ホスト異世界へ行く

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第十四章 変化

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魔力神経が開いた翌日。
久しぶりにぐっすり眠って目覚めたあと、まだ隣で眠っていた魔王の顔をじっと眺める。

改めて見るととんでもない美形だな。
この人が俺の恋人、いや、夫?なのか。

そんなことを今更ながら思う。
王様で能力も高くて優しくて背も高くて鍛えられた肉体も併せ持つ超美形とか引く手あまただろうに、性根からビッチでド屑の俺で妥協してしまうとか道を誤り過ぎだろ。

俺もあらゆる場面で精霊神に似てるらしい容姿に助けられて生きてきたのは間違いないけど、ここまでハイスペックの男にはさすがに勝てる気がしない。

それともとてつもないマイナス点でもあるのか。
今のところマイナス部分を見つけられてないけど。

「そろそろ目を開けていいか?」

羨ましいほどの肉体美をサワサワと堪能したあとまた穴があくほど眺めていると、そう魔王の口が動く。

「起きてたんだ?」
「モゾモゾ触られていれば目も覚める」

少し眠そうに瞼を上げた魔王と目が合う。
ブラウンの綺麗な虹彩だ。

「フラウエルは俺の知り合いと似てる」
「知り合い?」
「地球に居た時の知り合い。ハルって言うんだけど、顔が似てるんだ。フラウエルと違って中性的な顔だったけど」

魔王は如何にも雄って顔の造りだし、ハルは中性的な顔という大きな違いはあるけど、見れば見るほど似てる。
世の中には自分と似てる人が居るというけど、血の繋がりどころか星や次元すら違う二人が似てるのは面白い。

「そいつはお前の恋人だったのか?」
「全然。そういう関係じゃなくて、ライバルで悪友。面倒くさがりで極上に口が悪くて寝てる俺の顔面を踏むようなゲスクズ野郎だけど、何でも話せる唯一の親友でもあった」

ハルは俺の唯一の親友。
好みも俺と正反対だし、面白いこと以外やりたがらない面倒くさがりだし、真顔で俺に毒舌を吐く奴だったけど、俺が気付くよりも早く俺が弱っていることに気付いて話を聞いてくれたり憂さ晴らしに付き合ってくれる奴だった。

「記憶を失ってるから前も話したかもしれないけど、俺は孤児なんだ。物心つく前に両親を事故で亡くして祖母が育ててくれてたけど、その祖母も失踪してからは施設で育った」

まだ幼かった俺は何も分からないまま。
両親が事故で亡くなったことも祖母から聞いただけで顔すら覚えてないし、祖母が失踪した理由も分からない。
俺を育てるのが嫌になったのか、他の理由があったのか。
失踪したあとの行方も分からないままだ。

「施設を出たあとは誰も頼る人が居なくて、心から信用できる人も居なくて、生きるためなら人を殺める以外のことはした。そんなクズの俺を拾ってくれたのが召喚されるまで働いてた店のオーナー。ハルとはそこで出会ったんだ」

俺が心を許せたのがオーナーとハル。
オーナーは父親代わりのような人で、ハルは親友。
大切で大好きな二人だったのは確かだけど、どちらも恋愛的な好意じゃなく家族のような存在。

「記憶を失って魔王や魔族は敵って感覚になっててもフラウエルをすんなり受け入れられたのは、俺が心から信用できたハルに似てて親しみやすかったからかも」

魔王と再会した時に敵対心があってもおかしくない。
エミーから魔王が恋人(伴侶)だと聞いた時に『敵と付き合ってるとか何をやってるんだ』と自分に呆れたくらいだし。
それなのに敵対心も警戒心もなかった。

「それなら俺はその男に感謝をしなければな。会いたいのに会えず気が狂いそうな日々を送っていたのに再会したお前から魔王だからという理由で拒絶されていたら、精霊族どころか魔族も問わず神すら憎んで生命を滅ぼしていただろう」
「いや、怖」

