆無だ。
何せメガネがなければ視界が悪いのだから、忘れたことに気づかないわけが無い。
メガネ常用者の五百蔵は不思議に思ったが、「お預かりします!ご迷惑おかけしました!」と、とりあえず男性に対応をしその場を去ることにした。
その後、上司に報告するが上司も不思議がっていたため、メガネの忘れ物は稀なのだと察した。
「そしたら休み処まで届けてくれないか?館内放送もお願いしておくよ。」
上司は軽い口調で言ったが、五百蔵からすれば面倒事を押し付けられたようなものだ。
何故なら館内放送をしても基本的にお客さんは聴いていない。
身体を癒しに来ているからかもしれないが、横になっているかおしゃべりをして聴いていないか、はたまた漫画やテレビに夢中で無視しているなど、肝心の人ほど館内放送に気づかないものだった。
その結果、従業員が声を出しながら巡回し、目的の人を探すのがテッパンだった。
つまりは、休み処にいるかどうかも分からない人のメガネを届けるのが仕事となる。
これは本当に面倒だ。
しかも休み処は大きく三つに別れており、食事処・リラックススペース・漫喫スペースと意外と広かったりする。
だが五百蔵はメガネは身体の一部であり、日常生活に支障をきたすほどの大事なものであることも分かるため、気合を入れるしかない。
自己嫌悪に殺されないためにも。
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「脱衣室にてメガネをお忘れの方、いらっしゃいませんかー!」
何度、この言葉を投げかけただろうか。
でも時間にしては30分程度、休み処を3周しただけである。
それでも見つかるかも分からない人を探すのは苦痛ではあるが、もし視界が悪い人が起きていたら、メガネの有無に気がつくはずだ。だから起きているはずがないと結論が出たので無駄なことではないとも思っていた。
今はリラックススペースを中心に声出しをしている。
ただ、当の本人は寝ている可能性しかないので、やはり無駄かもなと感じているところだ。
そんな最中、1人の男性が声をかけてきた。どうやら複数人の集団から抜けてここまで来たみたいだった。
「すいません。サングラスの落し物ってありましたか?」
確か、メガネの件を上司に報告した時にほかの忘れ物も確認したが、鍵やタオルはあれどサングラスは無かったはずだ。
「確か無かったと思いますが、どのような形のサングラスでしょうか?見つけ次第、館内放送を流してお伝えします。」
こちらは他の忘れ物のおかげで働いているのに、別の物までは探せない。
だが、できる限りの事はしようとする姿勢が伝わればクレームにも繋がらない。
そのため丁寧に対応したのだが、
「黒縁で太めのフレームです。大浴場に行く前まではあったはずなんですが…」
なんとも引っかかる特徴を言ってくれた。
「少々お待ちください!確認してまいります!」
テンションが上がり、活気溢れる返答になってしまったが、驚いた男性を尻目にあのメガネを取りに行く五百蔵だった。
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「ありがとうございます。探しても見つからないし、スタッフに聴いても落ちてないとの事だったので諦めていました。」
そう言って頭を下げる男性に五百蔵は「出来ることをしたまでです。」と嬉しそうに答えた。
ずっとメガネだと思っていたものは実は調光サングラスだった。
見た目は透明なレンズだが日光を浴びると色が変わりサングラスになるものだ。
これでは見た目はメガネのため「黒縁のメガネをお忘れの方」と伝えていては当の本人は気づきようもなかった。
今回は何周も声を出して回っていた五百蔵を見て、声をかけてみようと思い立ったそうで、これが一件落着に繋がったのだ。
仕事で手を抜くとこういう時に自己嫌悪に陥るのだ、と思いながらも、
私たちが探している当の本人も実はこちらの事を探しているものだ。
そう考えながら深深と頭を下げる五百蔵だった。
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