魔王さまヤバ過ぎ!
地球で何かと俺を助けてくれてたハルがこの星の人たちの救世主になった瞬間とも言える。

「半身を失った魔族は歯止めが利かない。失う理由となった物事に深い憎しみを抱くのはよくあることだ」
「魔族の愛、重過ぎ」
「覚えておけ。俺の愛はどの魔族よりも重い」

俺を引き寄せた魔王はくすりと笑うと口付ける。
それはもう知ってる。
昨晩だけでも十二分に伝わったから。

「風呂に入って食事にしよう」
「ああ。そのあとお前の能力を確認しよう」
「うん。遅くなったけど、おはよう」
「おはよう、半身」

今更ながら朝の挨拶をして互いに軽く口付ける。
昨日までの目覚めとは違って、重かった身体も心も軽くなっていることを感じた。





世話をしてくれるベルを呼んで二人で入浴を済ませたあと、朝食を摂るために食堂へ。

「あれ?」
「「おはようございます」」
「おはよう。二人とも来てたんだ?」

従僕が開けた扉から入ると総領と長官が座っていて、俺と魔王に気付くと立ち上がり挨拶をして頭を下げる。

「元トロン領の件で確認に」
「起こしてくれたら良かったのに」
「昨日は救出活動でお疲れでしたでしょうから」

なるほど。
気を使ってゆっくり寝かせてくれたのか。

「ご挨拶させていただいても?」
「ああ、長官はフラウエルと初対面か」
「はい」

今日はワンピース姿で髪を一つに束ねている長官は、スカートを軽く摘んで俺の隣に居る魔王にカーテシーをする。

「シャルム公爵が末女、メリッサ・フェリング・シャルムと申します。お初にお目にかかります」
「夕凪真の婚約者か」
「左様にございます」
「俺の名はフラウエルだ」

素っ気ないながら挨拶を交わす魔王。
そういえばフラウエルの正体が魔王だと知ってるのは国の一部の人だけだとエミーが言ってたな。

「賢者公爵だから普段は爵位名を名乗らないけど、国仕えの前ではエヴァンジル公爵って呼んだ方がいいかも」
「承知しました」

国王のおっさんが魔王を賢者公爵ということにして『エヴァンジル』という仮名を付けたらしいから、上下関係に厳しい国仕えの前では爵位名で呼んだ方がいいことを付け足す。
俺の婚約者が魔王の爵位名を知らないと変に思われるかもしれないし、賢者公爵は特級国民の階級だから長官が無礼だと非難されるかもしれないから。

「挨拶は済んだし座ろう」
「ああ」
「二人も座ってくれ」
「「失礼いたします」」

俺はベルが引いてくれた椅子に、魔王はエドが引いてくれた椅子に座る。

「総領と長官は朝食は?」
「つい先程いただきました」
「エド。俺は先に話すからフラウエルに食事の用意を」
「閣下もどうぞお食事を優先してください。私どもも飲み物をいただいて休憩をしていたところですので」
「じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」

先に話を聞いてから食事にしようと思ったけど、総領の配慮に甘えて俺も先に食事をすることにした。

「お顔がスッキリなさいましたね」
「顔?」
「昨晩までは思い詰めているような表情が見られましたが、今日は以前の閣下のように明るい表情になっているので」

そう言って総領は微笑する。
自分では以前と変わらず振舞ってるつもりだったけど、思い詰めてるのが顔に出てたってことか。

「心配をかけて申し訳なかった」
「大切な婚約者のことであれば心配をして当然です。何があったか問い詰めるつもりもありません。ただ、以前のように閣下の明るい表情を見ることが出来て嬉しかっただけです」

総領の言葉に長官もうんうんと頷く。
俺の婚約者たち、いい人すぎるだろ。

「隠すつもりはない。まだ確認してないけど、魔力神経が開いたみたいでまた魔法が使えるようになりそうだ」

そう説明すると、総領と長官や食事の支度をしてくれていたエドやベルや従僕たちがパッと顔を上げて俺を見る。

「昨晩フラウエルが魔力神経を軟化させる治療してくれて、自分でもまた体内の魔力を感じ取れるようになった」
「ほ、本当に?」
「ああ」

確認したベルに魔王は頷く。

「おめでとうございます!シンさま!」
「良かった」

一瞬にしてボロボロと涙を零すエドとベル。
従僕たちも笑顔になっていて、改めてみんなに心配をかけていたんだと気付いた。

「前にも話したが、過剰な期待は本人の負担になる。能力を失う前は使えていたのだから使えるようにはなると思うが、以前と同じように使えるかは別だ。食事の後に二人で確認する予定でいるが、周りの者はゆっくり見守るようにしろ」
「はい」
「承知しました」

魔王に大きく頷いたエドとベル。
俺が忘れているだけで、前にもそんな話をしたことがあるということか。

「以前から閣下のお身体の治療をなさっていた賢者公爵だということは伺っておりましたが、原因も不明で誰も為す術がなかった治療を一晩で成し遂げるとは。同じ賢者でありながら閣下の治療が出来なかった自分を恥ずかしく思います」

そう言って総領は苦笑する。

「何を恥じることがある。お前は攻撃特化の賢者だろう?魔法を使った一撃の威力なら子供賢者より強いはずだ」
「え、そうなんだ」

知らなかった。
そもそも総領が攻撃魔法を使った所を見たことがないけど。

「子供賢者は回復系も得意な万能型の賢者。青年は攻撃魔法に特化した賢者だ。万能型は何の魔法でもそれなりに扱えるが、攻撃魔法に特化した者の威力には敵わない。それが自分でも分かっているから子供賢者は剣技も鍛えているのだろう」

言われてみれば剣を振り回す賢者は珍しい。
剣も魔法も使って戦えるエミーは自分のマイナス部分を補うために血の滲むような努力をしていたのか。

「賢者でも能力には向き不向きがある。例え回復魔法は苦手でも別の部分で夕凪真を支えてきたのだろう?治療は俺に任せてお前たち婚約者は得意な分野で支えてやればいい」

愛想の欠片もない無表情でそう言った魔王。
無表情とかける言葉の優しさがちぐはぐで笑う。

「もう十分支えて貰ってるから、これ以上優秀な婚約者たちのお荷物にならないよう俺もまた魔法が使えるよう頑張る。もちろん魔法以外の能力も。いつも心配してくれてありがとう。支えてくれてありがとう」

俺の婚約者たちは優秀な人ばかり。
通院が必要な俺の代理で領地のこともしてくれているし、能力を失った俺でも会いに来たり手紙をくれたりと励ましてくれていたし、みんなには心から感謝してる。

「エドやベルも、屋敷の使用人たちにも感謝してる。みんなが居てくれたから、支えてくれたから、こうして生きてる。だから俺もまた英雄としてみんなを護れるよう鍛え直す」

それぞれが俺を支えてくれた。
だからこそもう一度能力を取り戻して恩返しがしたい。
また英雄としてみんなを護るという形で。

両隣から抱き着いたエドとベルの頭を撫でる。
能力を失っても見捨てず寄り添ってくれる人や支えてくれる人が居る俺は幸せ者だ。

俺たちの様子を見てフッと笑った魔王に俺も心からの笑顔で返した。


穏やかな雰囲気の中で食事をしたあと、食後の珈琲を飲みながら長官の字で書かれているスクロールに目を通す。

「廃爵になったトロンの名前が入ってる訳じゃないし、街の名前はそのままでいい。変更手続きの方が面倒だし」
「承知しました。以前と同じ名前で申請いたします」
「うん。よろしく頼む」

正式にトロン領から英雄領に変わったから領地にある街の名前も国に再登録しないといけないらしく、そのための申請手続きは長官にお願いする。

「屋敷に関してもこの値段で構わないからすぐに解体工事を進めてくれ。当初の予定通り屋敷は全解体して地下も埋めたててくれるように。理不尽に命を奪われた人の為にも、子供たちの為にも、事件があった場所を残したくない」
「すぐに手配いたします」

手続き関係は長官が、手配や指揮は総領が。
既に婚約の契約を結んでいる二人が領主代理として元トロン領のあれこれをやってくれている。

「近い内に俺も直接足を運ぶ」
「閣下にはまだ休息が必要です」
「え?身体はどこも悪くないのに」
「肉体と精神は別です。それでなくとも心が疲弊したまま鍛錬と領地の管理を続けていたのですから」
「むしろ悩みが一つ解消されたからこそ、今までの分を取り戻そうと無理をしそうで心配です」

今まで足を運べなかったから近い内に行こうと思って言うと、総領と長官からキッパリと拒否される。

「治療を兼ねてフラウエルさまと旅行に行かれては?」
「それはいい。王都に居ると仕事から離れられないだろうからな。治療医のエヴァンジル公が一緒なら安心できる」
ワタクシも賛成です。今まで英雄として精霊族のために尽力してくださったのですから、この機会にゆっくりと休んで身も心も元気になっていただきたいです」

エドの提案に賛成する総領と長官。
ベルも賛成らしく大きく頷いている。

「傍仕えの二人や婚約者たちの方がお前以上にお前の性格を理解しているようだな。強引にでも他所に行かせることで仕事から距離を取らせなければ休まないと」
「ぐうの音も出ない」

魔王からトドメを刺された俺にみんなはくすくす笑う。
たしかに『魔力神経が開いた』という一つの変化であれもこれもやらないとと考えていたことは間違いない。

「買い物に行こうと言っていたな。治療と買い物を兼ねて俺の転移魔法で遠出をしよう。たまには役目を忘れて」
「分かった。みんなに甘えさせて貰う」

今の俺がやることは休むこと。
みんなそう思っていることを知って甘えることにした。

「私とメリッサ嬢はこれで。戻って手配いたします」
「忙しいのに足を運んでくれてありがとう」
「私が閣下のお顔を見たかっただけです」
ワタクシもお姿を拝見して安心いたしました」

椅子から立ち上がった総領や長官は微笑む。
イケメンと美少女が浮かべる笑顔の破壊力が凄い。

「旅行のお土産を買ってくるから」
「ご無事にお戻りくださればそれで」
「どうぞお気を付けて」
「ありがとう」

俺も立ち上がり二人に近付いてハグを交わし、外までの見送りはエドとベルに任せて俺はこの場で見送った。

「あの二人はどうやって戻るんだ?エルフ領だろう?」
「総領の術式。俺の代理をしてくれてる今は報告も多いから、いつでも来れるよう屋敷の門前に術式を繋げてある」
「ほう。やはり能力が高いな」
「エミーもそう言ってた。エルフ族と人族の領は距離があるのに一人で転移の術式を展開できてるのが凄いって」

転移の術式は距離や人数で必要な魔力量が変わる。
長距離の術式となると魔導師が数人で展開するらしいけど、総領はたった一人で展開できる。

「今時点でも子供賢者より魔力量が多いからな」
「エミーより?」
「言っただろう?あの青年は大賢者の素質を持って産まれた特異な存在だと。大賢者の素質を持つ者は極僅か。勇者の血を継いでいるだけあって天賦の才能の持ち主だ」
「総領ってそんなに強かったのか」

魂の色で判断できる魔王が見間違えるほど覚醒間近だということは聞いたけど、俺の前では一度も攻撃魔法を使ったことがないから実力が分からない。

「戦場に立って強いのは子供賢者の方だがな。一撃の威力は青年に軍配があがるが、子供賢者とは場数が違う。大賢者に覚醒する前の今は戦い方を知っている子供賢者の方が強い」
「なるほど」

たしかに普段から軍人として戦ってるエミーと有事の時だけ招集される賢者の総領では実戦経験が違う。
例え一撃の威力は総領が強くても、戦場であらゆる経験をしているエミーの方が強いというのは納得。

「話していて思い出したが、前回の天地戦を書き記した書物にこの国の国王が大賢者だったと書かれていたな」
「え?国王が?」

それは初耳。
禁書が読める書庫で何冊か読んだけど、少なくともその中にはこの国の国王が大賢者だったことは書かれてなかった。

「前回の天地戦は勇者が天門とかいうのを開いて魔界で戦ったって読んだけど、大賢者だったってことは国王も勇者や他の賢者と一緒に魔界に行って魔族と戦ったってこと?」
「いや。国王と戦ったのは地上層に降りた魔族だ。王都を守護する障壁の外に出てきた国王と戦ったと」
「わざわざ危険を犯して出てきたってこと?」
「ああ」

頷いた魔王はティーカップを口に運ぶ。

「とんでもないことをする国王だな。王都を守護する障壁ってことは国王だけに継承される特殊恩恵のことだろうけど、国王が死んだら障壁も消えるだろうに」

国王のおっさんも使える盾の国の王の特殊恩恵。
有事の際にだけ発動するこの国最大の護り。
国民を護る最後の砦とも言える守護壁が使える国王はむしろ誰よりも守護壁の中に居て生きてくれないと困る。

「魔族を退けられるだけの自信があったのか、国王が前線に出て戦う必要があるほど追い詰められた戦況だったのかは分からない。そこまでは書かれていなかった」
「そっか。戦うしかない戦況だった可能性もあるのか」

盾の国の心臓の王都を護るためには守護壁の外に出て戦わないといけない戦況になっていたと考えると納得。
幾ら大賢者だったと言っても、国王が優先しないといけないのは盾の国の王の特殊恩恵を維持することだから。

「前回の天地戦は俺が離宮で覚醒の眠りについている時に開戦したために、生き残った魔族から聞いた話や書物に書かれた内容しか知らない。だが、多くの魔族を返り討ちにするほど強かったらしい大賢者の国王とは戦ってみたかった」
「強い人と戦いたいとか、どこぞの戦闘狂だ」

さすがエミーと同じ戦闘狂。
総領にも大賢者に覚醒したら手合わせしようと言ってたくらいだし。

「って言うか、国王の特殊恩恵のこと話しちゃった」
「心配せずとも話どころか見たことがある」
「え?」
「俺が初めてこの国に来た時と、この国が魔物の急襲を受けた時の二度。それに過去の天地戦の記録でも王都を包む巨大な障壁が張られていたことは書き記されているのだから、国王の特殊恩恵ということくらいは予想がついていた」
「そうなんだ……良かった」

魔族と精霊族が敵対する者同士ということも忘れて国王の能力を話してしまったけど、俺がうっかり口を滑らせる前から知ってたのか。

「魔王であれば国王の能力は学んで知っている。厄介なのはその時々で違う能力を持つ勇者の方だ。魔王にトドメを刺すことの出来る聖剣と精霊王の特殊恩恵は知っているが」
「そこも書き残されてるのか」
「ああ。逆を返せば精霊族も歴代の魔王の能力を書き残しているだろう。次の天地戦の役に立つように」

その話を聞いてぬるくなった珈琲を飲む。
この星の人は天地戦が起きることを確信してるようで。
当然のようにまた天地戦が起きると互いに思っているから、何千何万年と争いを繰り返しているんじゃないかと。
いや、繰り返していたから今では当然のことのようになってしまったのかもしれないけど。

「戦争をしないって選択肢はないんだな」

どちらかが止めないと終わらない。
それなのにこの星の人は止めない。
護るためと言って。

「したい訳がないだろうに」
「え?」
「少なくとも俺は望んでいない。苦労して復興した平穏な生活も同胞の命も脅かされるのだから馬鹿げている。ただ、したくなくとも魔王が誕生すれば赤い月が昇って精霊族も勇者を召喚する。魔王の誕生とは魔王の素質が覚醒した時のことで、狙って誕生するものではないのだから止めようもない」

そう言って魔王は溜息をつく。
眉根に深い皺を刻んで。

「人族の王やエルフ族の王も同じだろう。だが、魔王の俺や精霊族の王たちが天地戦をしないと言っても民は納得しない。自分の大切な人物や大切なものを奪われた者にとって天地戦で相手を倒さなければ憎しみは増すばかりだ。魔族は特に長寿だけに自分の半身や親兄弟の命を奪われた者が居るのだから、魔王の俺が天地戦はしないと言っても独断で攻め入るだろう」

ああ、そうか。
天地戦で犠牲になった人が顔も知らない先祖の精霊族でも魔族は敵と刷り込まれていて憎しみを持つ人が居るんだから、実際に天地戦を経験して身近な人が犠牲になった魔族はなおさら精霊族を憎んでいてもおかしくない。

「……ごめん。余計なこと言って。エミーからフラウエルは天地戦をしたい訳じゃないことを聞いてたのに」

戦争をしたくない人に『戦争をしない選択肢はないんだな』と責めるようなことを言ってしまった。
本当は戦争をしない選択肢を選びたいけど止めることもできない魔王の前で言うとか最低だ。

「いや、いい。平和だった異世界人のお前がこの星に生きる者に対して呆れるのは当然だ。以前もお前から同じようなことを言われたからな。忘れたのだから仕方ない」

前にも言ったのかよ。
二度も同じようなことを話したとか、魔王がまたかとイラつくのも当然だ。

瞼を閉じて天井を見上げた魔王。
今なにかを話すのは逆に腹立たしくさせてしまいそうで、口は開かず黙って珈琲を飲む。
記憶を失って二度も魔王を傷つけるようなことを言ってしまった自分の愚かさを悔やみながら。

「予定通り魔法の確認をしよう」

数分ほどで深呼吸のような長い呼吸を吐いた魔王は俺を見て苦笑すると椅子から立ち上がる。

「忘れても最初から始めればいいと自分で言っておきながら語気が荒くなってすまなかった」

いや、悪いのは俺なんだけど。
そう思うもののこれ以上話題を長引かせる方が良くない気がして、謝罪の返事として軽く首を横に振って俺も椅子から立ち上がった。

「お食事はお済みですか?」
「うん。ご馳走さま。先に訓練着に着替えてからいつも通り裏の庭園で魔法の確認してくる。フラウエルに障壁を張って貰う予定だけど、念のため誰も近寄らないようにしてくれ」
「承知しました」

食堂を出て食事(食後のティータイム)が終わるの待っていたエドにそう伝える。
確認している最中に昨晩のように魔力が放出してしまう可能性もなくはないから、影響が及ばないように念のため。

「お着替えのお手伝いを」
「いや。自分で着替えるから大丈夫。それよりベルも使用人たちに裏庭には近寄らないよう伝えてくれ。昨晩は制御するまで魔力が垂れ流しになったくらいだから危ない」
「え、そうだったのですか」
「フラウエルが障壁を張ってくれたから影響なかったけど、また垂れ流しになってもすぐに制御できるか分からない」

英雄の能力は極秘だから近寄らないようにという話ではなく、今回は万が一のことがあれば命の保証が出来ないから絶対に近寄らないでほしい。

「シンさまの魔力にあてられるとなると命に関わりますね。お戻りになるまで立ち入りを禁じます」
「よろしく頼む」
「「承知しました」」

エドとベルも説明を聞いて深刻な表情に変わり、丁寧に頭を下げた。





一度自室に戻って訓練着に着替えたあと魔王が待ってくれていた屋敷裏の庭園に向かった。

「お待たせ」
「早かったな」

急いで着替えたから。
魔王は着替える必要がなくて待たせているのにのんびり着替えるほど失礼な奴じゃない。

「昨晩は確認しないまま眠ったが、目覚めてからステータス画面パネルは確認したのか?」
「ううん。まだ。能力が使えなくなってから見ても何一つ分からないステータス画面パネルになってたから」
「先に確認してみろ」
「うん」

能力どころか名前や年齢すらアスタリスクになっていたから、魔力神経が開いて勇んで見てもまだアスタリスクだった時のことを考えて躊躇していたというのが本当のところ。

「……なんだこれ」
「俺も見ていいか?」
「うん」

先に自分で確認したあと、魔王にも見えるようにステータス画面パネルの全画面を開き直す。

「…………」

隣から俺の画面パネルを覗いた魔王も無言。
結論としてアスタリスクだった部分が見えるようになっているけど、一部分だけ。

「属性魔法以外は見えないままとは」
「ステータス画面パネルってこんなことが起きるの?」
「いや。そもそもこのような印で隠されているのはお前の画面パネルでしか見たことがなかったが、名前すらも隠されていて属性魔法だけが確認できるなど有り得ない。仮に魔法属性や恩恵や特殊恩恵を持っていない者でも画面パネルを開けば必ず名前や年齢や種族といった基本情報は表示される」

有り得ないことが起きてるんですけど?
俺が適性を持つ精霊族の属性魔法と魔族の属性魔法は見えるようになったけど、属性魔法の項目以外はアスタリスク。
魔王が言ったように、名前も年齢も種族もアスタリスクのままなのに属性魔法の項目だけが表示されているおかしな画面パネルになっていた。

「待った。属性魔法の項目も見えない部分がある」
「そのようだな」
「見る限り以前使えてた属性魔法は全部表示されてるみたいだけど、この部分はなんだろう」

魔族の属性魔法の部分に二列アスタリスクが並んでいるけど、以前から使えていた属性魔法は表示されているのに何が隠されているのか。

「ひとまず表示されている魔法を使ってみろ」

そう言って魔王は庭園に障壁をかける。

「あ。障壁が張られたのは分かった」
「魔力は感じ取れているようだな」
「うん。まずは水属性の魔法を使ってみる」
「ああ」

まずは危険性の低い水属性から。
身体(魔力神経)に魔力が流れるのを感じながら水球をイメージして手のひらに魔力を集める。

「……あっさり」

自分でも拍子抜けするほどあっさり。
なかなか水球にならないということも魔力量を誤って大き過ぎたり小さ過ぎたりということもなく、本当に魔法が使えなくなってたのかと自分自身を疑いたくなるほど簡単にイメージ通りの水球が出来た。

「一通り使ってみろ」
「うん」

精霊族が扱う水属性以外の基本四属性の火と風と雷属性はもちろん、闇属性も聖属性も時空属性もあっさり。
それどころか魔族が扱う属性魔法も全て以前と変わらず使うことが出来た。

「あれ?」
「どうした」
「俺、なんで魔族の属性魔法が使えるんだ?以前から使えてたのは覚えてるけど、いつ使えるようになったんだ?」

当たり前のように使ったけど、いつから魔族の属性魔法を使えるようになったんだっけ。

「以前お前が俺と交わったことで特殊恩恵が増えて魔族の属性魔法も使えるようになったと言っていた」
「交わる?フラウエルとやったら解放されたってこと?」
「魂の契約だ。魂が交わったことで解放されたらしい。お前の特殊恩恵は覚醒する以外でも解放されるとあって、俺も話を聞くまで知らなかったが」

エミーの時と同じか。
解放される条件はで、精霊族の属性魔法はエミーとの性交で肉体が交わったことで解放されて、魔族の属性魔法は魔王と魂の契約を結び魂が交わったことで解放されたと。

「他に気付いたことはないか?」
「他?どの魔法も以前と変わらなかったと思うけど」

あまりにもすんなり使えて拍子抜けしたくらいだし。

「お前が今使ったのは適性のある魔族なら使える基本の属性魔法だけだ。以前のお前が使えていたはずの属性魔法が二つ使えなくなっている。属性魔法の印の部分がそれだ」
「え?俺が忘れてるだけってこと?」
「ああ」

それを聞いて再び画面パネルを開いて確認してみたけど、やっぱりアスタリスクのまま。

「もしかして俺が忘れてるから使えない?」
「さあな。使えなくなったから記憶からも消えたのか、記憶から消えたから使えなくなったのかは俺も分からない。ただ、その二つは魔族の祖龍王からのみ得られる魔竜属性と、歴代の魔王だけが得られる魔祖属性だ」

魔竜属性?魔祖属性?
どちらも聞き覚えが(使えた覚えも)ないんだけど。

「……歴代の魔王だけが得られる属性って言った?」

聞き間違いであることを祈りながらチラリと魔王の顔を確認しながら聞くと、首を縦に振って頷かれる。

「な、なんで俺が魔王だけが使える属性魔法を使えるの?もしかして俺もフラウエルと同じ魔王なの?」
「違う。それも俺と交わった時に解放されたと言っていた。最初は理由が分からなかったが、お前が神族だから精霊族や魔族に現存する属性魔法が全て解放されたんだろう」
「あ……そういうことか」

忘れてるだけで神族の魔王なのかと思った。
魔王は魔族の王のことなのに、神族の俺が魔王というのはおかしな話だけど。

「お前の始祖という特殊恩恵は覚えているか?」
「うん。神族の始祖の力が使える特殊恩恵」
「魔祖はその始祖のツイとなる特殊恩恵だ。精霊神や魔神が話して聞かせてくれたことだが、オリジナルの魔祖と始祖を持っているのはこの星でお前と俺だけらしい」

……ん?
あまりにもさらりと話したから聞き流しそうになったけど、精霊神や魔神が話して聞かせたって言った?

「フラウエルも精霊神や魔神と会ったことがあるの?」
「ある。今は腕輪にしているこれも、魔界でお前と披露式をおこなった時に祝いとして御二方から贈られたものだ」
「……もしかして俺のと同じ?元は絹の布」
「ああ。魔族の披露式は精霊族の結婚式と似たようなもの。城仕えに新たな主君として半身を紹介するとともに、生涯を魔神に誓う式でもある。それを祝って贈ってくださった」

俺の記憶から消えていた
何があって贈り物をしてくれたのか思い出せなかったけど、魔王と生涯を誓ったお祝いでくれたものだったのか。

「……痛い」
「頭か?もう思い出そうとしなくていい」

思い出そうとするとなるいつもの頭痛が始まり頭を押さえた俺の背中に手のひらを添えた魔王は回復をかけてくれる。
魔王にも関わる大事なことなのに俺の身体を気遣うとか、ほんとイイ奴過ぎるだろ。

「思い出したいんだ。能力を取り戻したいからじゃなくて、フラウエルとの思い出を忘れてるのが悔しい」

生涯を誓った相手で宿命に導かれて出会った縁者。
魔王は再会してから様々な思い出を話してくれてるのに、欠片さえも思い出せないことが悔しくて仕方がない。
二人に共通した思い出のはずなのに。

「フラウエルのことが好きだから思い出したい。思い出して二人で話したいんだ」
「そう思ってくれているだけで充分だ。俺が話したことはそういうこともあったとだけ知ってくれていればいい。思い出はまた二人で作っていこう」

痛いくらいに強く抱き締める魔王。
その腕の中は心地よくて、絶えず掛けられている回復魔法は温かかった。
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転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
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16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

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ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
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新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
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「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

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バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

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